前2回の記事では、病院・診療所・助産所・オンライン診療受診施設の開設や設置に関わる医療法の規定について解説しました。診療所は個人でも開設できる制度になっていますが、実際には医療法人が運営する診療所が多数を占めています。
医療法第6章を読み解くと、医療法人は地域医療を安定的に継続するための仕組みとして位置づけられており、診療と経営を分離することで経営基盤を強化する役割を担っていることが理解できます。
本記事では、医療法第6章に定められた医療法人の通則、設立、そして機関設計について解説します。
医療法人は社団又は財団の形態をとるため、医療法では「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(一般法人法)」の複数の規定が準用されています。どの条文がどの法律に基づくものかを直感的に理解できるよう、本記事では以下のように見出し記号の色分けを行っています。
■ 医療法に固有の規定
□ 医療法が準用する一般法人法の規定
第一部:通則
■医療法人の意味(法第39条)
法人設立可能な団体:病院、常勤の医師・歯科医師が居る診療所、介護老人保健施設・介護医療院を開設しようとする社団又は財団は、医療法の規定により法人を設立することができる。
法人格:医療法人
「社団」と「財団」の違い
「社団」とは特定の目的のために人が集まってできた団体をいい、「財団」とは特定の目的のために集められた財産を基にしてできた団体をいいます。
■名称使用制限(法第40条)
内容:医療法人でない者は、その名称中に、医療法人という文字を用いてはならない。
■医療法人の努力事項(法第40条の2)
内容:下記の事項とともに、地域における医療の担い手としての役割を積極的に果たすよう努力する。
- 運営基盤の自主的強化
- 提供する医療の質の向上
- 運営の透明性の確保
■資産保有義務(法第41条)
義務者:医療法人
義務の内容:業務遂行に必要な資産を保有する。
資産の内容:施設・設備・資金
■医療法人の付帯業務(法第42条)
内容:医療法人は、医療法第41条各号に掲げる業務の全て・一部を行うことができる。
制限:付帯業務の遂行は、法人の定款・寄附行為の定めるところによる。
範囲:付帯業務の遂行は、その開設する医療施設の本来業務に支障のない範囲内に限る。
「定款」と「寄附行為」
医療法人の場合、「定款」とは法人の運営・管理等に関する基本ルールをまとめた文書のことをいいます。財団医療法人の場合、財産の拠出が財団の設立に必要であるため、法人の運営・管理等に関する基本ルールをまとめた文書と財産の拠出を合わせて「寄附行為」といいます。
■社会医療法人の付帯業務(法第42条の2)
省略
「社会医療法人」とは
救急医療・へき地医療・周産期医療などの公益性が高く、特に地域で必要な医療を提供する医療法人であって、都道府県知事から社会医療法人として認定されたもの。社会医療法人は、収益を当該法人が開設する病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院の経営に充てる目的で一定の収益事業を行うことが認められている。
■社会医療法人認定取消しに伴う救急医療等確保事業計画提出(法第42条の3)
省略
■医療法人の登記(法第43条)
□登記の場面(第1項)
- 設立時
- 従たる事務所の新設時
- 事務所の移転時
- その他登記事項の変更時
- 解散時
- 合併時
- 分割時
- 清算人の就任時
- 清算人の変更時
- 清算の結了時
□登記の対抗力(第2項)
内容:第1項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後に、第三者に対抗可能になる。
■登記の届出(施行令第5条の12)
内容:登記をしたときは、登記事項・登記の年月日を主たる事務所の所在地の都道府県知事に届け出る。
登記の例外:下記の規定による都道府県知事の認可に係る事項に該当するとき。
例外時の対応:登記の年月日を届け出る。
医療法人の類型

図1.医療法人の類型
■基金(施行規則第30条の37)
「基金」とは
社団医療法人に拠出された金銭その他の財産であって、当該医療法人が拠出者に対して医療法施行規則の規定並びに医療法人と拠出者との間の合意に従い返還義務を負うもの
◇基金の引受者の募集(第1項)
募集可能な法人:社団医療法人
非基金拠出型社団医療法人:
- 持分の定めのある社団医療法人
- 法第42条の2第1項に規定する社会医療法人(図1の社会医療法人)
