アメリカに入国できる犬の要件が2024年8月1日に変わりました

ペットの犬猫をマサチューセッツ、メリーランド、テキサス、又はカリフォルニアに連れて行くときの要件と準備

ペットと海外移住

 この記事は、ペットの犬猫が日本以外の国に入国する際にペットに課される要件を説明します。日本を出国するまでの手続きについては本ブログの記事「ペットと共に海外移住したいときの準備と手続き」をご覧ください。ペットの犬猫をニューヨーク州又はハワイ州に連れて行くときの要件と準備については本ブログの記事「ペットの犬猫をニューヨーク又はハワイに連れていくための準備と手続き」をご覧ください。

 まず初めに、ペットをどの国へ連れていく場合も、病気のペットを入国させようとすると入国を拒否されることがあります。入国を拒否されたペットはお客様の費用で日本へ送り返されることになります。病気のペットを海外へ連れていくことは絶対にやめましょう。

アメリカ全体での入国要件

 アメリカ合衆国は「合州国」であり、州毎に異なる規制が存在する場合があります。アメリカ全体のレベルでは、口蹄疫、ラセンウジバエの寄生、狂犬病が問題となっている国からアメリカに入国するペットについては獣医師による証明書が必要とされています。日本の国外に出たことが無いペットについてはこれらの病気について心配する必要はありません。まず、アメリカ全体での規制を紹介します。

 アメリカ全体での規制については、アメリカ農務省(USDA)とアメリカ疾病管理予防センター(CDC)が管理しています。ペット(愛玩用)としての犬猫の入国は、USDAではなくCDCによって管理されています。

イヌの場合

低リスク国で生育した場合

 アメリカ国内に持ち込もうとしている犬が、生まれてから日本国外へ出国したことがない、又はアメリカに入国する直前6か月以内に日本又は狂犬病のリスクが低い国に在留していたペットの犬である場合、アメリカのCDCはその犬がアメリカに入国する際にCDC Dog Import Formをオンラインで提出することを2024年8月1日よりアメリカ入国の要件としました。CDC Dog Import Formの記入についてはこちらの記事をご覧ください。

 これまでISO適格マイクロチップの装着は、狂犬病の低リスク国出身の犬について免除されていましたが、2024年8月1日より全ての犬についてISO適格マイクロチップの装着が適用されるようになりました。また、アメリカに持ち込める犬の月齢は6か月齢以上であることを要します。

 アメリカに到着したらCDC Dog Import Formの受取書をプリントしたもの又はスマートフォンなどのデバイスに表示して税関職員にこれを提示してアメリカに入国することができます。

 低リスク国からアメリカに入国するときは狂犬病予防接種証明書(英文)とマイクロチップ装着証明書(英文)の提出が求められていませんが、アメリカの州によっては狂犬病予防接種証明書(英文)とマイクロチップ装着証明書(英文)の提出が求められる可能性があるため、用意しておくとよいでしょう。

高リスク国での滞在歴がある場合

 アメリカ国内に持ち込もうとしている犬が、狂犬病のリスクが高い国で生育した犬である、又は狂犬病のリスクが低い国で生育した犬であるが、アメリカに入国する6か月以内に狂犬病の高リスク国に滞在していた犬であるとき、その犬をアメリカ国内に持ち込むための要件が厳しくなります。この場合に求められる要件を以下に示します。

  • アメリカに持ち込む犬は、アメリカ到着時に健康であること
  • アメリカに持ち込む犬は、アメリカ到着時に6か月齢以上であること
  • アメリカに持ち込む犬は、ISO適格マイクロチップを装着していること
  • アメリカに持ち込む犬は、マイクロチップ装着後に(不活化ワクチン又は組換えワクチンによる)狂犬病予防接種を受けていること
  • アメリカに持ち込む犬は、狂犬病予防接種を受けてから早くとも30日後にCDCが認証する臨床検査所(日本の場合、一般財団法人生物科学安全研究所)で狂犬病抗体価検査を受け、その検査の結果が基準値を満たしていること

