2026年4月1日以降、シンガポール・チャンギ国際空港における輸入検疫が変わります

獣医師法・獣医療法の要点まとめ|獣医師向け解説

ペット
この記事は約19分で読めます。

 動物病院を開設するには、獣医師法のポイント獣医療法に基づく開設手続きを正しく理解しておくことが重要です。 本記事では、開業準備に役立つ、獣医師が押さえておきたい法令の基本を分かりやすくまとめました。 「獣医師法の義務」や「動物病院の開設手続き」や「獣医療法の設備基準」を知りたい方に役立つガイドです。

獣医師の資格・業務・義務を定める「獣医師法」

第一部:獣医師法の基本理念

獣医師の役割(法第一条)獣医事を職務として担当することにより動物に関する保健衛生の向上・畜産業の発達を図り、かつ、公衆衛生の向上に貢献すること。

 獣医事には、飼育動物に関する診療・保健衛生の指導が含まれる。

 飼育動物とは、人が飼育する動物のことをいう。


名称独占(法第二条)

 獣医師でない者は、獣医師・それに紛らわしい名称を用いてはならない。

第二部:免許関係

資格要件

免許申請資格者(法第三条)獣医師国家試験合格者

免許申請非適格者(法第四条)未成年者

免許が与えられないことがある者(法第五条)

  • 1. 心身の障害により獣医師の業務を適正に行うことができない者として農林水産省令で定める者
  • 2. 麻薬、大麻又はあへんの中毒者
  • 3. 罰金以上の刑に処せられた者
  • 4. 獣医師道に対する重大な背反行為・獣医事に関する不正の行為があった者又は著しく徳性を欠くことが明らかな者
  • 5. 第八条第二項第4号に該当して免許を取り消された者

施行規則第一条の二(法第五条関係)
 第1号の「農林水産省令で定める者」は、「視覚、聴覚、音声機能若しくは言語機能の障害又は精神機能の障害により獣医師の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断、意思疎通を適切に行うことができない者」又は「上肢の機能障害により獣医師の業務を適正に行うに当たって必要な技能を十分に発揮することができない者」である。

施行規則第一条の三(法第五条関係)
 農林水産大臣は、前条に規定する者に免許を与えるかどうかを決定するときは、その者が現に利用している障害を補う手段又は現に受けている治療等により障害が補われ、又は障害の程度が軽減している状況を考慮する。

獣医師名簿への登録と免許証交付の手続

獣医師名簿とは(法第六条)農林水産省に備えられており、獣医師の免許に関する事項が登録されている名簿

免許証の交付申請の流れ(法第七条)

  1.  獣医師国家試験の合格者は、獣医師名簿への登録を申請する。
  2.  申請者の免許に関する事項が名簿に登録され、農林水産大臣が免許を与えらる。
  3.  獣医師免許証が申請者に交付される。

獣医師名簿への登録・獣医師免許証に関する事務規定

医師名簿の記載事項(施行規則第二条)

  1.  登録番号及び登録年月日
  2.  本籍地都道府県名(日本国籍を有しない者についてはその国籍)、氏名、生年月日及び性別
  3.  獣医師国家試験に合格した年月
  4.  法第八条第一項又は第二項の規定による処分をした場合には、その旨並びにその事由、年月日及び業務の停止期間
  5.  免許証を書換交付し、又は再交付した場合には、その旨並びにその事由及び年月日

登録事項の変更申請(施行規則第三条)

変更申請の事由:施行規則第二条第2号の登録事項の変更

変更申請の期間:上記の事項に変更が生じてから30日以内

必要書類:

  • 当該変更があったことを証明する書類
  • 申請書
  • 免許証

免許の取消申請(施行規則第四条)

 獣医師は、法第八条第一項の規定により免許の取消を受けようとするときは、免許証を添えて農林水産大臣に免許の取消を申請する。

精神障害の届出(施行規則第四条の二)