- 租税特別措置法第67条の2第1項に規定する特定の医療法人(図1の特定医療法人)
募集の方法:基金の引受者を募集できる旨を定款で定める。
募集に関する定款の記載事項:次に掲げる事項を定款で定めなければならない。
- 基金の拠出者の権利に関する規定
- 基金の返還の手続
◇利息付与の禁止(第2項)
内容:基金返還時には、その債権に利息を付与することはできない。
■基金の返還(施行規則第30条の38)
◇基金返還の決議義務(第1項)
内容:基金の返還は、定時社員総会の決議によって行わなければならない。
◇基金返還の制限(第2項)
制限の場面:ある会計年度の貸借対照表上の純資産額が、下記に掲げる金額の合計額を超過する場合
- 基金(代替基金を含む。)の総額
- 資産について時価評価を行っており、時価の総額が取得価額の総額を超えるときは、時価評価を行ったことで増加した貸借対照表上の純資産額
制限の内容:返還する基金の総額は、当該超過額を限度とする。
基金返還の期日:次の会計年度に関する定時社員総会の前日まで
◇代替基金(第3項)
内容:基金を返還する場合には、返還をする基金に相当する金額を代替基金として計上しなければならない
◇代替基金の取崩し禁止(第4項)
内容:第3項の代替基金は、取崩しできない(基金返還以外の目的に使ってはならない)。
■持分の定めのある医療法人から持分の定めのない医療法人への移行(施行規則第30条の39)
◇移行可能な医療法人(第1項)
移行可能な法人:出資持分の定めがある社団医療法人
移行の方法:定款を変更して出資持分の定めがない医療法人へ移行する。
◇移行不可能な医療法人(第2項)
内容:持分の定めのない社団医療法人から持分の定めのある社団医療法人への移行は認められない。
「出資持分の定めがある社団医療法人」とは
当該法人の構成員(社員)が、出資により持分(財産権)を持つことを認められている社団医療法人をいいます。医療法の改正により、平成19年(2007年)4月1日以降は、持分なし社団医療法人(図1の新法の医療法人)の設立しか認められていません。すなわち、「持分の定めのない医療法人への移行」が認められるのは、平成19年(2007年)3月31日以前に設立された持分あり社団医療法人(図1の経過措置型医療法人)だけです。
第二部:医療法人の設立
医療法人設立の流れ
STEP 1:定款・寄附行為(案)の作成(法第44条第2項)
STEP 2:設立総会の開催(法令外の実務)
STEP 3:設立認可申請書の提出(仮申請)(施行規則第31条)
STEP 4:設立認可申請書の審査(法第45条第1項)
STEP 5:設立認可申請書の提出(本申請)(施行規則第31条)
STEP 6:医療審議会への諮問(法第45条第2項)
STEP 7:設立認可書の交付(法第44条第1項)
STEP 8:設立登記(法第46条第1項)
(東京都「医療法人設立の手引き」より一部改変)
条文
■設立の手続き(法第44条)
◇認可の申請(第1項)
認可の申請先:主たる事務所の所在地の都道府県知事
◇定款・寄附行為の作成(第2項)
作成者:医療法人を設立しようとする者
作成の内容:定款・寄附行為をもって、医療法第44条第2項各号に掲げる事項を定める
◇知事による設定(第3項)
知事による設定の場面:財団医療法人の設立者が、下記のいずれかの事項を定めることなく、医療法人の設立の前に死亡したとき
- 名称
- 事務所の所在地
- 理事の任免の方法
知事の役割:利害関係人の請求により又は職権で、上記事項を定める
◇設立時役員(第4項)
選任方法:定款・寄附行為をもって定める
◇定款・寄附行為で定める残余財産の処理(第5項)
内容:医療法人の解散後の残余財産の帰属について定款・寄附行為に定める場合、下記のいずれかへ残余財産を帰属させる。
- 国
- 地方公共団体
- 医療法人
- 医療法施行規則第31条の2各号に掲げる者
◇省令への委任(第6項)
内容:医療法人の設立認可の申請に関して必要な事項は、医療法に定めるもののほか、厚生労働省令で定める。
■設立認可の申請(施行規則第31条)
申請者:医療法人設立の認可を受けようとする者
手続きの内容:申請書に下記の書類を添付して、その主たる事務所の所在地の都道府県知事に提出しなければならない。
申請時の添付書類:医療法施行規則第31条各号に掲げる書類
■知事の認可(法第45条)
◇知事の審査(第1項)
審査項目:
- 申請にかかる医療法人の資産が第41条の要件に該当しているかどうか
