私達は、飼料を食べて育った家畜の卵、乳、又は肉を口にすることによって動物性タンパク質を摂取しています。もし、家畜が汚染物質によって汚染されている飼料を食べて育った場合にその家畜から生じた畜産物は、それを食べた人間の健康を害するおそれがあります。そのため、農林水産省は、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(飼料安全法)に基づく各種の規制を実施して国内で製造又は海外より輸入される飼料の安全性を確保しています。また、飼料の品質が畜産物の生産性に直接の影響を与えるという考えから飼料の栄養成分等に関して公定規格を設定し、飼料の品質の改善を図っています。
本記事は、このような飼料安全法に基づく農林水産省の取組みを紹介します。
飼料安全法の概要
飼料の定義
一般的に「飼料」は、家畜、家禽、又は養殖魚等の飼育動物に給与される食べ物を意味しますが、飼料安全法では「飼料」は、家畜等の栄養に供することを目的として使用される物を意味します。飼料安全法では「家畜等」として次の動物が定められています。
飼料安全法上の家畜等
陸生動物 | ・牛、馬(農林水産大臣が指定するものを除く)、豚、めん羊、山羊、及び鹿 ・鶏及びうずら ・蜜蜂 |
水生動物 | ぶり、まだい、ぎんざけ、かんぱち、ひらめ、とらふぐ、しまあじ、まあじ、ひらまさ、たいりくすずき、すずき、すぎ、くろまぐろ、くるまえび、こい、うなぎ、にじます、あゆ、やまめ、あまご、及びにっこういわなその他のいわな属の魚であって農林水産大臣が指定するもの |
飼料の種類
飼料の種類には粗飼料と濃厚飼料があります。農林水産省による令和4年のデータでは粗飼料の国内自給率は78%に達します。これに対し、同データでは濃厚飼料の自給率は13%です。粗飼料と濃厚飼料には次のものが挙げられます。
- 粗飼料の種類
- 牧草(生、乾草、サイレージ)
- 稲わら
- 麦わら
- 青刈りトウモロコシ
- 稲発酵粗飼料
- 濃厚飼料の種類
- 穀類
- トウモロコシ
- 麦
- マイロ(コウリャン)
- 飼料用米等
- 副産物
- 糟糠類
- 植物性油かす
- 動物質性飼料等
- 食品循環資源利用飼料(エコフィード)
- 穀類
飼料安全法の目的
飼料安全法の目的は、飼料の安全性の確保及び品質の改善を図り、究極的には公共の安全の確保と畜産物等の生産の安定に寄与することです。この目的を達成するために飼料及び飼料添加物の製造等に関する規制、飼料の公定規格の設定、及び飼料の検定等の実施が飼料安全法で規定されています。
「飼料添加物」とは、飼料の品質の低下防止その他の用途に供することを目的として飼料に添加、混和、浸潤その他の方法によって用いられる物質をいいます。飼料安全法上、農林水産省令で定めらた飼料添加物の用途は(1)飼料の品質の低下の防止、(2)飼料の栄養成分その他の有効成分の補給、及び(3)飼料が含有する栄養成分の有効利用の促進であり、具体的には一番目の用途のために3種類の抗酸化剤、3種類の防カビ剤、5種類の粘結剤、5種類の乳化剤、及び1種類の調整剤が、二番目の用途のために97種類の飼料添加物が、及び三番目の用途のために47種類の飼料添加物が農林水産大臣によって指定されています。
飼料安全法の下、飼料又は飼料添加物の製造、使用及び保管の方法及び表示について基準が定められ、飼料若しくは飼料添加物の成分について規格が定められています。飼料安全法は、飼料の確保及び品質の改善のために次のことを禁止し、農林水産大臣及び都道府県知事に次の権限を与えています。
禁止行為
上記の基準又は規格に合わない場合、次のことが禁止されます(法第4条)。
- 基準に合致しない方法で飼料又は飼料添加物を販売用に製造又は保存すること
- 基準に合致しない方法で飼料又は飼料添加物を使用すること
- 基準に合致しない方法で製造又は保管された飼料又は飼料添加物を販売又は販売用に輸入すること
- 基準に合致する表示がない飼料又は飼料添加物を販売すること
- 規格に合わない飼料又は飼料添加物を販売すること
