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保健師・助産師・看護師の資格・処分・業務をわかりやすく解説|保健師助産師看護師法のポイント(令和8年版)

医療等
この記事は約25分で読めます。

 医療現場では、保健師・助産師・看護師・准看護師がそれぞれ異なる役割と責任を担っています。しかし、その違いや免許制度、処分の仕組みを体系的に理解する機会は意外と多くありません。
本記事では、保健師助産師看護師法を条文に沿って整理し、各職種の業務範囲や免許制度、行政処分の流れまでをまとめました。医療機関の管理者や医療職を目指す方、行政手続に関わる方の参考になれば幸いです。

第一部:保健師・助産師・看護師とは?

法の目的(法第1条)

目的:保健師、助産師及び看護師の資質の向上、並びにそれによる医療及び公衆衛生の普及と向上

保健師・助産師・看護師の違い(法第2条~第6条)

職種免許権者業務内容
保健師(第2条)厚生労働大臣保健指導に従事
助産師(第3条)厚生労働大臣助産・保健指導に従事
看護師(第5条)厚生労働大臣療養上の世話・診療の補助
准看護師(第6条)都道府県知事医師・歯科医師・看護師の指示の下での療養上の世話・診療の補助

第二部:免許と処分

欠格要件(法第9条)

内容:下記の各号のいずれかに該当する者には免許を与えないことがある。

  1.  罰金以上の刑に処せられた者
  2.  前号に該当する者を除くほか、保健師、助産師、看護師又は准看護師の業務に関し犯罪又は不正の行為があった者
  3.  心身の障害により保健師、助産師、看護師又は准看護師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
  4.  麻薬、大麻又はあへんの中毒者

法第9条第3号の厚生労働省令で定める者(施行規則第1条)

内容:「厚生労働省令で定める者」は、下記のいずれかの理由により、保健師・助産師・看護師・准看護師の業務を適正に行うに当たって必要な認知・判断・意思疎通を適切に行うことができない者である。

  • 視覚、聴覚、音声機能若しくは言語機能の障害
  • 精神の機能の障害

障害を補う手段等の考慮義務(施行規則第1条の2)

義務者:免許権者

義務の場面:免許を申請した者が施行規則第1条に規定する者に該当すると認める場合

義務の内容:免許付与の可否判断に際し、申請者が現に利用している障害を補う手段又は現に受けている治療等により障害が補われ、又は障害の程度が軽減している状況を考慮する。

保健師籍・助産師籍・看護師籍(法第10条)

内容:厚生労働省に保健師籍・助産師籍・看護師籍を備える。

登録事項:

  • 登録年月日
  • 第14条第1項の規定による処分に関する事項
  • その他の免許に関する事項

准看護師籍(法第11条)

内容:都道府県准看護師籍を備える。

登録事項:

  • 登録年月日
  • 第14条第2項の規定による処分に関する事項
  • その他の免許に関する事項

登録と免許証の交付(法第12条)

内容:保健師・助産師・看護師・准看護師の各職種の試験合格者は、保健師籍・助産師籍・看護師籍・准看護師籍への登録を申請し、免許権者から免許証を交付される。

免許の別免許の申請権者
保健師免許(保健師国家試験と看護師国家試験)の合格者
助産師免許(助産師国家試験と看護師国家試験)の合格者
看護師免許看護師国家試験の合格者
准看護師免許准看護師国家試験の合格者

◇保健師・助産師・看護師の免許申請(第1項)

内容:保健師・助産師・看護師の免許を受けようとする者は、住所地の都道府県知事を経由して、必要書類を厚生労働大臣に提出する。

◇准看護師の免許申請(第2項)

内容:准看護師の免許を受けようとする者は、住所地の都道府県知事に必要書類を提出する。

◇保健師籍・助産師籍・看護師籍の登録事項(第1項)

  1.  登録番号及び登録年月日
  2.  本籍地都道府県名(日本の国籍を有しない者については、その国籍)、氏名及び生年月日
  3.  保健師籍又は看護師籍にあっては、性別
  4.  保健師国家試験、助産師国家試験又は看護師国家試験合格の年月
  5.  法第14条第1項の規定による処分に関する事項
  6.  法第15条の2第3項に規定する保健師等再教育研修を修了した旨
  7.  その他厚生労働大臣の定める事項

第7号の「その他厚生労働大臣の定める事項」は、下記の事項である(施行規則第3条)

  1.  再免許の場合には、その旨
  2.  免許証を書換交付又は再交付した場合には、その旨並びにその事由及び年月日
  3.  登録の抹消をした場合には、その旨並びにその事由及び年月日