- 定款・寄附行為の内容が法令の規定に違反していないかどうか
◇医療審議会への諮問(第2項)
都道府県医療審議会:都道府県知事は、あらかじめ、都道府県医療審議会の意見を聴取して、認可・不認可の処分をする。
■設立登記・財産目録の備置き(法第46条)
◇設立登記(第1項)
内容:医療法人は、主たる事務所の所在地において設立の登記をすることにより成立する。
◇財産目録の備置き(第2項)
内容:医療法人は、成立の時に財産目録を作成し、主たる事務所に備え置かなければならない。
第三部:医療法人の機関
医療法第6章第3節は、医療法人に設置すべき機関と、それぞれの権限・役割・責任、あらに役員の損害賠償責任や補償契約に関する規定を体系的に定めている。
3-1.機関の設置
■必置機関(法第46条の2)
◇社団医療法人の場合(第1項)
- 社員総会
- 理事
- 理事会
- 監事
◇財団医療法人の場合(第2項)
- 評議員
- 評議員会
- 理事
- 理事会
- 監事
3-2.社員総会(社団医療法人関係)
■社員総会の役割(法第46条の3)
◇社員総会の決議(第1項)
総会で決議する事項:
- 医療法に規定する事項
- 定款で定めた事項
◇定款の定めの制限(第2項)
内容:医療法の規定により社員総会の決議を必要とする事項について、社員総会以外の機関が決定することができることを内容とする定款の定めは、その効力を有しない。
■社団の社員と社員総会(法第46条の3の2)
◇社員名簿(第1項)
内容:社団医療法人は、社員名簿を備え置く。
社員変更時:社員の変更があるたびに、社員名簿に変更を加える。
「社員」とは
社団法人の「社員」は、職員を意味しません。社員である職員は存在しても、職員であれば社員になるわけではありません。
◇定時社員総会(第2項)
開催頻度:少なくとも年1回
招集者:社団の理事長
◇臨時社員総会(第3項)
開催頻度:必要に応じて
招集者:社団の理事長
◇臨時社員総会の招集請求(第4項)
招集請求に必要な社員数:総社員の5分の1以上の社員
必要な社員数の例外:招集請求に必要な総社員の割合は、定款により5分の1を下回ることができる。
招集の請求先:理事長
理事長の対応:請求のあった日から20日以内に社員総会を招集する。
◇社員総会の招集通知(第5項)
通知期限:社員総会の5日前
通知の内容:社員総会の目的である事項を示す。
通知の方式:定款で定めた方法に従う。
◇社員総会の決議事項(第6項)
内容:あらかじめ通知をした事項についてのみ、決議をすることができる。
例外:定款に別段の定めがあるとき
□電子提供措置をとる旨の定め(一般法人法第47条の2準用)
内容:社員総会の招集に際し、第51条の2第1項の事業報告書等の内容について、電子提供措置をとる旨を定款で定めることができる。
電子提供措置の具体的内容:医療法施行規則第31条の3の2で定める措置
□電子提供措置(一般法人法第47条の3第1項準用)
内容:電子提供措置をとる旨の定款の定めがあるとき、下記に掲げる事項に係る情報について、継続して電子提供措置をとらなければならない。
- 第51条の2第1項の事業報告書等に記載され、又は記録された事項
- 上記の事項を修正したときは、その旨及び修正前の事項
電子提供措置期間:下記のいずれか早い日(「電子提供措置開始日」)から社員総会の日から3箇月後まで
- 社員総会の3週間前の日
- 社員総会の招集通知が発せられた日
□社員総会の招集の通知等の特則(一般法人法第47条の4第3項準用)
特則の適用対象:電子提供措置をとる旨の定款の定めがある医療法人
特則の内容:社員総会の招集通知に際し、社員に対し、第51条の2第1項の事業報告書等を交付し、又は提供することを要しない。
□書面交付請求(一般法人法第47条の5準用)
◇書面の交付請求(第1項)
請求可能者:電子提供措置をとる旨の定款の定めがある社団医療法人の社員
請求の内容:当該医療法人に対し、下記の「電子提供措置事項」を記載した書面の交付を請求することができる。
- 第51条の2第1項の事業報告書等に記載され、又は記録された事項
- 上記の事項を修正したときは、その旨及び修正前の事項
◇書面の交付義務(第2項)
義務者:理事
義務遂行の時機:社員総会の招集を通知するとき
義務の内容:書面交付を請求した社員に対し、当該社員総会に係る電子提供措置事項を記載した書面を交付する。
◇書面交付の終了(第3項)
書面交付終了の時機:社員が書面交付を請求した日から1年が経過したとき