届出の事由:獣医師が精神の機能障害を有する状態となり、獣医師業務の継続が著しく困難となった

届出先:農林水産大臣

届出者:獣医師本人又は法定代理人若しくは同居の親族

必要書類:医師の診断書

死亡等の届出(施行規則第五条)

届出の事由:獣医師が死亡し、又は失踪宣告を受けた

届出先:農林水産大臣

届出者:死亡又は失踪の届出義務者

届出期間:死亡日又は失踪宣告日から30日以内

「失踪宣告」とは
 ある人が行方不明となり、その行方不明者の生死が7年間明らかではない場合、又は戦争・海難事故・地震等が原因で行方不明となり、その行方不明者の生死が1年間明らかではない場合に、その行方不明者の利害関係人の申し立てを受け、家庭裁判所はその行方不明者について失踪宣告することができます。

獣医師名簿の抹消(施行規則第六条)

 獣医師の死亡等があった、又は法第八条第一項又は第二項の規定により免許の取消をしたときは、農林水産大臣は、その事由及び年月日を記載してその者の登録事項を抹消する。

免許証の再交付(施行規則第八条)

 獣医師は、免許証を失くしたり棄損したりしたときは、免許証の再交付申請をしなければならない。免許書を棄損した場合には、再交付申請書に免許書を添付しなければならない(第一項)。

 失した免許証が見つかったときは、10日以内に、古い免許証を農林水産大臣に返納します(第三項)。

免許証の返納等(施行規則第十条)

農林水産大臣への返納:免許取消処分の通知から10日以内に免許証を返納

農林水産大臣への提出:業務停止処分の通知から10日以内に免許証を提出

農林水産大臣からの返還:業務停止期間満了後に免許証を獣医師に返還


獣医師の処分(免許取消及び業務停止)(法第八条)

 農林水産大臣は、獣医師本人から申請があったときにその免許を取り消す(第一項)。

 また、農林水産大臣は、獣医事審議会の意見を聴いて、獣医師に対し、免許取消又は業務停止処分をすることができる(第二項)。

農林水産大臣による獣医師処分の事由(第二項)

  • 獣医師が次の各号に該当するとき
    • 1. 第十九条第一項の規定に違反して診療を拒んだとき。
    • 2. 第二十二条の規定による届出をしなかつたとき。
    • 3. 前二号の場合のほか、第五条第一項第1号から第4号までの一に該当するとき。
    • 4. 獣医師としての品位を損ずるような行為をしたとき。

行政による処分の流れ

 ステップ1(獣医事審議会への要請)

 第二項に規定する処分をするに当たり、農林水産大臣は獣医事審議会に意見を求める。

 ステップ2(獣医師への通知)

 獣医事審議会は、意見の聴取のため、次の事項を記載した通知を獣医師に送付する。

 通知の記載事項:

  • 処分の原因となる事実
  • 予定される処分の内容
  • 意見の聴取の期日及び場所

 通知の期限:意見聴取の2週間前

 獣医師又はその代理人は、当該処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる。

 閲覧期間:通知を受けてから意見の聴取が終結する時までの間

 ステップ3(獣医師による弁明)

 獣医師又はその代理人は、意見の聴取の期日に出頭して弁明し、及び証拠を提出し、又は意見の聴取の期日への出頭に代えて弁明書及び証拠を提出することができる。

 ステップ3(不出頭による終結)

 獣医事審議会は、次のいずれかの場合に意見の聴取を終結することができる。

  1.  獣医師が正当な理由なく意見の聴取の期日に出頭もしなければ、弁明書や証拠も提出しない場合
  2.  参加人の全部若しくは一部が意見の聴取の期日に出頭しない場合
  3.  獣医師が意見の聴取の期日に出頭せず、かつ、弁明書や証拠を提出しない場合であって、期限内の弁明書及び証拠の提出を求められ、その期限が到来したとき

参加人とは
 獣医師の処分について利害関係を有すると認められる第三者であって、獣医事審議会から意見の聴取に関する手続に参加することを求められた/認められたもの

 ステップ4(意見の聴取調書・報告書の作成)