◇准看護師籍の登録事項(第2項)

  1.  登録番号及び登録年月日
  2.  本籍地都道府県名(日本の国籍を有しない者については、その国籍)、氏名、生年月日及び性別
  3.  准看護師試験合格の年月及び試験施行地都道府県名
  4.  法第14条第2項の規定による処分に関する事項
  5.  法第15条の2第4項に規定する准看護師再教育研修を修了した旨
  6.  その他厚生労働大臣の定める事項

第6号の「その他厚生労働大臣の定める事項」は、下記の事項である(施行規則第4条)

  1.  再免許の場合には、その旨
  2.  免許証を書換交付又は再交付した場合には、その旨並びにその事由及び年月日
  3.  登録の抹消をした場合には、その旨並びにその事由及び年月日

法第9条第3号の適用時の意見聴取(法第13条)

権限者:免許権者

権限行使の場面:免許を申請した者が第9条第3号に掲げる者に該当すると認め、同条の規定により免許を与えないこととするとき

権限の内容:免許権者は、あらかじめ、当該申請者にその旨を通知し、その求めに応じて職員にその意見を聴取させなければならない。

各籍への登録・各免許証に関する事務規定

登録事項の変更(施行令第3条)

◇訂正申請(第1項・第2項・第3項)

内容:保健師・助産師・看護師・准看護師は、施行令第2条に定める事項に変更があったときは、保健師籍・助産師籍・看護師籍・准看護師籍の訂正を申請しなければならない。

申請期間:変更から30日以内

職種変更事項申請先
保健師施行令第2条第1項第2号又は第3号厚生労働大臣
助産師施行令第2条第1項第2号厚生労働大臣
看護師施行令第2条第1項第2号又は第3号厚生労働大臣
准看護師施行令第2条第2項第2号免許を与えた都道府県知事

◇訂正手続(第4項)

内容:訂正申請には、訂正事項に関する変更があったことを証明する書類を添えなければならない。

◇都道府県知事の媒介(第5項)

内容:業務に従事する保健師・助産師・看護師・准看護師は、就業地の都道府県知事を経由して訂正申請をする。

登録の抹消(施行令第4条)

◇登録抹消(第1項・第2項)

内容:保健師・助産師・看護師・准看護師は、保健師籍・助産師籍・看護師籍・准看護師籍の登録の抹消を申請するには、免許権者に申請書を提出する。

職種申請書の提出先
保健師
助産師
看護師
厚生労働大臣
准看護師免許を与えた都道府県知事

◇都道府県知事の媒介(第3項)

内容:業務に従事する保健師・助産師・看護師・准看護師は、就業地の都道府県知事を経由して登録抹消の申請をする。

死亡等の場合の登録の抹消(施行令第5条)

◇死亡・失踪時の登録消除義務(第1項)

義務者:死亡・失踪の届出義務者

内容:保健師・助産師・看護師・准看護師が死亡し、又は失踪宣告を受けたときは、保健師籍・助産師籍・看護師籍・准看護師籍の登録の抹消を申請しなければならない。

申請期間:保健師・助産師・看護師・准看護師の死亡・失踪から30日以内

◇都道府県知事の媒介(第2項)

内容:業務に従事していた保健師・助産師・看護師・准看護師について第1項の申請をする場合には、就業地の都道府県知事を経由する。

「失踪宣告」とは
 ある人が行方不明となり、その行方不明者の生死が7年間明らかではない場合、又は戦争・海難事故・地震等が原因で行方不明となり、その行方不明者の生死が1年間明らかではない場合に、その行方不明者の利害関係人の申し立てを受け、家庭裁判所はその行方不明者について失踪宣告することができる。

登録抹消の制限(施行令第5条の2)

制限の場面下記に掲げる保健師・助産師・看護師・准看護師について、法第14条の規定により免許の取消し処分をするときであって、当該保健師・助産師・看護師・准看護師から施行令第4条に基づく登録の消除の申請があった場合

  • 罰金以上の刑に処せられた
  • 業務に関する犯罪・不正行為を行った
  • 保健師・助産師・看護師・准看護師としての品位を損なう行為を行った

抹消申請のタイミング:法第14条に規定される処分に係る手続の通知後

処分に関する事項の保健師・助産師・看護師・准看護師の各籍への記載を避けたい保健師・助産師・看護師・准看護師は、その手続の前に籍の登録抹消を申請する可能性がある。

ポイント:処分に関する事項の法第10条第11条の規定に基づく各職種籍への記載を避けたい者は、法第14条に規定される処分に係る手続が完了する前に登録抹消を申請する可能性がある。施行令第5条の2は、このような事態に対応することを目的としている。