例外:当該社員が第4項の規定により異議を述べた場合には、異議を述べた日から1年が経過したとき
交付終了の手続:
- 医療法人は、第2項の規定による書面の交付を終了する旨を通知することができる。
- 医療法人は、書面交付終了に異議のある場合には催告期間内に異議を述べるべき旨を催告することができる。
催告期間の長さ:1か月を下らない
◇書面交付請求の失効(第4項)
失効の時機:催告期間を経過したとき
例外:第3項の通知及び催告を受けた社員が催告期間内に異議を述べたとき
□電子提供措置の中断(一般法人法第47条の6準用)
本条の適用場面:電子提供措置期間中に電子提供措置の中断が生じたとき
内容:一般法人法第47条の6各号のいずれにも該当するとき、電子提供措置の中断は、電子提供措置の効力に影響しない。
■社員総会の決議(法第46条の3の3)
◇議決権の数(第1項)
内容:社員は各1個の議決権を持つ。
◇社員総会の定足数(第2項)
定足数:総社員の過半数
例外:定款に別段の定めがあるとき
◇社員総会の議決(第3項)
議事の可否:出席者の議決権の過半数
例外:定款に別段の定めがあるとき
可否同数の場合:議長が決する。
◇議長と採決(第4項)
内容:議長は、採決の際に議決に加われない。それゆえ、可否同数の場合に議決を決することができる。
◇社員総会に出席しない社員(第5項)
内容:書面で、又は代理人によって議決をすることができる。
例外:定款に別段の定めがあるとき
◇特別の利害関係(第6項)
内容:社員総会の決議について特別の利害関係を有する社員は、議決に加わることができない。
■社員総会における役員の役割(法第46条の3の4)
役員:理事・監事
役割:社員から特定の事項について説明を求められた場合に必要な説明をする。
例外:
- 説明を求められた事項が社員総会の目的である事項に関しないものである場合
- 説明しないことに正当な理由がある場合として医療法施行規則第31条の3で定めるもの
■社員総会の議長(法第46条の3の5)
◇議長の選任(第1項)
内容:議長は、社員総会において選任される。
◇議長の役割(第2項)
内容:社員総会の秩序を維持し、議事を整理する。
◇議長の権限(第3項)
内容:社員総会の秩序を乱す者を退場させることができる。
□議事録(一般法人法第57条準用)
◇議事録の作成(第1項)
内容:議事録は、医療法施行規則第31条の3の3の規定に従って作成する。
◇主たる事務所への議事録の備置き(第2項)
内容:議事録は、社員総会の日から10年間、主たる事務所に備え置く。
◇従たる事務所への議事録の備置き(第3項)
内容:議事録の写しは、社員総会の日から5年間、従たる事務所に備え置く。
例外:医療法施行規則第31条の3の4で定める措置をとっているとき
◇議事録の閲覧・謄写(第4項)
内容:社員及び債権者は、医療法人の業務時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
- 第1項の議事録が書面をもって作成されている ⇒ その書面又は書面の写しの閲覧・謄写の請求
- 第1項の議事録が電磁的記録をもって作成されている ⇒ その電磁的記録に記録された事項を医療法施行規則第31条の3の5で定める方法により表示したものの閲覧・謄写の請求
■一般法人法の準用(法第46条の3の6)
内容:一般法人法の下記の規定は、医療法人の社員総会について準用する。
- 電子提供措置による社員総会の通知に関する規定
- 議事録に関する規定
3-3.評議員・評議員会(財団医療法人関係)
■評議員の身分(法第46条の4)
◇評議員となる資格(第1項)
評議員の適格者:
- 医療従事者のうちから、寄附行為の定めるところにより選任された者
- 病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院の経営に関して識見を有する者のうちから、寄附行為の定めるところにより選任された者
- 医療を受ける者のうちから、寄附行為の定めるところにより選任された者
- 前三号に掲げる者のほか、寄附行為の定めるところにより選任された者
◇評議員の欠格要件(第2項)
評議員の不適格者:
- 法人
- 心身の故障のため職務を適正に執行することができない者として医療法施行規則第31条の3の6で定めるもの
- 医療法・医師法・歯科医師法・医療法施行令第5条の5の8で定める法律の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者