  • 獣医事審議会は、意見の聴取の審議の経過を記載した調書を作成し、獣医師や参加人の弁明の要旨を明らかにする。
  • 意見の聴取の審議が行われなかった場合、意見の聴取の終結後速やかに調書を作成する。
  • 獣医事審議会は、意見の聴取の終結後速やかに、獣医事審議会の意見を記載した報告書を作成し、調書とともに農林水産大臣に提出する。
  • 獣医師や参加人は、調書及び報告書の閲覧を求めることができる。

 農林水産大臣は、調書及び報告書の提出を受け、獣医師の処分を決定する。

第三部:国家試験関係

 獣医師国家試験に関する法第十条~第十六条の規定については、この記事では触れません。

臨床研修(法第十六条の二)

 診療を業務とする獣医師は、免許を受けた後も、以下のいずれかの診療施設において、臨床研修を行うように努力します(第一項)。

  • 大学の獣医学に関する学部学科の附属診療施設
  • 農林水産大臣の指定する診療施設

臨床研修の実施期間:6か月以上

臨床研修者の報告(法第十六条の三)

 獣医師が法第十六条の二の規定に基づいて臨床研修を行うと、臨床研修を行った旨が診療施設の長によって農林水産大臣に報告される。

第四部:業務関係

業務の制限(法第十七条)

 獣医師のみが、以下の飼育動物の診療を業務とすることができる。

第十七条に規定する飼育動物の種類:

哺乳類鳥類
・牛
・馬
・めん羊
・山羊
・豚
・犬
・猫
・鶏
・うずら
・オウム科全種
・カエデチョウ科全種
・アトリ科全種

診断書の交付(法第十八条)

 獣医師は、自ら診察せずに/出産に立ち会わずに/自ら検案せずに次の業務を行ってはならない。

  • 診断書の交付
  • 劇毒薬、生物学的製剤その他農林水産省令で定める医薬品の投与・処方
  • 再生医療等製品の使用・処方
  • 出生証明書・死産証明書の交付
  • 検案書の交付 *

(* 診療中死亡した場合に交付する死亡診断書を除く。)

診療義務・診断書等の交付義務(法第十九条)

 診療に従事する獣医師師は、次の義務を負う。

  • 診療の義務(第一項)
  • 診断書・出生証明書・死産証明書・検案書の交付義務(第二項)

保健衛生の指導の義務(法第二十条)

義務者:飼育動物の診療をした獣医師

義務の内容:飼育に係る衛生管理の方法など、飼育動物に関する保健衛生の向上に必要な事項の指導

指導対象者:当該動物の飼育者

診療簿・検案簿(法第二十一条)

記入義務者・記入内容(第一項)

  • 義務者:診察又は検案をした獣医師
  • 内容:(診療簿)診療に関する事項、(検案簿)検案に関する事項

診療簿・検案簿の保存期間(第二項)

  • 8年間:牛・水牛・しか・めん羊・山羊の診療簿・検案簿
  • 3年間:上記以外の動物の診療簿・検案簿

診療簿・検案簿の検査:農林水産大臣・都道府県知事は、その職員に、獣医師について、診療簿及び検案簿を検査させることができ、都道府県知事は検査の結果を農林水産大臣に報告しなければならない。

届出義務(法第二十二条)

 獣医師は、2年ごとに、自身に関する情報を農林水産大臣に届け出なければならない。届出を書面により行うときは、住所地の都道府県知事を経由して届出を行うが、電子情報処理組織を使用して届出を行うときは、都道府県知事を経由する必要はない。

届出事項(昭和57年/1982年から2年ごとの年の12月31日現在における情報):

  • 氏名
  • 住所
  • その他農林水産省令で定める事項(第六号様式に記載の事項:施行規則第十三条第二項)