制限の内容:厚生労働大臣又は都道府県知事は、当該処分に関する手続が結了するまでは、当該保健師・助産師・看護師・准看護師に関わる登録を抹消しないことができる。

免許証の書換交付(施行令第6条)

◇書換交付申請(第1項・第2項)

内容:保健師・助産師又・看護師・准看護師は、免許証の記載事項に変更を生じたときは、免許権者に免許証の書換交付を申請することができる。

職種申請書の提出先
保健師
助産師
看護師
厚生労働大臣
准看護師免許を与えた都道府県知事

◇申請手続(第3項・第4項)

内容:免許証の書換交付の申請は、申請書に免許証を添え、就業地の都道府県知事を経由して免許権者に提出することで行う。

免許証の再交付(施行令第7条)

◇再交付申請(第1項・第2項)

内容:保健師・助産師又・看護師・准看護師は、免許証を失くしたり損傷したりしたときは、免許権者に免許証の再交付を申請することができる。

職種申請書の提出先
保健師
助産師
看護師
厚生労働大臣
准看護師免許を与えた都道府県知事

◇免許証損傷時の再交付(第4項)

内容:損傷した免許証の代わりを申請をする場合には、申請書にその損傷した免許証を添える。

◇古い免許証の返納(第5項)

内容:失した免許証が見つかったときは、5日以内に、厚生労働大臣又は免許を与えた都道府県知事に古い免許証を返納する。

◇都道府県知事の媒介(第6項)

内容:業務に従事する保健師・助産師・看護師・准看護師は、就業地の都道府県知事を経由して再交付申請をする。

免許証の返納(施行令第8条)

◇登録抹消申請時の返納(第1項・第2項)

内容:保健師・助産師・看護師・准看護師は、保健師籍・助産師籍・看護師籍・准看護師籍の登録の抹消を申請するときは、免許証を免許権者に返納する。死亡・失踪時の届出義務者が登録の抹消を申請する場合も同様である。

職種免許証の返納先
保健師
助産師
看護師
厚生労働大臣
准看護師免許を与えた都道府県知事

◇免許取消処分時の返納(第3項・第4項)

内容:保健師・助産師・看護師・准看護師は、5日以内に、免許証を処分権者に返納する。

職種免許証の返納先
保健師
助産師
看護師
厚生労働大臣
准看護師処分をした都道府県知事

◇都道府県知事の媒介(第5項)

内容:免許証の返納は、就業地の都道府県知事を介して行うことができる。

保健師・助産師・看護師・准看護師の処分関係(法第14条・第15条関係)

保健師・助産師・看護師・准看護師の処分(法第14条)

◇保健師・助産師・看護師の処分(第1項)

権限者:厚生労働大臣

内容:保健師・助産師・看護師が第9条各号のいずれかに該当したり、保健師・助産師・看護師としての品位を損なうような行為を行ったりしたとき

処分の内容:

  1.  戒告
  2.  3年以内の業務の停止
  3.  免許の取消し

◇准看護師の処分(第2項)

権限者:都道府県知事

内容:准看護師が第9条各号のいずれかに該当したり、准看護師としての品位を損なうような行為を行ったりしたとき

処分の内容:

  • 1. 戒告
  • 2. 3年以内の業務の停止
  • 3. 免許の取消し

◇再免許(第3項)

内容:免許の取消処分を受けた者であっても、その後の事情により再免許が与えられる場合がある。

  • 保健師・助産師・看護師:厚生労働大臣
  • 准看護師:都道府県知事

例外:第9条の第1号若しくは第2号に該当し、又は保健師・助産師・看護師・准看護師としての品位を損なうような行為があったとして取消処分を受けた者については、取消処分の日から起算して5年が経過しなければ、再免許が与えられることはない。


行政処分の原因となる事案

 行政処分の原因となる事案が、下記のように、保健師、助産師、看護師に対する行政処分の考え方(平成28年12月14日現在)に掲げられている。

  1.  身分法(医師法歯科医師法・保健師助産師看護師法等)違反
  2.  麻薬及び向精神薬取締法違反・覚せい剤取締法違反・大麻取締法違反
  3.  殺人及び傷害
  4.  業務上過失致死傷(交通事犯)
  5.  業務上過失致死傷(医療過誤)
  6.  危険運転致死傷
  7.  わいせつ行為等
  8.  詐欺・窃盗
  9.  診療報酬及び介護報酬の不正請求等

