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株主の確定と出資の履行/設立時役員の決定

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 前回までの二回の記事において定款の記載事項について説明しました。本記事では、株主及び設立時役員に関する手続きを説明します。

株主の確定と出資の履行

 発起人は各々が1株以上の株式を引き受けることになっていますが、募集設立では発起人以外の者が会社の設立時株主となることもできます。発起設立では発起人以外の者が設立時株主になることはありません。発起人は、各々が割り当てとして受け取る設立時株式の数、その株式の引き換えとして払い込む金銭の額、並びに成立後の会社の出資金(及び出資準備金)の額を全員の同意により決定します。この決定には発起人全員の同意が必要です。この決定を同意書としてまとめ、発起人全員の記名押印により同意書が完成します。この決定を同意書ではなく定款案の中に記載することもできます。発起設立では発起人が設立時発行株式の全部を引き受けます。

 株主の確定後、設立時株主となる発起人は各自が引き受けた株式について全額を払込み、現物出資をする発起人がいるときはその現物を提供します。出資を行った発起人は会社成立時に株主になります。発起人が出資する金銭は、銀行等の金融機関の口座に払い込まれなければなりませんが、会社設立のための口座の開設を定款認証の前に許す金融機関もあれば、許さない金融機関もあると聞きます。取引を行いたい金融機関に口座開設のタイミングを聞いてください。会社が成立する前に法人名義の口座を開設することは難しいと思われますので、まずは発起人のうちの代表者の個人名義で口座を開設して出資金を入金します。口座名義人以外の出資者は、振込により入金して自身の名前が通帳に記載されるようにします。これにより、出資者の各々が決められた額の出資を行ったことが証明されます。出資金の入金が完了したら出資金の払い込み証明書を作成します。

出資金払い込み証明書の作成

 出資金を入金した口座の通帳をコピーします。コピーが必要な通帳のページは、

  • 通帳の表裏の両表紙
  • 表紙をめくって一枚目の口座情報が書かれているページとその次のページ
  • 出資金の預け入れを始めてから定款に定めた設立に際して出資される財産の価額又はその最低額に達するまでの預け入れを記録しているページ

です。これらのコピーしたページをまとめ、表紙を付け、表紙に法人印で押印することで証明書が完成します。

設立時役員の決定

 株式会社は、持分会社と異なり会社の所有と経営が明確に分離しているため、設立時の役員に発起人以外の者が就任していても問題ありません。株式会社の設立時役員の種類は、取締役及び代表取締役、並びに設立する会社が監査役設置会社であれば監査役です。発起人は、出資の履行後、遅滞なく設立時役員を選任します。設立時役員の選任は、発起人が引き受けた株式数の過半数をもって決定します。この設立時役員の選任では設立時株式1株を1議決権とします。定款において設立時役員を定めている場合は出資の履行完了時に設立時役員が選任されたものとみなします。定款に記載していない場合では設立時取締役の選任決議書を作成します。選任決議書に発起人の全員又は選任のために出席した過半数の議決権を有する発起人が記名押印して選任決議書が完成します。

 会社法では、設立時役員は、その選任後、遅滞なく以下の事項を調査することになっています。

  1.  会社設立に際して出資される財産のうちに現物があり、その価額が500万円以下であるか、その現物が市場価格を有する有価証券である場合、その現物について定款に記載又は記録された価額が相当であること
  2.  出資の履行が完了していること
  3.  株式会社設立の手続が法令又は定款に違反していないこと

 現物等による出資があると会社設立が難しいものになるため、行わない方がよいことは前回の記事で述べたとおりです。調査の結果、出資された財産の額が定款に記載されている額に満たない場合、設立時取締役と発起人が連帯してその不足額を充足する義務を負います。

 以上、株主の確定と出資の履行及び設立時役員の決定について説明しました。定款とは別に書類を作成する場合、株式発行に係る同意書及び設立時役員の選任決議書をまとめて発起人の決定書とすることができます。設立時役員に選任された者がその旨を承諾したことを書面に記載し、記名押印することでその書類は設立時役員就任承諾書になります。このようにして作成された発起人の決定書、出資金の払い込み証明書、及び設立時役員の就任承諾書は設立する会社の登記のために必要な書類になります。

実質的支配者となるべき者の申告書

 株式会社の定款は、公証役場において認証を受ける必要があります。この定款認証を受ける際に公証役場に「実質的支配者となるべき者の申告書」という書類を提出する必要があります。この書類は、設立する株式会社の実質的支配者が反社会的組織の構成員ではないことを宣言するための書類です。「実質的支配者となるべき者の申告書」の書式は日本公証人連合会のホームページからダウンロードできます。この書類を作成し、定款案と共に定款認証のために公証役場へ持参します。以下の表に「実質的支配者となるべき者」の例を挙げます。

  1.  設立する株式会社について50%を超える議決権を直接又は間接に有する自然人
  2.  50%を超える議決権を有する者がいない場合では、25%を超える議決権を直接又は間接に有する自然人
  3.  1及び2に当たる者がいない場合では、出資、融資、取引その他の関係を通じて設立会社の活動に支配的な影響力を有する自然人
  4.  1、2、及び3に当たる者がいない場合では、設立する会社を代表し、業務を執行する自然人

 以上で設立時株主の確定と出資の履行、設立時役員の決定、及び実質的支配者となるべき者についての説明を終わります。次回の記事では定款認証から関係各署への届出まで説明します。

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