- 前号に該当する者を除くほか、拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者
◇評議員の兼職禁止(第3項)
内容:評議員は、当該財団医療法人の役員・職員を兼ねることができない。
◇医療法人との関係(第4項)
内容:(定款・寄附行為で定める)委任に関する規定に従う。
■評議員会の構成・役割(法第46条の4の2)
◇評議員会の定員(第1項)
定員数:理事の定員を超える数
例外:第46条の5第1項の例外である、認可を受けた医療法人では、3人以上
◇評議員会の役割(第2項)
評議員会で決議する事項:
- 第46条の4の5第1項の意見表明
- 医療法に規定する事項
- 寄附行為で定めた事項
◇寄附行為の定めの制限(第3項)
内容:医療法の規定により評議員会の決議を必要とする事項について、評議員会以外の機関が決定することができることを内容とする寄附行為の定めは、その効力を有しない。
■評議員会の決議(法第46条の4の3)
◇定時評議員会(第1項)
開催頻度:少なくとも年1回
招集者:財団の理事長
◇臨時評議員会(第2項)
開催頻度:必要に応じて
招集者:財団の理事長
◇議長(第3項)
内容:評議員には議長を置く。
◇臨時評議員会の招集請求(第4項)
招集請求に必要な評議員数:総評議員の5分の1以上の評議員
必要な評議員数の例外:招集請求に必要な総評議員の割合は、寄附行為の定めにより5分の1を下回ることができる。
招集の請求先:理事長
理事長の対応:請求のあった日から20日以内に評議員会を招集する。
◇評議員会の招集通知(第5項)
通知期限:評議員会の5日前
通知の内容:評議員会の目的である事項を示す。
通知の方式:寄附行為で定めた方法に従う。
◇評議員会の決議事項(第6項)
内容:あらかじめ通知をした事項についてのみ、決議をすることができる。
例外:寄附行為に別段の定めがあるとき
■評議員会の決議(法第46条の4の4)
◇評議員会の定足数(第1項)
定足数:総評議員の過半数
例外:寄附行為に別段の定めがあるとき
◇評議員会の議決(第2項)
議事の可否:出席者の議決権の過半数
例外:寄附行為に別段の定めがあるとき
可否同数の場合:議長が決する。
◇議長と採決(第3項)
内容:議長は、採決の際に議決に加われない。それゆえ、可否同数の場合に議決を決することができる。
◇特別の利害関係(第4項)
内容:評議員会の決議について特別の利害関係を有する評議員は、議決に加わることができない。
■評議員会の意見の聴取(法第46条の4の5)
◇意見を聴取する事項(第1項)
意見聴取者:理事長
内容:第46条の4の5第1項各号に掲げる行為について、あらかじめ、評議員会の意見を聴かなければならない。
◇寄附行為による規定(第2項)
内容:第1項各号に掲げる事項について、評議員会の決議を要する旨を、寄附行為に定めることができる。
■評議員会の権能(法第46条の4の6)
内容:評議員会は、下記の機能・権能を有する。
- 医療法人の業務・財産の状況・役員の業務執行の状況について、役員に対して意見を述べる。
- 医療法人の役員の諮問に答える。
- 医療法人の役員から報告を徴収することができる。
□議事録(一般法人法第193条準用)
◇議事録の作成(第1項)
内容:議事録は、医療法施行規則第31条の4の規定に従って作成する。
◇主たる事務所への議事録の備置き(第2項)
内容:議事録は、評議員会の日から10年間、主たる事務所に備え置く。
◇従たる事務所への議事録の備置き(第3項)
内容:議事録の写しは、評議員会の日から5年間、従たる事務所に備え置く。
例外:医療法施行規則第31条の3の4で定める措置をとっているとき
◇議事録の閲覧・謄写(第4項)
内容:評議員及び債権者は、医療法人の業務時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
- 第1項の議事録が書面をもって作成されている ⇒ その書面又は書面の写しの閲覧・謄写の請求
- 第1項の議事録が電磁的記録をもって作成されている ⇒ その電磁的記録に記録された事項を医療法施行規則第31条の3の5で定める方法により表示したものの閲覧・謄写の請求
■一般法人法の準用(法第46条の4の7)
内容:一般法人法第193条の規定は、医療法人の評議員会について準用する。
3-4.役員の選任・解任
■医療法人の役員(法第46条の5)
◇役員の構成(第1項)
- 理事:3人以上
- 監事:1人以上