- 規格に合わない飼料又は飼料添加物を販売用に製造又は輸入すること
- 規格に合わない飼料又は飼料添加物を使用すること
また、農林水産大臣は、有害畜産物の生産又は家畜等の被害による畜産物生産の阻害を防止するため、次にあげる飼料又は飼料添加物の製造、輸入、又は販売を禁止し、そのような飼料の使用を禁止することができます(法第23条)。
- 有害物質を含む、又は含む疑いがある飼料又は飼料添加物
- 病原微生物により汚染されている、又は汚染されている疑いがある飼料又は飼料添加物
- 使用経験が少ないため、有害ではない旨の確証がないと認められる飼料
廃棄等の命令
さらに、次にあげる飼料又は飼料添加物を販売した場合又は販売用に保管している場合において、有害畜産物の生産又は家畜等の被害による畜産物生産の阻害を防止するため、農林水産大臣は製造業者、輸入業者、及び場合によっては販売業者に対し、都道府県知事は販売業者に対し、当該飼料又は飼料添加物の廃棄又は回収その他必要措置を命令することができます(法第24条)。
- 基準に合致しない方法で製造又は保管された飼料又は飼料添加物
- 基準に合致する表示がない飼料又は飼料添加物
- 規格に合わない飼料又は飼料添加物
- 特定飼料等の検定に合格したことを示す表示、登録特定飼料等製造業者が製造したことを示す表示、又は登録外国特定飼料等製造業者が製造したことを示す表示が付されていない特定飼料等
- 有害物質を含む、又は含む疑いがある飼料又は飼料添加物
- 病原微生物により汚染されている、又は汚染されている疑いがある飼料又は飼料添加物
- 使用経験が少ないため、有害ではない旨の確証がないと認められる飼料
法第4条の規定、法第23条の規定による禁止、又は法第24条の規定による命令に違反した者には罰則があります。
「特定飼料等」とは、有害畜産物の生産又は家畜等の被害による畜産物生産の阻害をもたらすおそれが特に多いと認められるものとして政令で定める飼料又は飼料添加物のことをいいます。具体的には(1)農林水産大臣指定地域産(インド産)の落花生油かす、及び(2)農林水産大臣指定の抗菌性物質製剤が挙げられます(飼料安全法施行令第二条)。
報告の徴取と立入検査等
飼料安全法の施行に必要な限度において、農林水産大臣又は都道府県知事は、事業者に次の内容を報告させることができます(報告の徴取)。
徴取者が徴取する報告の内容
被徴取者 | 徴取者 | 報告内容 |
---|---|---|
製造業者 輸入業者 運送業者 倉庫業者 | 農林水産大臣 | ・業務に関する報告 |
販売業者 | 農林水産大臣 | ・飼料又は飼料添加物の廃棄又は回収その他の必要な措置に関する報告 ・表示基準の遵守に関する報告 |
販売業者 | 都道府県知事 | ・業務に関する報告 |
登録検定機関 | 農林水産大臣 | ・業務又は経理に関する報告 |
さらに、飼料安全法の施行に必要な限度において、農林水産大臣又は都道府県知事は、その職員に、次の被立入検査者の事業所等に立ち入らせて帳簿書類等を検査させ、関係者に質問させ、又は飼料若しくは飼料添加物若しくはこれらの原料を無償で収集させることができます(立入検査)。
立入検査の被検査事業所等
被立入検査者 | 被検査事業所等 | 立入検査者 | 検査内容 |
---|---|---|---|
製造業者 | 製造事業所 | 農林水産大臣 | 飼料安全法の施行に関する事項 |
輸入業者 | 輸入事業所 | 農林水産大臣 | 飼料安全法の施行に関する事項 |
運送業者 | 船舶又は車両 | 農林水産大臣 | 飼料安全法の施行に関する事項 |
保管(倉庫)業者 | 倉庫 | 農林水産大臣 | 飼料安全法の施行に関する事項 |
販売業者 | 販売事業所 | 農林水産大臣 | 飼料安全法第24条第2項及び第33条の規定の施行に関する事項 |
販売事業所 | 都道府県知事 | 飼料安全法の施行に関する事項 | |
飼料の使用者 | 畜舎等の飼料使用現場 | 都道府県知事 | 飼料安全法の施行に関する事項 |