狂犬病抗体価検査については、遅くともアメリカへ出発する28日前には検査結果が得られるように検査を受けます。

 高リスク国滞在歴がある犬をアメリカに持ち込むときに必要な手続きと書類を以下に示します。

  • CDC Dog Import Formをオンラインで提出すること
  • 狂犬病予防接種証明書(英文)とマイクロチップ装着証明書(英文)をそれぞれ2コピー用意すること
  • 狂犬病抗体価検査の結果を記入する前にCDC Dog Import Formを提出してしまった場合、狂犬病抗体価検査の検査通知書(英文)を用意すること
  • CDC登録動物保護施設に犬を預ける予約をすること(CDC登録動物保護施設は、アトランタ(ジョージア州)、ロサンジェルス(カリフォルニア州)、マイアミ(フロリダ州)、ニューヨーク(貨物輸送のみ、ニューヨーク州)、ワシントンDC、及びフィラデルフィア(ペンシルバニア州)の空港近くにあります)

 高リスク国滞在歴がある犬は、2024年8月1日以前ではCDCの空港保健所がある18か所の空港に到着することができましたが、2024年8月1日以降ではCDC登録動物保護施設がある6箇所の空港に利用可能空港が限定されました。

 上に挙げた6カ所の空港のうちのどれかに到着したらCDC Dog Import Formの受取書、狂犬病予防接種証明書(英文)とマイクロチップ装着証明書(英文)、及びCDC登録動物保護施設の予約確認書をU.S. Customs and Border Protectionに示します。犬は登録動物保護施設による診察を受けて入国を認められるか、最大で28日間の検疫措置になるか、あるいは入国を認められずに元の国に戻されることになります。登録動物保護施設での費用は飼主の負担になります。

ネコの場合

 イヌの場合のように種々の証明書が必要になるわけではないですが、入国時に利用した空港内で検査を受け、人間に感染し得る感染症の兆候があるネコは入国を拒否される場合があります。また、CDCはネコについては狂犬病ワクチンの接種証明書を必要としてはいませんが、狂犬病ワクチンの接種を勧めています。ネコへの狂犬病ワクチン接種の必要性と接種証明書の要求は、州によって異なる可能性があります。

 次にペットの犬猫を長期滞在目的でマサチューセッツ州、メリーランド州、テキサス州、又はカリフォルニア州に連れて行くときの準備について説明します。どの州でも検疫証明書/健康証明書の発行を受けていることが要件にななります。

ペットをマサチューセッツ州へ連れて行くとき

 マサチューセッツ州にはハーバード大学やマサチューセッツ工科大学などの有名な大学があり、多くの留学生がこれらの大学に在籍しています。マサチューセッツ州農業資源局(Massachusetts Department of Agricultural Resouces)のホームページによるとペットを長期滞在目的でマサチューセッツ州に連れて行くときのペットの要件は以下のとおりです。

  • マサチューセッツ州に入境する犬猫は、入境前12か月以内に狂犬病予防接種を受けていること
  • 犬も猫も、狂犬病予防接種を受けずにマサチューセッツ州に入境した場合、30日以内に狂犬病予防接種を受けること
  • 健康証明書に犬猫が健康であること、病気の兆候を示していないこと、及び内部寄生虫/外部寄生虫が寄生していないことが宣誓されていること(健康証明書の有効期間は30日)

ペットをメリーランド州へ連れて行くとき

 メリーランド州にはアメリカにおける医学研究の拠点である国立衛生研究所(NIH)があり、多くの留学生がNIH傘下の研究所に在籍しています。メリーランド州農業局(Maryland Department of Agriculture)によるとペットを長期滞在目的でメリーランド州に連れて行くときのペットの要件は以下のとおりです。

  • 以下の項目について記載されている検疫証明書を提出すること(日本では動物検疫局の輸出検疫証明書がこの検疫証明書に相当します)
    • 荷送人と荷受人の氏名と住所
    • ペットの出身国(日本からアメリカに入国した場合、日本になります)
    • ペットのID(名前、マイクロチップ番号等)
    • 入境に特別な病気の検査が求められている場合、その検査の日付と結果の説明(日本出身のペットについては関係ないかと思います)
    • ペットが感染性の病気にかかっている、又は最近かかった兆候が健診では確認されなかったことの獣医師による宣誓

以下の記述が検疫証明書に含まれていることが求められます。

  • メリーランド州に持ち込む犬猫は、狂犬病発生地域の出身ではないこと
  • メリーランド州に持ち込む犬猫は、メリーランド州に入境する直前の6か月以内に狂犬病ウイルスに接触していないこと
  • メリーランド州に持ち込む犬猫は、少なくとも1回の狂犬病予防接種を受けていること

