この記事では、ペットの犬猫とイギリスに入国するときに必要な書類と知っておきたい情報についてイギリス政府のホームページ(GOV.UK)の記載を基に説明します。 他の国の手続きについては、「ペットと海外移住」の中から行きたい国を選択してご覧ください。アイルランド渡航を考えておられる方は、こちらの記事をご覧ください。日本を出国するまでの手続きについては本ブログの記事「ペットと共に海外移住したいときの準備と手続き」をご覧ください。
ペットの犬猫とイギリスに入国するための要件と書類
ペットの要件
まず初めに、ピットブルテリア、土佐犬、ドゴ・アルヘンティーノ、及びブラジリアンガードドッグはイギリスに持ち込めません。日本で生まれてから日本国外へ出たことがない犬猫のイギリスへの入国の要件は次のようになっています。
- 一回の入国につき入国を認められるペットの数は最大で5頭である
- ペットの週齢は狂犬病ワクチン接種時で12週齢以上である
- ISO11784規格又はISO11785規格のマイクロチップの装着が必要である
- 狂犬病ワクチン(不活化ワクチン又は組換えワクチン)の接種がマイクロチップの装着後に必要である
- 日本で出生、在住していたペットには狂犬病抗体価検査は不要である
- イギリス入国前の狂犬病ワクチンの接種から少なくとも21日間を経過してからイギリスに入国する
- エキノコックス(多包条虫)の駆除のためにイギリス入国24時間前から120時間前までにプラジカンテル又は同等の駆虫薬でペットの犬を処理する(猫には不要です)
イギリス政府のホームページでは狂犬病ワクチンの例としてCanvac RワクチンとCanvac DHPPiL+Rワクチンを挙げています。Canvac Rワクチンを使用するときの接種プロトコルとしては、5か月齢以上のペットには1回、5か月齢未満のペットには2回接種すること、及びCanvac Rワクチン接種したペットは入国時に17週齢以上であることが記載されています。Canvac DHPPiL+Rワクチンを使用するときの接種プロトコルとしては、イヌには3回接種すること、及びCanvac DHPPiL+ワクチン接種したイヌは入国時に21週齢以上であることが記載されています。Canvac Rワクチンは狂犬病に対する単体ワクチンであり、Canvac DHPPiL+Rワクチンは混合ワクチンです。日本では狂犬病に対する混合ワクチンは使用されていないようです。
必要書類
日本からイギリスへペットを連れて行くときの必要書類には次の書類が挙げられます。
- 狂犬病ワクチン接種証明書
- 英国ペット健康証明書
- 非商用ペット移動宣誓書
- マイクロチップ証明書(R06.05.23追記)
狂犬病ワクチン接種証明書は、日本の動物検疫所での輸出検疫に獣医師発行の狂犬病予防接種注射済証を持参して狂犬病ワクチン接種の記録を英国ペット健康証明書に記載してもらうことで作成されます。念のために獣医師発行の狂犬病予防接種注射済証の原本とその翻訳を携帯してください。
英国ペット健康証明書は、出発前の10日以内に作成されることを要します。英国ペット健康証明書には、ペットの動物種(学名)、性別、色、品種、マイクロチップの識別番号、識別システム(マイクロチップとタトゥーのどちらによる識別か)、ペットの生年月日、マイクロチップの移植日又は読取日、狂犬病ワクチン接種日、ワクチンの名称及び製造業者、ワクチンのバッチ番号、ワクチン接種の有効期間、狂犬病ウイルスの抗体検査をする場合は検査のための血液採取日、エキノコックス(多包条虫)の処置に使用した駆虫薬(プラジカンテル又は同等の駆虫薬)の製品名及び製造業者、処置日、並びに処置を実施した医師の名前を記載し、署名及び印をします。最後に検疫所の検疫官(獣医師)が署名押印して証明書が完成します。
非商用ペット移動宣誓書は、イギリスに持ち込むペットはイギリス国内での譲渡を目的としたものではない旨を宣誓するための書類です。
書類が揃っていなかったり、書類に不備があったりした場合にはペットが最大で4か月間にわたって係留されることになりますので注意が必要です。