登録検定機関 | 事務所、事業所、又は倉庫 | 農林水産大臣 | 飼料安全法の施行に関する事項 |
報告の徴取又は立入検査を妨害した者には罰則があります。
公定規格
飼料の公定規格
飼料の公定規格は、農林水産省告示で定められています。飼料の公定規格では(1-1)鶏用配合飼料、(1-2)豚用配合飼料、(1-3)牛用配合飼料、(1-4)養殖水産動物用配合飼料、(1-5)環境負荷低減型配合飼料、(2)混合飼料、及び(3)単体飼料に含まれる粗たんぱく質、粗脂肪、カルシウム、りん、特定のアミノ酸、非フィチン態りん、粗繊維、及び/又は粗灰分の最小量(%)又は最大量(%)が定められています。
さらに、飼料中の各成分を定量するための分析法も同農林水産省告示の中で定められています。
動物由来たんぱく質について
国内で動物由来たんぱく質を含む飼料又は飼料原料を製造する場合、その製造業者は製造工程について農林水産大臣の確認を受けなくてはなりません。飼料製造のために動物由来たんぱく質を含む飼料原料を使用する場合、農林水産大臣の確認を受けた事業者が製造した飼料原料を使用しなければなりません。
海外で製造された動物由来たんぱく質を含む飼料又は飼料原料を輸入する場合、その輸入業者はその輸入品の製造工程及び輸入業者自身について農林水産大臣の確認を受けなくてはなりません。
これらの確認は、独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)を介して農林水産大臣に申請します。
飼料中の有害物質
また、飼料用穀類、牧草、及び配合飼料等に含まれる残留農薬、重金属、カビ毒等の基準が省令又は通知で定められています。
飼料中の飼料添加物
さらに、各飼料に含まれる飼料添加物の量の基準値、飼料添加物の製造方法、飼料添加物を加える場合の飼料の製造方法、飼料添加物を添加された飼料の使用方法、飼料一般の保存方法、及び飼料一般の表示方法等が「飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令」で定められています。
基準・規格が定められたことによって禁止される行為は、上で説明したとおりです。
飼料等の適正製造規範(Good Manufacturing Practice: GMP)
食品の安全確保という観点から安全な飼料を供給するため、事業者が自ら飼料等の製造に基本的な安全管理(GMP)を導入するための指針として「飼料等の適正製造規範(GMP)ガイドライン」が定められました。
製造業者又は輸入業者は、このGMPガイドライン中の適正製造規範を実践していることを独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)に確認してもらうことができ、FAMICは当該事業者に確認証を発行します。
届出と登録
届出
事業開始時の届出
飼料又は飼料添加物の製造業者又は輸入業者はその事業を開始する2週間前までに農林水産大臣に、飼料又は飼料添加物の販売業者はその事業を開始する2週間前までに都道府県知事に以下の事項を届け出ることが飼料安全法によって定められています(法第50条)。
- 氏名及び住所(法人にあってはその名称、代表者の氏名、及び主たる事務所の所在地)
- 製造業者にあっては当該飼料又は飼料添加物を製造する事業所の名称及び所在地
- 販売業務を行う事業所及び当該飼料又は飼料添加物を保管する施設の所在地
- 製造、輸入、又は販売に係る飼料又は飼料添加物の種類(輸出用又は試験研究用として製造、輸入、又は販売するものについてはその旨)
- 当該飼料又は飼料添加物の製造、輸入、又は販売の開始年月日
- 製造業者にあっては製造する飼料又は飼料添加物の原料又は材料の種類
- 輸入業者にあってはその輸入に係る飼料又は飼料添加物が製造されたものである場合における当該飼料又は飼料添加物の原料又は材料の種類