処分の手続(法第15条)

内容:第15条は、行政が行う保健師・助産師・看護師・准看護師の処分の手続について定めている。

行政による処分の流れ
  • ステップ1
    医道審議会への諮問

  • ステップ2
    処分の名宛人への通知
  • ステップ3
    意見(弁明)の聴取(聴聞)

  • ステップ4
    聴聞調書および報告書の作成
  • ステップ5
    不利益処分の決定

保健師・助産師・看護師の処分

行政処分の手続概要

戒告業務停止免許取消
決定権者厚生労働大臣厚生労働大臣厚生労働大臣
実務者都道府県知事、又は
医道審議会の委員
都道府県知事
必要な手続(ステップ1)医道審議会への諮問医道審議会への諮問医道審議会への諮問
(ステップ2)処分の宛名人への通知処分の宛名人への通知処分の宛名人への通知
(ステップ3)弁明の聴取弁明の聴取意見の聴取
(ステップ4)聴取書・報告書の作成
意見書の作成
調書・報告書の作成
意見書の作成
(ステップ5)不利益処分の決定不利益処分の決定不利益処分の決定

行政処分の手続詳細

ステップ1

 厚生労働大臣は、第14条の第1項又は第3項に規定する処分をするときは、あらかじめ、医道審議会の意見を聴く(第1項)。

ステップ2(意見の聴取の場合):

  • 厚生労働大臣は、第14条第1項の規定による免許の取消処分をしようとするときは、都道府県知事に対し、当該処分に係る者に対する意見の聴取を行うことを求め、それをもって厚生労働大臣による聴聞に代えることができる(第3項)。
  • 第3項の規定に基づく都道府県知事による意見の聴取には、行政手続法の規定を準用する(第4項)。
    • 都道府県知事は、意見の聴取を行うに当たり、聴取を行う期日までに相当な期間をおいて、取消処分の名宛人に対し、下記の事項を書面により通知する。
      • 1. 第1項の規定を根拠として当該処分をしようとする旨及びその内容
      • 2. 当該処分の原因となる事実
      • 3. 意見の聴取の日時及び場所
      • 4. 意見聴取に関する事務を所掌する組織の名称及び所在地
    • 取消処分の名宛人は、意見の聴取が終結する時までの間、取消処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる。
  • 厚生労働大臣は、都道府県知事から処分の原因となる事実を証明する書類その他意見の聴取を行う上で必要となる書類を求められた場合には、速やかにそれらを当該都道府県知事に送付する(第5項)。

ステップ2’(弁明の聴取の場合):

  • 厚生労働大臣は、第14条第1項の規定による業務停止の命令をしようとするときは、都道府県知事に対し、当該処分に係る者に対する弁明の聴取を行うことを求め、それをもって厚生労働大臣による弁明の機会の付与に代えることができる(第9項)。
  • 都道府県知事は、弁明の聴取を行うに当たり、弁明の聴取を行う日時までに相当な期間をおいて、当該処分に係る者に対し、次に掲げる事項を書面により通知する(第10項)。
    • 1. 第14条第1項の規定を根拠として当該処分をしようとする旨及びその内容
    • 2. 当該処分の原因となる事実
    • 3. 弁明の聴取の日時及び場所
  • 厚生労働大臣は、都道府県知事に代えて、医道審議会の委員に、当該処分に係る者に対する弁明の聴取を行わせることができる(第11項)。

ステップ3

  • 意見の聴取の通知を受けた者は、意見の聴取の際に、意見陳述・反証提出することができ、代理人にそれを行わせることもできる(行政手続法第20条)。
  • 弁明の聴取の通知を受けた者は、弁明の聴取の際に、意見陳述・反証提出することができ、代理人にそれを行わせることもできる(第12項)。

ステップ4(意見の聴取の場合):

  1.  意見の聴取の主宰者は、意見の聴取の期日ごとに聴取の経過を記載した調書を作成し、意見の聴取の終結後速やかに報告書を作成して調書を添えて都道府県知事に提出する(行政手続法第24条)。
  2.  都道府県知事は、意見聴取の調書と報告書を保存し、当該調書と報告書の写しを厚生労働大臣に提出する。都道府県知事は、当該処分の決定についての意見があるときは、当該写しに加えて当該意見を記載した意見書を提出する(第6項)。
  3.  厚生労働大臣は、意見の聴取の終結後に生じた事情に鑑み必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、提出済みの調書及び報告書の写し並びに意見書を返戻して主宰者に意見の聴取の再開を命ずるよう求めることができる(第7項)。