現在、飛行機でペットを直接イギリスに運ぶ場合は、ペットを航空貨物として運ばなくてはなりません。別送品として貨物扱いでペットを送りたくない方は、フランスやオランダまで飛行機で移動し、そこからユーロトンネルを使用して鉄道で、あるいはフェリーでイギリスまで移動する必要があります。鉄道を利用する場合は、自動車を列車に載せてフランスイギリス間を移動する方式であるため、イギリスからフランスまで自動車で迎えに来てくれる人がいない場合、ペットタクシーを利用することになります。フランス経由でイギリスへペットを連れて行くことを考えている方は記事「ペットの犬猫とEU諸国へ入国するための準備と手続き~フランス・ドイツ編」を参考にしてください。オランダ経由でイギリスへペットを連れて行くことを考えている方は記事「ペットの犬猫をオランダへ連れて行くための準備と手続き」を参考にしてください。別送品として航空貨物扱いでペットをイギリスに送る場合、飼主がイギリスに到着してから5日以内にペットも貨物便でイギリスに到着することが必要になります。
ただし、国際盲導犬連盟(IGDF)又はAssistance Dogs Internationalのメンバーである機関により訓練を受けた介助犬、盲導犬、及び聴導犬は一緒に旅客機に乗ってイギリスへ行くことができます。
Transfer of Residence (ToR) 申請
ToR申請は、個人の持ち物、ペット、及び自動車をイギリスに持ち込む際にその物にかかる関税を軽減・免除してもらうためにする申請です。ここではペットをイギリスへ連れて行く場合のToR申請を簡単に説明します。
申請者 | ペットをイギリスに持ち込む旅行者・移住者 |
申請方法 | オンライン |
申請時期 | 原則としてイギリス入国前 |
提出書類 | ・物品リスト(特定の書式はありません) ・パスポートの顔写真ページ ・イギリス国内の住所の証明書(賃貸契約書等) ・日本国内の住所の証明書(英文銀行残高証明書等) ・イギリス様式動物健康証明書 |
必要な書類を提出し、申請が認められると番号(unique reference number: URN)が送られてきます。貨物としてペットをイギリスに輸送する場合にはこのURNを輸送業者に伝える必要があります。
イギリスから日本に帰るとき
ペットと一緒にイギリスから日本に帰国するための日本側の検疫の手続きについてはこちらの記事をご覧ください。
イギリス側の手続きとして、イギリスで輸出前健診を受け、健康診断書にイギリス政府の獣医官の裏書をもらいます。健診を受ける動物病院が輸出健康証明書(Export Health Certificate)を発行することができる動物病院であるか否かを受診前に確認してください。輸出健康証明書を発行することができる動物病院であればイギリス政府の獣医官として健康診断書にサインをすることができる獣医師がその動物病院に所属しているはずです。イギリス国内のかかりつけ動物病院にそのような獣医師が所属していない場合、輸出健康証明書を発行することができる動物病院を教えてくれるようにかかりつけ動物病院に頼んでみてください。輸出健康証明書を発行することができる動物病院をイギリス政府ホームページ内のページ「Find a professional to certify export certificates」から見つけることもできます。
輸出健康証明書の発行に加え、イギリスの輸出申請書(Export Application)の作成も必要です。輸出前健診の受診時に輸出申請書を作成します。こうして裏書を得た健康証明書が日本の動物検疫所に提出する輸出国政府機関発行の証明書になります。
イギリスは、外国から飛行機でイギリスに入国するペットについてはチャーター機を除いて貨物便による輸送しか認めていませんが、イギリスから飛行機で外国へ出国するペットについては旅客便による輸送を認めています。
以上、イギリス政府のホームページに記載されている情報を基に説明しました。現在、直接イギリスへペットを飛行機で運ぶ場合は航空貨物として運ばなくてはなりません。ペットを連れてイギリスに行きたいのだけれども何から始めたらいいのかわからないという方、又は検疫の手続きに関して助けを必要としているという方は行政書士渡邉光一事務所にご相談ください。