以上の届出は、当該届出をする者の住所地又は所在地を管轄する都道府県の畜産部局へ正副2通の届出書を提出します。農林水産大臣への届出は、当該届出をする者の住所地又は所在地を管轄する都道府県知事(都道府県の畜産部局)を経由してなされます。届出事項に変更があった場合及び事業を廃止した場合、その日から1か月以内に農林水産大臣又は都道府県知事に届出をするものとされています。
さらに、温室効果ガス(Greenhouse Gas: GHG)削減剤が飼料に含まれているか否か、及び遺伝子組換え技術を利用した原料が飼料添加物の製造に使用されているか否かを届け出ることになっています。
飼料製造管理者設置の届出
特定飼料等(インド産落花生油かす、抗菌性物質製剤等)を取り扱う製造業者は、その事業所ごとに飼料製造管理者を設置し、飼料製造管理者の設置日から1か月以内に農林水産大臣に飼料製造管理者設置届を提出しなくてはなりません(法第25条)。具体的には、事業所の所在地を管轄する独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)の事務所に正副2通の届出書を提出します。
特定の飼料又は飼料添加物の輸入時の輸入届出
農林水産大臣が次の飼料又は飼料添加物に該当するおそれがあると指定するものを輸入する事業者は、農林水産省令で定められた内容の輸入届出書を提出する必要があります(法第51条)。
- 飼料安全法の下で定められた基準に合わない方法で製造された飼料又は飼料添加物
- 飼料安全法の下で定められた規格に合わない飼料又は飼料添加物
- 法第23条で規定されるような飼料又は飼料添加物
法第25条、法第50条、又は法第51条に規定される届出について、届出をしなかった者又は虚偽の届出をした者には罰則があります。
帳簿の備付け
飼料安全法の下で基準・規格が定められた飼料又は飼料添加物の製造業者、輸入業者、又は販売業者は、次の行為をしたときに以下の事項を帳簿に記載しなければならず、その帳簿を8年間にわたって保存しなければなりません。
行為 | 対象事業者 | 記載事項 |
---|---|---|
飼料を製造したとき | 製造業者 | ・飼料又は飼料添加物の名称 ・飼料又は飼料添加物の数量 ・飼料又は飼料添加物の製造年月日 ・飼料又は飼料添加物の製造に用いた原料又は材料の名称及び数量 ・飼料又は飼料添加物の製造に用いた原料又は材料が譲り受けたものである場合は譲り受けの年月日及び相手方の氏名又は名称 |
飼料を輸入したとき | 輸入業者 | ・飼料又は飼料添加物の名称 ・飼料又は飼料添加物の数量 ・飼料又は飼料添加物の輸入年月日 飼料又は飼料添加物の輸入先国名及び輸入の相手方の氏名又は名称 ・輸入した飼料又は飼料添加物の荷姿 ・輸入した飼料又は飼料添加物が製造されたものであるときは、当該飼料又は飼料添加物が製造された国名及び製造業者の氏名又は名称並びに原料又は材料の名称及び原産国名 |
飼料を譲受又は譲渡したとき | 製造業者 輸入業者 販売業者 | ・飼料又は飼料添加物の名称 ・飼料又は飼料添加物の数量 ・譲受又は譲渡の年月日 ・譲受又は譲渡の相手方の氏名又は名称 ・飼料又は飼料添加物の荷姿 |
特定飼料等製造業者の登録
特定飼料等の製造業者又は輸入業者は、その製造又は輸入した特定飼料等について独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)による検定を受け、その検定に合格しなければ、その特定飼料等を販売することができません。ただし、国内又は外国の特定飼料等製造業者が農林水産大臣の登録を受けたときは、その登録特定飼料等製造業者の特定飼料等は、FAMICによる検定を受けていなくても国内で販売可能になります(法第5条第1項)。
登録申請
特定飼料等の製造業者は、農林水産省令で定める特定飼料等(インド産落花生油かすを含む飼料、及び抗菌性物質製剤)の種類に従い、その事業所ごとに農林水産大臣の登録を受けることができます。登録を受けようとする事業者は、次の書類を農林水産大臣に提出します。
- 申請書
- 当該特定飼料等の検査を行う方法を定める規程(特定飼料等検査規程)
- 製造事業所の図面