ステップ4’(弁明の聴取の場合):

  1.  都道府県知事又は医道審議会の委員は、弁明の聴取を行ったときは、聴取書を作り、これを保存するとともに、報告書を作成し、厚生労働大臣に提出する。都道府県知事又は医道審議会の委員は、当該処分の決定についての意見があるときは、当該意見を報告書に記載する(第13項)。
  2.  意見の聴取の場合と異なり、保健師助産師看護師法には厚生労働大臣が弁明の聴取の再開を命ずる規定はない。

ステップ5

  • 厚生労働大臣は、第6項の規定により提出された意見書並びに調書及び報告書の写しの内容を十分参酌して免許の取消処分の決定をする(第8項)。
  • 保健師助産師看護師法には明記されていないが、厚生労働大臣は、第13項の規定により提出された意見書並びに聴取書及び報告書の写しの内容を十分参酌して業務停止処分の決定をする。

 保健師・助産師・看護師に対して戒告処分を行う場合には、保健師助産師看護師法に定められているその手続は、医道審議会への諮問のみである。それ故、保健師・助産師・看護師の戒告処分の手続は、行政手続法の枠組みで行われると理解される。

准看護師の処分

行政処分の手続概要

戒告業務停止免許取消
決定権者都道府県知事都道府県知事都道府県知事
実務者准看護師試験委員
必要な手続(ステップ1)准看護師試験委員への諮問准看護師試験委員への諮問准看護師試験委員への諮問
(ステップ2)処分の宛名人への通知処分の宛名人への通知処分の宛名人への通知
(ステップ3)弁明の聴取弁明の聴取聴聞
(ステップ4)聴取書・報告書の作成
意見書の作成
調書・報告書の作成
意見書の作成
(ステップ5)不利益処分の決定不利益処分の決定不利益処分の決定

行政処分の手続詳細】

ステップ1

 都道府県知事は、第14条の第2項又は第3項に規定する処分をするときは、あらかじめ、准看護師試験委員の意見を聴く(第2項)。

ステップ2’(弁明の聴取の場合):

  • 都道府県知事は、第14条第2項の規定による業務停止の命令をしようとするときは、准看護師試験委員に対し、当該処分に係る者に対する弁明の聴取を行うことを求め、それをもって都道府県知事による弁明の機会の付与に代えることができる(第16項)。
  • 都道府県知事は、弁明の聴取を行うに当たり、弁明の聴取を行う日時までに相当な期間をおいて、当該処分に係る者に対し、次に掲げる事項を書面により通知する(第17項)。
    • 1. 第14条第2項の規定を根拠として当該処分をしようとする旨及びその内容
    • 2. 当該処分の原因となる事実
    • 3. 弁明の聴取の日時及び場所

ステップ3

  • 弁明の聴取の通知を受けた者は、弁明の聴取の際に、意見陳述・反証提出することができ、代理人にそれを行わせることもできる(第17項)。

ステップ4’(弁明の聴取の場合):

  • 准看護師試験委員は、弁明の聴取を行ったときは、聴取書を作り、これを保存するとともに、報告書を作成し、都道府県知事に提出する。准看護師試験委員は、当該処分の決定についての意見があるときは、当該意見を報告書に記載する(第17項)。

ステップ5

  • 保健師助産師看護師法には明記されていないが、都道府県知事は、第17項の規定により提出された意見書並びに聴取書及び報告書の写しの内容を十分参酌して業務の停止処分の決定をする。

 准看護師に対して戒告処分又は免許取消処分を行う場合には、保健師助産師看護師法に定められているその手続は、准看護師試験委員への諮問のみである。それ故、准看護師の戒告処分又は免許取消処分の手続は、行政手続法の枠組みで行われると理解される。

再教育研修(法第15条の2)

◇保健師等再教育研修の受講命令(第1項)

内容:厚生労働大臣は、下記の者に対し、厚生労働省令で定める「保健師等再教育研修」を受けるよう、命ずることができる。

  • 第14条第1項の規定により戒告(第1号)処分を受けた保健師・助産師・看護師
  • 第14条第1項の規定により業務停止(第2号)処分を受けた保健師・助産師・看護師
  • 第14条第3項の規定により保健師・助産師・看護師の再免許を受けようとする者

◇准看護師再教育研修の受講命令(第2項)

内容:都道府県知事は、下記の者に対し、厚生労働省令で定める「准看護師再教育研修」を受けるよう、命ずることができる。

  • 第14条第2項の規定により戒告(第1号)処分を受けた准看護師
  • 第14条第2項の規定により業務停止(第2号)処分を受けた准看護師
  • 第14条第3項の規定により准看護師の再免許を受けようとする者