届出期日:翌年の1月31日


 獣医事審議会に関する法第二十四条~第二十六条の規定については、この記事では触れません。

第五部:罰則

違反内容条項罰則
(違反者)
第十七条の規定に違反した第二十七条第1号2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金*
虚偽又は不正の事実に基づいて獣医師免許を受けた第二十七条第2号2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金*
第八条第二項の規定による業務停止命令に違反した第二十八条1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金*
第二条の規定に違反して獣医師又はこれに紛らわしい名称を用いた第二十九条第1号20万円以下の罰金
第十八条の規定に違反して診断書・出生証明書・死産証明書・検案書を交付し、又は医薬品の投与・処方をし、又は再生医療等製品を使用・処方した第二十九条第2号20万円以下の罰金
第十九条第二項の規定に違反して診断書、出生証明書、死産証明書又は検案書の交付を拒んだ第二十九条第3号20万円以下の罰金
第二十一条第一項の規定に違反して診療簿若しくは検案簿に記載せず、又は診療簿若しくは検案簿に虚偽の記載をした第二十九条第4号20万円以下の罰金
第二十一条第二項の規定に違反して診療簿又は検案簿を保存しなかった第二十九条第5号20万円以下の罰金
第二十一条第三項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した第二十九条第6号20万円以下の罰金
* 拘禁刑と罰金が併科される場合あり

動物病院の開設・設備・運営ルールを定める「獣医療法」

第一部:獣医療法の基本理念

法の目的(法第一条)

 獣医療法は、適切な獣医療の確保のため、次の事項を定める。

  • 飼育動物の診療施設の開設と管理に関して必要な事項
  • 獣医療提供体制の整備のために必要な事項

第二部:診療施設の開設と管理

診療施設開設の届出(法第三条)

開設の届出

届出主体:診療施設の開設者

届出先:診療施設の所在地を管轄する都道府県知事

届出期限:診療施設の開設日から10日以内

届出事項:

  • 開設者の氏名及び住所、並びに開設者が獣医師の場合にはその旨
  • 診療施設の名称
  • 開設の場所及び年月日
  • 診療施設の構造設備の概要
  • 第五条第二項に規定する管理者の氏名及び住所(開設者獣医師が管理者であるときはその旨)
  • 診療の業務を行う獣医師の氏名
  • 開設者が法人である場合では、定款
  • その他の獣医療法施行規則第一条第一項に定める事項

休止・廃止・届出事項変更の届出(施行規則第一条第二項)

届出事項:

  • 休止の場合:診療施設の休止期間及び休止の理由
  • 廃止の場合:診療施設の廃止の期日及び廃止の理由
  • 変更の場合:変更に係る届出事項

診療設備の施設構造基準(法第四条・施行規則第二条)

  1.  飼育動物の逸走防止設備の設置
  2.  伝染性疾病の疑似飼育動物を収容する設備には、他の飼育動物への感染防止に必要な設備の設置
  3.  消毒設備の設置
  4.  調剤施設の要件
    • イ 採光、照明及び換気を十分にし、かつ、清潔を保つこと。
    • ロ 冷暗貯蔵のための設備を設けること。
    • ハ 調剤に必要な器具を備えること。
  5.  手術施設には、内壁及び床が耐水性の材料で覆われるなど、清潔を保てる構造
  6.  放射線に関する構造設備の基準(施行規則第六条から第六条の十一までに規定)

東京都では、診療施設の開設時に以下の書類を提出します。

  • 診療施設開設届(第三条関係)
  • 診療施設の平面図(第四条関係)
  • 放射線診療装置がある場合は、当該放射線診療装置の備付届(第四条第六号関係)
  • 獣医師免許証の写し(獣医師全員分)(第三条関係)
  • 定款(法人の場合)(第三条関係)

 提出書類ではありませんが、麻薬の取扱いを予定している場合は、麻薬施用者免許及び麻薬管理者免許(麻薬施用者が2名以上いる場合のみ)の取得が必要になります。

放射線に関する構造設備の基準(施行規則第六条~第六条の十一)