- 農林水産省令で定める条件に適合する知識経験を有する特定飼料等検査実施者の氏名及び略歴を記載した書面
- 登録を受けようとする特定飼料等の試験成績
- 飼料安全法施行規則別表第三に規定する製品標準書、製品管理基準書、製造衛生管理基準書、及び品質管理基準書
- 法人にあっては定款及び登記事項証明書並びに役員の氏名及び略歴を記載した書面
ただし、特定飼料等製造業者の登録申請には欠格要件があります。すなわち、欠格要件に該当する者が製造業者である又は製造業者の役員である場合、その製造業者は特定飼料等製造業者の登録を申請できません。
製造事業所の検査・調査
登録申請した特定飼料等製造業者は、その事業所における以下の事項について農林水産大臣による検査を受けるか、又は独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)による調査を受けてその調査報告書を登録申請書と共に提出しなければなりません。
- 特定飼料等の製造設備
- 特定飼料等の検査設備
- 特定飼料等の製造管理及び品質管理の方法
- 特定飼料等の検査のための組織
- 特定飼料等検査規程で定める検査方法が農林水産省で定める方法に適合しているか否か
登録は、3年毎に更新されるものと定められています。登録事項に変更があるとき又は事業を廃止するときには届出が必要です。登録事項の変更届又は事業の廃止届をしなかった者には罰則があります。
特定飼料等の表示
飼料等製造業者が特定飼料等を製造し、その特定飼料等が独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)による検定を合格した場合、その飼料等製造業者は、当該特定飼料等又はその容器若しくは包装に、その特定飼料等が検定に合格したことを示す特別な表示を付して販売することができます(法第5条第1項)。
登録特定飼料等製造業者が当該登録に係る特定飼料等を製造した場合、その登録特定飼料等製造業者は、当該特定飼料等又はその容器若しくは包装に、その特定飼料等が登録特定飼料等製造業者によって製造されたことを示す特別な表示を付して販売することができます(法第16条、登録外国特定飼料等製造業者のものである場合は法第21条)。
検定に合格にしていない特定飼料等を販売した者、検定に合格にしていない特定飼料等又はその容器若しくは包装に検定に合格したことを示す特別な表示又はこれと紛らわしい表示を付して販売した者、及び登録(外国)特定飼料等製造業者ではないにもかかわらず特定飼料等又はその容器若しくは包装に登録(外国)特定飼料等製造業者によって製造されたことを示す特別な表示又はこれと紛らわしい表示を付して販売した者には罰則があります。
改善命令
次の場合、特定飼料等の製造設備若しくは検査設備の修理若しくは改造、製造管理及び品質管理の方法並びに検査のための組織の改善、並びに/又は特定飼料等検査規程の変更その他の必要な措置が農林水産大臣から命ぜられる場合があります(法第17条)。
- 特定飼料等製造設備が農林水産省令で定める技術上の基準に適合していないと認めるとき
- 特定飼料等検査設備が農林水産省令で定める技術上の基準に適合していないと認めるとき
- 製造管理及び品質管理の方法並びに検査のための組織が農林水産省令で定める基準に適合していないと認めるとき
- 特定飼料等の検査を農林水産省令で定める条件に適合する知識経験を有する者でない者に行わせたとき又はその数が農林水産省令で定める数に満たないとき
- 特定飼料等の検査の方法が農林水産省令で定める方法に適合していないと認めるとき
登録の取消し
農林水産大臣は、飼料安全法内の特定飼料等製造業者の登録に係る規定に反した登録特定飼料等製造業者の登録を取り消すことができます(法第18条)。
規格設定飼料製造業者の登録
