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ペットフード安全法による規格・基準

 以下、ジビエペットフード利用推進協議会編「安心・安全なジビエペットフードのために」よりペットフード安全法によるペットフードの成分規格、製造基準、及び表示基準を紹介します。

成分規格

分類物質等定める量(μg/g)
添加物エトキシキン・BHA・BHT150(合計量)、犬用にあたってはエトキシキン75以下
添加物亜硝酸ナトリウム100
農薬グリホサート15
農薬クロルピリホスメチル10
農薬ピリミホスメチル2
農薬マラチオン10
農薬メタミドホス0.2
汚染物質アフラトキシンB10.02
汚染物質デオキシニバレノール2(犬用)、1(猫用)
汚染物質カドミウム1
汚染物質3
汚染物質無機ヒ素2
汚染物質BHC0.01
汚染物質DDT0.1
汚染物質アルドリン・ディルドリン0.01
汚染物質エンドリン0.01
汚染物質ヘプタクロル・ヘプタクロルエポキシド0.01
その他メラミン2.5
汚染物質とは、環境中に存在する物質であって、意図せずペット用飼料中に含まれるもの

製造方法基準

分類物質名基準
有害微生物有害微生物全般加熱し、又は乾燥する場合は、原材料等に由来し、且つ発育し得る微生物を除去するのに充分な効力を有する方法で行うこと。
原料全般その他有害物質等有害な物質を含み、若しくは病原微生物により汚染され、又はこれらの疑いがある原材料を用いてはならない。
添加物プロピレングリコール猫用には用いてはならない。

表示基準

ペットフード安全法に基づく表示ペットフード安全法以外の表示
名称用途
賞味期限与え方
原材料名内容量
原産国名成分(栄養成分等)
事業者名・住所
賞味期限は、科学的、合理的根拠に基づいて設定する必要があります。

 ペットフードの容器や包装への表示、及び広告等において、「〇〇病に効く」や「美しい〇〇〇〇を約束します」といった文言は、薬機法や景品表示法に違反する場合があります。

ジビエを原料にするには

 農村地帯の過疎化や自然環境の変化によって野生の鳥獣が人里に進出して農園や果樹園を荒らすようになってしまいました。人間が育てた作物を食べて栄養状態がよくなり、出生率の上昇と死亡率の低下により鳥獣の数が増え、山の中での生存競争に負けた個体がさらに人里に降りてくるという悪循環が出来上がってしまっています。一つの原因としては日本の自然の中には狼のような食物連鎖の頂点に立つ野生動物がいないことが挙げられます。

 農林水産省は、野生の鳥獣による農林業被害の減少を目指してジビエの利用を奨励しています。ジビエは、人間による消費だけでなく、ペットフードの原料としても注目されています。ペットフードの製造業者がジビエを原料に使用する際にはどのようなことを注意したらよいのか説明します。

ジビエの栄養

 文部科学省編「日本食品標準成分表2020年版」によると、100gあたりのタンパク質、脂質、及び鉄分の含量を鹿肉、猪肉、牛肉、及び豚肉で比較すると以下の表からわかるように鹿肉及び猪肉はタンパク質と鉄分の量に関して牛肉及び豚肉よりも優れていることがわかります。

鹿肉猪肉
(脂身付)
牛肉
(サーロイン)
牛肉
(もも)
豚肉
(ロース)
豚肉
(もも)
エネルギー(kcal)119244294176237171
タンパク質(g)23.918.817.121.317.120.5
脂質(g)4.019.825.810.719.210.2
鉄分(mg)3.92.52.02.80.60.7

 特に鹿肉は低脂肪高タンパクであり、脂が多いと不適であるペットフードの原材料として適していると考えられています。

ジビエの処理

 栄養面では優れているジビエ肉ですが、鹿や猪は牛や豚のように生産段階で管理できないため、動物由来感染症の病原菌や寄生虫を保有している可能性を否定することができません。そこで、安全で衛生的な食品を製造するための管理方法であるHACCP(ハサップ)を採用している食肉処理業者のジビエ処理施設で処理されたジビエ肉をペットフード加工用に使用することが求められます。

 HACCPの基準に合う処理施設では、作業工程又は作業の汚染度によるエリア区分がされており、金属探知、照明、換気、室温管理、洗浄消毒、及び冷凍冷蔵のための各設備が完備されています。HACCPの基準は、ジビエ肉に限らず食品を扱う/食品を製造する事業所にもれなく当てはまります。HACCPについて詳しく知りたい方は記事「食品事業とHACCP」をご覧ください。

ジビエ肉の加工

 銃猟で仕留めた鳥獣の肉については、ジビエ処理施設の金属探知機を使用して銃弾(鉛であることが多い)を取り除くことが必要です。

 食中毒の原因となる細菌は、腸管の中に生息していることが多いので、食肉処理時には胃腸管の中身が肉に付着しないような方法で処理がされています。食中毒の原因となる細菌の中には土壌に潜んでいる細菌もあるため、そのような細菌は野生鳥獣の毛皮に付着した土壌に含まれている可能性があります。これらの細菌の芽胞は加熱しても生き残るため、ジビエ処理施設で毛皮から分けられた肉を仕入れてペットフード製造専用の施設でペットフードに加工した方がいいでしょう。

 ウイルスや寄生虫は、単純に生肉を乾燥させたり燻製にしただけでは感染性を失いません。寄生虫の殺滅のためには-20℃以下の低温で5日間の処理が、E型肝炎ウイルスをはじめとするウイルスの失活処理のためには中心温度が63℃以上になるような温度での30分間以上の加熱が有効であるとされています。冷凍処理と加熱処理の両方が必要です。

 農林水産省のホームページから「ペットフード適正製造マニュアル」という文書をダウンロードすることができます。この文書では製造管理のポイント及び製造工程の危害要因分析の例がペットフードのタイプ別に挙げられています。筆者は、新たにペットフードの製造業を始める方は、この文書を参考に作業手順書及び衛生管理計画を策定するとよいと考えます。

まとめ

 今回は、新たにペットフード事業を始める小規模事業者を対象としてペットフード安全法を解説しました。本記事のペットフード安全法の説明を以下にまとめます。

  • ペットフードを製造又は販売する事業者はペットフード安全法に従う
  • ペットフードの輸入業者又は製造業者は、氏名又は名称、及び住所又は所在地を届け出る
  • ペットフードの輸入業者、製造業者、又は販売業者(小売業者を除く)は、販売等をしたペットフードの名称、数量等を帳簿に記載し、帳簿を事業所に備え付け、帳簿を2年間保存する
  • ペットフードの製造業者、輸入業者、又は販売業者は、国が定めたペットフードの基準及び規格に合うペットフードを製造、輸入、又は販売する
  • 国は、ペットフードの基準及び規格に合わない、又は有害な物質を含むペットフードの製造、輸入、又は販売を禁止し、回収及び廃棄を命ずることができる
  • ペットフードの製造業者、輸入業者、又は販売業者は、製造品目又は販売品目の内容の把握、製造管理及び品質管理、帳簿管理、並びに表示管理に努め、事故等発生時の対応を策定する

 

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