 日本の動物検疫所が発行する輸出検疫証明書の備考欄に犬猫が日本で生まれ、生育してきたこと、及び日本では1956年以降狂犬病の発生がないことを記載してもらうことができるか輸出検査の予約時に質問してみてください。動物検疫所で対応できないようでしたら別途動物病院で健康証明書を作成することになります。

検疫証明書を得たら

 以上の要件を満たす検疫証明書は、発行から30日まで有効であるとされています。このようにして作成された検疫証明書は、ペットの出身州の動物検疫当局からメリーランド州の動物検疫当局に送られるものとされています。これは、他の州からメリーランド州に動物を持ち込む場合を想定しているため、他の国からメリーランド州に動物を持ち込む場合にもあてはまるのかわかりません。また、日本の動物検疫所からメリーランド州農業局動物衛生課に輸出検疫証明書のコピーを送ってくれるかもわかりません。実際にはメリーランド州農業局にメールで輸出検疫証明書の提出が必要であるか聞いてみるしかないと思います。

ペットをテキサス州に連れて行くとき

 テキサス州はビジネスフレンドリーな州であるということで日系企業も400社以上が事業所をテキサス州に設置していると言われています。テキサス州公衆衛生局(Texas Department of State Health Service)のホームページによるとペットを長期滞在目的でテキサス州に連れて行くときのペットの要件は以下のとおりです。

  • テキサス州に入境する犬猫は、狂犬病予防接種を受けていること
  • テキサス州に入境する犬猫は、狂犬病予防接種証明書の発行を受けていること
  • テキサス州に入境する犬猫は、狂犬病予防接種から30日間の待機時間を経過していること

 テキサス州では健康証明書は求められていません。

ペットをカリフォルニア州に連れて行くとき

 2022年の時点でカリフォルニア州には2000社を超える日本企業の事業所が存在します(ジェトロ日系企業実態調査より)。カリフォルニア州公衆衛生局(California Department of Public Health)のホームページによるとペットを長期滞在目的でテキサス州に連れて行くときのペットの要件は以下のとおりです。

  • カリフォルニア州に入境する犬は、狂犬病予防接種を受けていること
  • カリフォルニア州に入境する犬は、狂犬病予防接種証明書の発行を受けていること
  • 猫については特別な書類の準備は必要ありません

 カリフォルニア州に連れてきた犬を誰かに譲ったり、売却することを予定している場合、健康証明書が必要になります。その場合、健康証明書はカリフォルニア州入境前の10日以内に発行されたものであることを要します。健康証明書は、カリフォルニア州の住所地が属する郡の保健局に提出します。

日本へ帰るとき

 ペットと一緒に日本に帰国するための日本側の検疫の手続きについてはこちらの記事をご覧ください。

 アメリカ側の手続きとしてアメリカ農務省(USDA)認定獣医師による健康診断を受け、アメリカ政府の獣医官による裏書を得ることができます。USDA非認定の獣医師もいますので、アメリカ動植物検疫局(Animal and Plant Health Service)のページからアメリカ国内の居住地の近くのUSDA認定獣医師を検索してください。

 アメリカのUSDA認定獣医師が発行した健康証明書ファイルには、獣医輸出証明書(VEHCS: Veterinary Export Health Certificate System)を介して電子署名が付され、健康証明書を発行した獣医師がこれを紙にプリントアウトしてペットの飼い主に渡します。日本の動物検疫所は、アメリカのデータベースの中にある健康証明書を動物検疫所に提出する輸出国政府機関発行の証明書として認めていますが、プリントアウトした紙も携帯しておくほうがよいでしょう。

 以上、ペットの犬猫をマサチューセッツ州、メリーランド州、テキサス州、又はカリフォルニア州に長期滞在目的で連れて行くときの準備について説明しました。テキサス州及びカリフォルニア州は健康証明書を求めていませんが、マサチューセッツ州及びメリーランド州では獣医師による健康証明が必要です。アメリカへの移住にペットを連れていきたいのだけれども自分で渡航準備の全てを行う時間がない、助けを必要としている、という方は行政書士渡邉光一事務所にご相談ください。

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