◇保健師等再教育研修修了者の登録(第3項・第5項)

内容:厚生労働大臣は、保健師等再教育研修の修了者について、その申請により、再教育研修を修了した旨を保健師籍・助産師籍・看護師籍に登録し、再教育研修修了登録証を交付する。

◇准看護師再教育研修修了者の登録(第4項・第5項)

内容:都道府県知事は、准看護師再教育研修の修了者について、その申請により、再教育研修を修了した旨を准看護師籍に登録し、再教育研修修了登録証を交付する。

再教育研修(法第15条の2関係)

 法第15条の2に定める再教育研修の詳細は、保健師助産師看護師法施行規則で規定されている。

<保健師等再教育研修>

保健師等再教育研修(施行規則第8条)

内容:法第15条の2第1項の厚生労働省令で定める研修は、次の研修である。

  1.  倫理研修(保健師・助産師・看護師としての倫理の保持に関する研修)
  2.  技術研修(保健師・助産師・看護師としての知識及び技能に関する研修)

准看護師再教育研修(施行規則第9条)

内容:法第15条の2第2項の厚生労働省令で定める研修は、次の研修である。

  1.  准看護師倫理研修(准看護師としての倫理の保持に関する研修)
  2.  准看護師技術研修(准看護師としての知識及び技能に関する研修)

手数料(施行規則第10条)

内容:施行規則第8条の研修が厚生労働大臣によって行われる場合(集合研修及び課題研修の場合)のその受講料は、再教育研修を受けることになった事由によって異なる。


 保健師等再教育研修を受けようとする者は、厚生労働大臣主催の集合研修を受講するか、集合研修並びに課題研修又は厚生労働大臣から命ぜられた個別研修を受講する。

再教育研修の対象再教育研修の形態
戒告処分を受けた者集合研修
1年未満の業務停止処分を受けた者
(処分事由が技術に直接関係しない)
集合研修+課題研修
1年未満の業務停止処分を受けた者
(処分事由が技術に直接関係する)
集合研修+個別研修
1年以上2年未満の業務停止処分を受けた者
2年以上の業務停止処分を受けた者
再免許を受けようとする者
集合研修+個別研修
個別研修の時間は、業務停止期間が長くなるほど長くなる。

 施行規則第11条・第12条は、この「個別研修」について定めている。

再教育研修(個別研修)の流れ
  • ステップ1
    個別研修受講命令

  • ステップ2
    個別研修計画書の作成および提出
  • ステップ3
    個別研修の受講
  • ステップ4
    個別研修修了報告書の作成および提出
  • ステップ5
    再教育研修修了の旨の登録申請

<研修命令から研修修了まで>

個別研修計画書(施行規則第11条)

◇個別研修計画書の提出(第1項)

提出者:倫理研修又は技術研修(集合研修及び課題研修を除く「個別研修」)に係る法第15条の2第1項の命令(「再教育研修命令」)を受けた者

内容:受講者は、個別研修を開始しようとする日の30日前までに、下記の事項を記載した個別研修計画書を作成し、厚生労働大臣に提出する。

  1.  氏名、生年月日並びに保健師籍・助産師籍・看護師籍の登録番号及び登録年月日(法第14条第3項の規定により再免許を受けようとする者は、氏名及び生年月日)
  2.  個別研修の内容
  3.  個別研修の実施期間
  4.  助言指導者(個別研修に係る再教育研修命令を受けた者に対して助言、指導等を行う役割を有する、厚生労働大臣が指名した者)の氏名
  5.  その他必要な事項

◇助言指導者の協力(第2項)

内容:第1項の規定により個別研修計画書を作成しようとする場合には、助言指導者の協力を得なければならない。

◇助言指導者の署名(第3項)

内容:個別研修計画書が適切である旨の助言指導者の署名を受け、個別研修計画書を厚生労働大臣に提出する。

◇変更命令(第4項)

命令者:厚生労働大臣

内容:再教育研修を適正に実施するために必要と認める場合には、個別研修計画書の記載事項を変更するよう命じることができる。

個別研修修了報告書(施行規則第12条)

◇個別研修修了報告書の提出(第1項・第2項)

提出者:個別研修に係る再教育研修命令を受けた者

内容:受講者は、個別研修修了後、速やかに、下記の事項を記載した個別研修修了報告書を作成し、個別研修計画書の写しを添えて厚生労働大臣に提出する。

  • 1. 氏名、生年月日並びに保健師籍・助産師籍・看護師籍の登録番号及び登録年月日(法第14条第3項の規定により再免許を受けようとする者は、氏名及び生年月日)
  • 2. 個別研修の内容
  • 3. 個別研修を開始し、及び修了した年月日
  • 4. 助言指導者の氏名
  • 5. その他必要な事項