 ここでは、放射線に関する構造設備の基準を定める施行規則の規定を簡単に紹介します。

条番号基準が定められている構造設備
第六条のエックス線診療室
第六条の二診療用高エネルギー放射線発生装置使用室
第六条の三診療用放射線照射装置使用室
第六条の四診療用放射線照射器具使用室
第六条の五放射性同位元素装備診療機器使用室
第六条の六診療用放射性同位元素使用室
第六条の七陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室
第六条の八診療用放射線照射装置、診療用放射線照射器具、診療用放射性同位元素又は陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を貯蔵する施設
第六条の九診療用放射線照射装置、診療用放射線照射器具、診療用放射性同位元素又は陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を運搬する容器
第六条の十診療用放射性同位元素、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素又は放射性同位元素によって汚染された獣医療用放射性汚染物を廃棄する施設
第六条の十一診療用放射線照射装置、診療用放射線照射器具、診療用放射性同位元素又は陽電子断層撮影診療用放射性同位元素により治療を受けている飼育動物を収容する施設

診療施設の管理(法第五条)

管理者(第一項)

  • 開設者が獣医師である場合、その開設者は診療施設を管理できる。
  • 開設者が獣医師ではない場合、獣医師に診療施設を管理させなければならない。

管理者の遵守事項(第二項)

 診療施設の管理者が診療施設の構造設備、医薬品その他の物品の管理及び飼育動物の収容につき遵守すべき事項は、施行規則第三条第一項に定める。

施行規則第三条第一項

  1.  飼育動物の収容設備には、収容可能な頭数を超えて飼育動物を収容しない。
  2.  収容設備でない場所に飼育動物を収容しない。
  3.  飼育動物の逸走防止に必要な措置を講ずる。
  4.  収容設備内における他の飼育動物への感染防止に必要な措置を講ずる。
  5.  覚醒剤取締法、麻薬及び向精神薬取締法及び医薬品医療機器等法の規定に違反しないよう必要な注意をする。
  6.  常に清潔を保つ。
  7.  採光、照明及び換気を適切に行う。
  8.  放射線に関し、施行規則第七条から第二十条までの規定を遵守する。

管理者の役割:

  • 施行規則第三条第一項に定める事項を遵守するための、診療施設に勤務する獣医師その他の従業者の監督と注意
  • 診療施設の開設者に対する、診療施設の構造設備改善その他必要な措置の要求

診療施設の使用制限命令等(法第六条)

命令者:都道府県知事

命令の発出原因:

  • 診療施設の構造設備が基準に適合していないと認められるとき
  • 診療施設の構造設備、医薬品その他の物品の管理及び飼育動物の収容につき遵守すべき事項が守られていないと認められるとき

命令の内容:

  • 期間を定めた診療施設の全部又は一部の使用の制限又は禁止
  • 期限を定めた修繕、改築、その他必要な措置の実施

往診診療者等(法第七条)

往診診療者とは
 「往診診療者」は、往診のみによって飼育動物の診療の業務を自ら行う獣医師を意味する。往診診療者及び獣医師に往診のみによって飼育動物の診療業務を行わせる者を「往診診療者等」という。

往診診療者等の診療施設開設(第一項)往診診療者等は、その住所を診療施設とみなして、第三条の規定に則って開設の届出を行うことができる。

第五条の準用(第二項)往診診療者等が、農林水産省令で定める診療用機器その他の物品(以下「診療用機器等」)を所有し又は借り受けてこれを使用するとき、第五条の規定が往診診療者等に準用される。具体的には、

  • 開設者は、自ら獣医師であってその診療用機器等を管理する場合のほか、獣医師にその診療用機器等を管理させなければならない。
  • 診療用機器等の管理者が、その診療用機器等につき遵守すべき事項については、施行規則第五条に定める。

農林水産省令で定める診療用機器等(施行規則第四条)

  1.  覚醒剤取締法第二条第五項に規定する覚醒剤原料
  2.  麻薬及び向精神薬取締法第二条第一項第1号に規定する麻薬及び同項第6号に規定する向精神薬
  3.  エックス線装置

診療用機器等につき遵守すべき事項(施行規則第五条)