農林水産大臣の登録を受けたものは、公定規格が定められている種類の飼料(「規格設定飼料」)について農林水産省令で定める検定の方法に従って公定規格による検定を行ったとき、当該規格設定飼料又はその容器若しくは包装に、公定規格に適合していることを示す特別な表示(「規格適合表示」)を付すことができます。規格設定飼料の製造業者は、登録検定機関にその規格設定飼料が公定規格に適合しているか否か検定することを求めることができます。規格設定飼料の検定を行う検定機関は登録検定機関であって、独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)ではありません。
登録申請
規格設定飼料の製造業者は、規格設定飼料の種類に従い、その事業所ごとに農林水産大臣の登録を受けることができます。登録を受けようとする事業者は、次の書類を農林水産大臣に提出します。
- 申請書
- 当該規格設定飼料の検査を行う方法を定める規程(規格設定飼料検査規程)
- 製造事業所の図面
- 農林水産省令で定める条件に適合する知識経験を有する規格設定飼料検査実施者の氏名及び略歴を記載した書面
- 登録を受けようとする規格設定飼料の試験成績
- 飼料安全法施行規則別表第六に規定する製品標準書、製品管理基準書、及び品質管理基準書
- 法人にあっては定款及び登記事項証明書並びに役員の氏名及び略歴を記載した書面
ただし、規格設定飼料製造業者の登録申請には欠格要件があります。すなわち、欠格要件に該当する者が製造業者である又は製造業者の役員である場合、その製造業者は規格設定飼料製造業者の登録を申請できません。
製造事業所の検査・調査
登録申請した規格設定飼料製造業者は、その事業所における以下の事項について農林水産大臣による検査を受けるか、又は独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)による調査を受けてその調査報告書を登録申請書と共に提出しなければなりません。
- 規格設定飼料の製造設備
- 規格設定飼料の検査設備
- 規格設定飼料の製造管理及び品質管理の方法
- 規格設定飼料の検査のための組織
- 規格設定飼料検査規程で定める検査方法が農林水産省で定める方法に適合しているか否か
登録は、3年毎に更新されるものと定められています。登録事項に変更があるとき又は事業を廃止するときには届出が必要です。登録事項の変更届又は事業の廃止届をしなかった者には罰則があります。
飼料安全法の第17条及び第18条の規定は、登録規格設定飼料製造業者にも準用されます。
規格適合表示
上で説明したように、登録規格設定飼料製造業者は、規格設定飼料について農林水産省令で定める検定の方法に従って公定規格による検定を行ったとき、当該規格設定飼料又はその容器若しくは包装に規格適合表示を付すことができます。逆に、登録規格設定飼料製造業者が製造した場合であっても、規格設定飼料が公定規格に適合しなければ当該規格設定飼料又はその容器若しくは包装に規格適合表示を付すことができません。
規格設定飼料製造業者の登録は、規格設定飼料製造業者の登録をしていなければ飼料製造業者は規格設定飼料を製造できないという意味でも規格設定飼料を販売できないという意味でもありません。規格設定飼料製造業者の登録をしないことは、自らが製造した規格設定飼料に規格適合表示を付すことができないという意味でしかありません。しかしながら、規格設定飼料製造業者は、自らの規格設定飼料に規格適合表示を付すことで非規格設定飼料製造業者の商品との間で自らの規格設定飼料を差別化をすることができます。
外国の規格設定飼料製造業者も国内の規格設定飼料製造業者と同様にして農林水産大臣の登録を受けることができます。登録外国規格設定飼料製造業者は、その製造した規格設定飼料又はその容器若しくは包装に規格適合表示を付すことができます。輸入業者は、規格適合表示又はこれと紛らわしい表示が付された非登録外国規格設定飼料製造業者の規格適合飼料を輸入してはなりません。
まとめ
長々と飼料安全法で規定される制度について説明してきました。以上の内容をまとめます。
飼料の製造業者、輸入業者、及び販売業者としての届出の前、又は特定飼料等製造業者若しくは規格設定飼料製造業者の登録の前に都道府県の関連部署やFAMIC、あるいは行政書士への相談をお勧めします。