◇助言指導者の署名(第3項)

内容:再教育研修命令を受けた者が当該個別研修を修了したものと認める旨の助言指導者の署名を受け、個別研修修了報告書を厚生労働大臣に提出する。

◇個別研修修了証の交付(第4項)

交付者:厚生労働大臣

内容:個別研修修了報告書の提出を受けて、再教育研修命令を受けた者が個別研修を修了したと認めるときは、個別研修修了証を交付する。

<研修修了後>

再教育研修を修了した旨の登録の申請(施行規則第13条)

◇登録の申請(第1項)

申請者:法第15条の2第3項の規定による登録を受けようとする者

内容:再教育研修を修了した旨の保健師籍・助産師籍・看護師籍への登録を受けようとする者は、申請書に免許証の写しを添え、これを厚生労働大臣に提出する。

◇(第2項・第3項)

省略

再教育研修修了登録証の書換交付申請(施行規則第14条)

◇交付の申請(第1項)

申請者:再教育研修を修了した旨の登録を受けた保健師・助産師・看護師(「再教育研修修了登録保健師等」)

内容:再教育研修修了登録証の記載事項に変更が生じたときは、再教育研修修了登録証の書換交付を申請することができる(第1項)。

◇(第2項・第3項)

省略

再教育研修修了登録証の再交付申請(施行規則第15条)

◇再交付の申請(第1項)

申請者:再教育研修修了登録保健師等

内容:再教育研修修了登録証を失くしたり損傷したりしたときは、再教育研修修了登録証の再交付を申請することができる。

◇申請手続(第2項)

内容:第1項の申請するには、申請書に免許証の写しを添え、厚生労働大臣に提出する。

◇損傷の場合の再交付申請(第4項)

内容:損傷した再教育研修修了登録証の代わりを申請をする場合には、申請書にその損傷した再教育研修修了登録証及び免許証の写しを添える。

◇古い免許証の返納(第5項)

内容:失した再教育研修修了登録証が見つかったときは、5日以内に、古い再教育研修修了登録証を厚生労働大臣に返納する。


 准看護師再教育研修の詳細は、保健師助産師看護師法に定められておらず、各都道府県において定められている。

第三部:業務

共通部分

非有資格者による業務の禁止(法第29条~第32条)

内容:

  • 保健師ではない者は、第2条に規定される保健師業務をしてはならない。
  • 医師法の規定に基づいて行う場合を除き、助産師ではない者は、第3条に規定される助産師業務をしてはならない。
  • 医師法・歯科医師法の規定に基づいて行う場合を除き、看護師ではない者は、第5条に規定される看護師業務をしてはならない。ただし、保健師・助産師は看護師業務を行うことができる。
  • 医師法・歯科医師法の規定に基づいて行う場合を除き、准看護師ではない者は、第6条に規定される准看護師業務をしてはならない。

届出義務(法第33条)

義務者:業務に従事する保健師・助産師・看護師・准看護師

内容:厚生労働省令で定める2年ごとの年の12月31日現在における下記に掲げる自身に関する情報を届け出なければならない。

  • 氏名
  • 住所
  • その他厚生労働省令で定める事項

届出先:就業地の都道府県知事

届出期日:翌年の1月15日

届出(施行規則第33条)

◇基準年(第1項)

内容:法第33条の「厚生労働省令で定める2年ごとの年」とは、昭和57年(1982年)を初年とする2年ごとの年である。

◇届出の内容(第2項)

内容:法第33条の規定による届出は、所定の届書を提出することによって行う。

◇重複時の対応(第3項)

内容:保健師業務、助産師業務、看護師業務又は准看護師業務のうち、2以上の業務に従事する者は、主として従事する業務について法第33条の届出を行う。

禁止行為(法第37条)

内容:主治の医師・歯科医師の指示があった場合を除き、医師・歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。


「衛生上危害を生ずるおそれのある行為」の例:

  • 診療機械の使用
  • 医薬品の授与
  • 医薬品についての指示

「衛生上危害を生ずるおそれのある行為」に当たらない行為の例:

  • 臨時応急の手当
  • 助産師によるさい帯の切断
  • 助産師による浣腸
  • その他助産師の業務に当然に付随する行為

守秘義務(法第42条の2)