  • 覚醒剤取締法、麻薬及び向精神薬取締法及び医薬品医療機器等法の規定に違反しないよう必要な注意をする。
  • 放射線に関し、施行規則第七条から第二十条までの規定を遵守する。

都道府県知事の措置命令(第三項)診療用機器等につき遵守すべき事項が守られていないと認められるとき、期限を定めて、必要な措置の命令がある。

放射線に関する遵守事項(施行規則第七条~第二十条)

 ここでは、放射線に関する遵守事項を定める施行規則の規定を簡単に紹介します。

 第七条は、放射線管理責任者の選任及びその者による診療用放射性同位元素又は陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を管理を定める。

 第七条の二は、診療用放射線関連装置を備える診療施設における放射線障害予防規程の制定及び同規定による管理を定める。

 第八条は、エックス線装置に関する措置を定める。

 第八条の二は、診療用高エネルギー放射線発生装置に関する措置を定める。

 第八条の三は、診療用放射線照射装置に関する措置を定める。

 第九条は、放射線障害の防止に必要な注意事項の掲示を定める。

 第十条は、放射線関連業務を実施する場所等の制限を定める。

 第十条の二は、獣医療用放射性汚染物の廃棄について定める。

 第十条の三は、廃棄物詰替施設の位置、構造及び設備に係る技術上の基準を定める。

 第十条の四は、診療用放射性同位元素又は陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を投与した飼育動物の収用制限を定める。

 第十一条は、管理区域に関連する規定を定める。

 第十二条は、診療施設の敷地の境界等における放射線防護について定める。

 第十三条は、放射線診療従事者等の被曝防止について定める。

 第十四条は、線量の測定について定める。

 第十五条は、放射線診療従事者等に係る線量の記録について定める。

 第十六条は、放射線診療従事者等の遵守事項を定める。

 第十六条の二は、放射線診療従事者等の教育訓練及び研修について定める。

 第十六条の三は、獣医療用放射性汚染物の取扱者の遵守事項を定める。

 第十七条は、エックス線装置等の定期検査等について定める。

 第十八条は、放射線障害が発生するおそれのある場所の測定について定める。

 第十八条の二は、排液中・排水中・排気中・空気中の放射性同位元素の濃度の限度を定める。

 第十九条は、放射線関連装置の使用時間等を記載する帳簿への記帳について定める。

 第十九条の二は、放射性同位元素の使用廃止後の措置について定める。

 第二十条は、事故の場合の措置について定める。


報告の徴収及び立入検査(法第八条)

権限者:農林水産大臣・都道府県知事

内容:

  • 開設者若しくは管理者に対し、必要な報告を命じ、又はその職員に、診療施設に立ち入り、その構造設備、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる(第一項)。
  • 往診診療者等又は管理者に対し、必要な報告を命じ、又は検査のため診療用機器等、帳簿、書類その他の物件を提出させることができる(第二項)。
  • 農林水産大臣又は都道府県知事の立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものではない(第四項)。

第三部:基本方針と医療計画の策定

獣医療提供体制整備のための基本方針(法第十条)

基本方針策定者:農林水産大臣

内容:獣医療提供体制の整備に関わる事項

都道府県計画(法第十一条)

都道府県計画策定者:各都道府県

内容:基本方針に基づく、都道府県における獣医療提供体制の整備に関わる事項

  • 必須事項
    •  整備を行う診療施設の内容その他の診療施設の整備に関する目標
    •  獣医療を提供する体制の整備が必要な地域
  • 努力事項
    •  獣医師の確保に関する目標
    •  相互の機能及び業務の連携を行う施設の内容及びその方針
    •  診療上必要な技術の研修の実施その他の獣医療に関する技術の向上に関する事項
    •  その他獣医療を提供する体制の整備に関し必要な事項

関係団体との協力(法第十二条)

目的:都道府県計画達成のため

内容:都道府県知事は、必要があるときは、獣医療の提供、研修の実施その他の必要な協力を求める。

協力要請の相手:

