今回から始まるマガジンにより、相続・遺言について詳しく解説していきたいと思います。相続というと相続税のことが真っ先に思い浮かびますが、故人の遺産承継が相続の基本です。相続に関係する役所への手続きとして、相続税の支払いに加え、相続財産の中に不動産が含まれている場合には不動産の名義変更である不動産登記の手続きを行う必要もあります。これらの手続きを行うには、遺産を遺族の間でどのように分けるか決めなくてはなりません。そこで、第一号のこのマガジンではこの遺産分割の基礎知識を説明します。
相続の基礎知識
相続税申告の期限は相続の開始から10か月
人が死亡したときは、同居の親族等が死亡の事実を知った日から7日以内に死亡者の死亡地、本籍地、又は届出人の所在地の市役所、区役所、又は町村役場に死亡届を提出することで死亡の事実がその死亡者の戸籍に反映され、同時に相続が始まります。死亡の事実を知った日の翌日から3か月までに相続を承認するか放棄するかを決定し、4か月までにその死亡者の死亡日が含まれる年の1月1日から死亡日までの所得金額を税務署に申告して所得税を納付し(準確定申告)、10か月以内に相続税を申告・納付することになっています。
相続分は相続人の立場によって異なる
亡くなった方を「被相続人」といい、被相続人の遺産(プラスの遺産もマイナスの遺産も含みます)を受け継ぐ人を「相続人」といいます。相続人は大きく配偶者とそれ以外に分けることができ、配偶者以外の相続人を(第1順位)子、(第2順位)「被相続人」の直系尊属、及び(第3順位)「被相続人」の兄弟姉妹に分けることができます。具体的な家族の構成から各相続人の民法で決まっている(法定)相続分を説明します。
(ア)「被相続人」の配偶者が存命であり、子がいる場合
- 配偶者の相続分は、相続財産の1/2、子の相続分は、1/2であり、子が複数人あるときは、各自の相続分は等しい
- 子には前の配偶者との間の子、「被相続人」が男親の場合では認知した非嫡出子も含まれ、嫡出子と非嫡出子との間では相続分に差はない
- 配偶者の連れ子には相続権が無いが、養子縁組をすることで配偶者の連れ子に相続権を与えることができる
(イ)「被相続人」の配偶者が故人であり、子がいる場合
- 子が全ての遺産を相続し、子が複数人あるときは、各自の相続分は等しい。子の範囲は(ア)と同じである
(ウ)「被相続人」の配偶者が存命であり、子がなく、「被相続人」の直系尊属(「被相続人」の親、祖父母等)が存命の場合
- 配偶者の相続分は、相続財産の2/3、直系尊属の相続分は、1/3である
- 「被相続人」の親と祖父母が存命の場合、相続人となるのは親のみである
- 「被相続人」の両親が存命の場合、各自の相続分は等しい
(エ)「被相続人」の配偶者がなく、子もいないが、「被相続人」の直系尊属が存命の場合
- 直系尊属が全ての遺産を相続する
- 「被相続人」の親と祖父母が存命の場合、相続人となるのは親のみである
- 「被相続人」の両親が存命の場合、各自の相続分は等しい
(オ)「被相続人」の配偶者が存命であり、子がなく、「被相続人」の直系尊属もないが、「被相続人」の兄弟姉妹が存命の場合
- 配偶者の相続分は、相続財産の3/4、兄弟姉妹の相続分は、1/4である
- 兄弟姉妹が複数人あるとき、各自の相続分は等しい
(カ)「被相続人」の配偶者がなく、子も「被相続人」の直系尊属もないが、「被相続人」の兄弟姉妹が存命の場合
- 相続人となるのは「被相続人」の兄弟姉妹のみである
- 図のように兄弟姉妹の中に半血の兄弟姉妹(父又は母の一方が異なる兄弟姉妹)がいる場合、半血の兄弟姉妹は、「被相続人」と父母を同じくする兄弟姉妹の半分の相続分を有する(例えば、「被相続人」と父母を同じくする兄弟姉妹が1人、半血の兄弟姉妹が2人いる場合、父母を同じくする兄弟姉妹の相続分は1/2、半血の兄弟姉妹の相続分はそれぞれ1/4である)
以上、法律で定められている相続人の範囲と各相続人が受け継ぐことができる遺産の割合(法定相続分)を紹介しました。次号の記事は、相続人の範囲が広がったり小さくなったりすることを説明します。