内容:保健師、看護師又は准看護師は、正当な理由がある場合を除き、その業務上知り得た人の秘密を他に漏らしてはならず、保健師、看護師又は准看護師でなくなった後においても同様である。

名称独占(法第42条の3)

  • 保健師でない者は、保健師又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない(第1項)。
  • 助産師でない者は、助産師又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない(第2項)。
  • 看護師でない者は、看護師又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない(第3項)。
  • 准看護師でない者は、准看護師又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない(第4項)。

保健師関係

医師・歯科医師の指示の遵守義務(法第35条)

義務の内容:保健師は、傷病者の療養上の指導を行うに当たり、その傷病者に主治の医師又は歯科医師がいるときは、その指示を受ける。

保健所長の指示の遵守義務(法第36条)

義務の内容:保健師は、傷病者の療養上の指導を行うに当たり、その業務に関して就業地を管轄する保健所の長の指示を受けたときは、これに従うが、主治の医師又は歯科医師の指示を受けることもできる。

看護師関係

特定行為看護師(法第37条の2)

研修を受けた看護師は、高度かつ専門的な知識及び技能が特に必要な診療の補助を、医師が作成した手順書に沿って行うことができる。

 このような診療の補助を特定行為と呼び、2026年の時点では38行為が特定行為に指定されいる。

 特定行為の種類は、厚生労働省の公式ページから確認することができる。

特定行為とは|厚生労働省

◇研修義務(第1項)

内容:特定行為を手順書により行う看護師は、指定研修機関において、当該特定行為の特定行為区分に係る特定行為研修を受けなければならない。 

◇(第2項・第3項)

省略

法第37条の2の指定研修機関の指定(法第37条の3・第37条の4)

省略

助産師関係

処置の禁止(法第38条)

内容:妊婦・産婦・褥婦・胎児・新生児に異常があると認めたときは、臨時応急の手当の場合を除き、医師の診療を求めさせなければならず、助産師自らが処置をしてはならない。

応召義務・証明書交付義務(法第39条)

◇応召義務(第1項)

義務者:業務に従事する助産師

内容:助産又は妊婦・褥婦・新生児の保健指導の求めがあった場合は、これを拒んではならない。

例外:正当な事由がある場合

◇証明書交付義務(第2項)

義務者:分娩の介助又は死胎の検案をした助産師

内容:出生証明書、死産証書又は死胎検案書の交付の求めがあった場合は、これを拒んではならない。

例外:正当な事由がある場合

証明書交付の制限(法第40条)

制限の場面:助産師が自ら分娩の介助又は死胎の検案をしていない場合

内容:制限に該当する助産師は、出生証明書、死産証書又は死胎検案書を交付してはならない。

異状死体等届出義務(法第41条)

内容:助産師は、妊娠4月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。

助産録記載・保存義務(法第42条)

◇助産録への記載(第1項)

内容:助産師は、分娩の介助をしたときは、遅滞なく助産に関する事項を助産録に記載しなければならない。

◇助産録の保存(第2項)

内容:助産師が記載した助産録の保存期間は、5年である。

◇助産録の記載事項(第3項)

内容:第1項の規定による助産録の記載事項は、厚生労働省令で定める。

第四部:罰則

違反内容条項罰則
(違反者)
第29条から第32条までの規定に違反した第43条第1項第1号2年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金*
虚偽又は不正の事実に基づいて免許を受けた第43条第1項第2号2年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金*
助産師・看護師・准看護師又はこれに類似した名称を用いて第29条から第32条までの規定に違反した第43条第2項2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金*
第14条第1項・第2項の規定により業務の停止を命ぜられたが、当該停止期間中に業務を行った第44条の3第1号6か月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金*
第35条第36条第37条、又は第38条の規定に違反した第44条の3第2号6か月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金*
第42条の2の規定に違反して、業務上知り得た人の秘密を漏らした第44条の46か月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金
(親告罪に当たる)
第15条の2第1項又は第2項の規定による命令に違反して保健師等再教育研修又は准看護師再教育研修を受けなかった第45条第1号50万円以下の罰金
第33条又は第40条第41条第42条の規定に違反した第45条第2号50万円以下の罰金
第42条の3の規定に違反した第45条の2第1号30万円以下の罰金
* 拘禁刑と罰金が併科される場合あり

終わりに

 保健師助産師看護師法は医療現場だけでなく、行政手続や資格管理にも深く関わる法律です。長い条文でしたが、読み進めるとそれぞれの専門職の責任と制度の仕組みが見えてきます。引き続き、気になった法律を少しずつ取り上げていきます。

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