  • 獣医師が組織する団体
  • 農業者が組織する団体
  • その他の団体

診療施設の設備などの提供(法第十三条)

目的:都道府県計画達成への協力

提供者:診療施設の開設者・管理者

内容:業務に差し支えない範囲で、診療施設の建物の全部又は一部・設備・器械・器具を提供するように努める。

提供の目的:当該診療施設に勤務しない獣医師の診療、研究又は研修への利用に供するため

診療施設整備計画の認定(法第十四条)

目的:都道府県計画達成のため

認定者:都道府県知事

認定を受ける者:都道府県計画に基づいて診療施設の整備を図ろうとする者

内容:診療施設整備計画を作成し、これを提出・申請して、当該診療施設整備計画が適当である旨の認定を受ける。

診療施設整備計画の記載事項:

  1.  診療施設の整備の目標
  2.  診療施設の整備の内容及び実施時期
  3.  診療施設の整備を実施するのに必要な資金の額及びその調達方法

認定の制限:申請に係る診療施設整備計画が、都道府県計画に適合し、かつ、畜産業の振興に資するための診療施設の整備に係るものであるとき、当該診療施設整備計画は適当である旨の認定を受ける。

 一年間の診療の業務量に占める畜産業に係る飼育動物の診療の業務量の割合が50パーセント以上となることが見込まれるとき、当該計画は畜産業の振興に資すると認められる。

日本政策金融公庫からの資金の貸付け(法第十五条)

貸付先:第十四条に規定する認定を受けた者

内容:日本政策金融公庫から診療施設の整備のために必要な長期低利の資金の貸付を実施

国及び都道府県の援助(法第十六条)

目的:都道府県計画達成のため

内容:国及び都道府県は、開設者及び管理者その他の関係者に対する助言、指導その他の援助の実施に努める。

第四部:業務関係

獣医師及び診療施設の広告の制限(法第十七条)

内容:獣医師(第2号を除き、獣医師以外の往診診療者等を含む)又は診療施設の業務に関し、その技能、療法又は経歴に関する事項を広告してはならない。ただし、次の事項は、広告できる(第一項)。

  1.  獣医師又は診療施設の専門科名
  2.  獣医師の学位又は称号

特例:獣医師又は診療施設の業務に関する技能、療法又は経歴に関する事項のうち、施行規則第二十四条で定めるものは、広告することができる(第二項)。

第五部:罰則

違反内容条項罰則
(違反者)
罰則
(法人*)
第六条又は第七条第三項の規定による業務停止命令に違反した第二十条第1号50万円以下の罰金50万円以下の罰金
第十七条第一項の規定に違反した第二十条第2号50万円以下の罰金50万円以下の罰金
第三条の規定に違反して届出をせず、又は虚偽の届出をした第二十一条第1号20万円以下の罰金20万円以下の罰金
第五条第一項第七条第二項において準用する場合を含む)の規定に違反した第二十一条第2号20万円以下の罰金20万円以下の罰金
第八条第一項・第二項の規定による報告をせず、虚偽の報告をし、検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は物件の提出をしなかった第二十一条第3号20万円以下の罰金20万円以下の罰金
* 違反者が法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者である場合の当該法人又は人への罰則

終わりに

 動物病院の開設や日々の診療を安心して進めるためには、獣医師法と獣医療法の理解が欠かせません。本ガイドが、開業を検討されている獣医師の皆さまにとって、法令の全体像をつかむ一助となれば幸いです。

 実務では、法律の条文だけでは分かりにくい点や、手続きのタイミング・必要書類など、細かな確認が必要になる場面も少なくありません。

 なお、動物病院に入院施設を備える場合には、第一種動物取扱業の登録も必要になります。詳しくは、本ブログの別記事「ペットビジネスを始める前に読む話」をご参照ください。

 また、動物病院でオリジナルのペットフードを販売されている場合は、ペットフード安全法に関する別記事「ペットフードの会社を始めるには」をご参照ください。

タイトルとURLをコピーしました