例外:都道府県知事の認可を受けた場合
- 理事:1人又は2人
- 監事:1人以上
◇社団医療法人の役員選任(第2項)
内容:社員総会の決議によって選任する。
◇財団医療法人の役員選任(第3項)
内容:評議員会の決議によって選任する。
◇医療法人との関係(第4項)
内容:(定款・寄附行為で定める)委任に関する規定に従う。
◇役員の欠格要件(第5項)
内容:第46条の4第2項の規定は、医療法人の役員について準用する。
◇理事(第6項)
必須の理事:開設する全ての病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院の管理者
例外:病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院を2以上開設する場合において、都道府県知事の認可を受けたとき、管理者の一部を理事に加えないことができる。
◇理事の失職(第7項)
内容:管理者である理事が管理者を退任 ⇒ 理事を失職
◇監事の兼職禁止(第8項)
内容:監事は、医療法人の理事・職員を兼ねることができない。
◇役員の任期(第9項)
任期:2年
再任:可能
□監事の選任に関する監事の同意等(一般法人法第72条準用)
◇議案提出の同意取得義務(第1項)
義務者:理事
義務発生の場面:監事の選任に関する議案を社員総会・評議員会に提出するとき
義務の内容:監事選任の議案について、監事(監事が2人以上いる場合には、その過半数)の同意を得なければならない。
◇監事選任の請求(第2項)
請求者:監事
被請求者:理事
請求の内容:下記に掲げる事項のいずれか
- 監事の選任を社員総会の目的とすること
- 監事の選任に関する議案を社員総会・評議員会に提出すること
■役員の解任(法第46条の5の2)
◇社団医療法人の役員の解任(第1項)
解任の時期:いつでも解任できる。
解任の方法:社員総会の決議による
◇損害賠償請求(第2項)
内容:解任された者は、社団医療法人に対し、解任によった生じた損害の賠償を請求することができる。
例外:解任について正当な理由がある場合を除く。
◇社団医療法人の監事の解任の議決(第3項)
解任の可否:出席者の3分の2以上
例外:3分の2を上回る割合を定款で定めた場合
◇財団医療法人の役員の解任(第4項)
解任の時期:役員が下記のいずれかに該当するとき。
- 職務上の義務に違反し、又は職務を怠ったとき。
- 心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないとき。
解任の方法:評議員会の決議による
◇財団医療法人の監事の解任の議決(第5項)
解任の可否:出席者の3分の2以上
例外:3分の2を上回る割合を寄附行為で定めた場合
□監事等の選任等についての意見の陳述(一般法人法第74条準用)
◇監事の意見陳述(第1項)
陳述者:監事
陳述の場面:社員総会・評議員会
陳述の内容:監事の選任・解任・辞任について意見を述べることができる。
◇辞任した監事の理由陳述(第2項)
陳述者:辞任した監事
陳述の場面:辞任後最初に招集される社員総会・評議員会
陳述の内容:辞任した旨及びその理由を述べることができる。
◇理事の通知義務(第3項)
義務者:理事
通知先:監事を辞任した者
義務の内容:監事を辞任した者に対し、下記に掲げる事項を通知しなければならない。
- 辞任後最初に招集される社員総会・評議員会を招集する旨
- 当該社員総会・評議員会の日時・場所
■役員欠員時の対応(法第46条の5の3)
◇退任した役員の権利義務(第1項)
内容:新たに選任された役員(第2項の一時役員の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、役員としての権利義務を有する。
当該権利義務を有する役員:
- 任期満了により退任した役員
- 辞任により退任した役員
当該権利義務が発生する場面:医療法又は定款・寄附行為で定めた役員の員数が欠けた場合
◇一時役員選任義務(第2項)
義務者:都道府県知事
義務発生の場面:第1項に規定する役員の員数が欠けた場合において、医療法人の業務が遅滞することにより損害を生ずるおそれがあるとき
義務の内容:利害関係人の請求により又は職権で、一時役員の職務を行うべき者を選任しなければならない。
◇欠員補充期間(第3項)
内容:理事・監事のうち、その定数の5分の1を超える者が欠けたときは、1月以内に補充しなければならない。
■一般法人法の準用(法第46条の5の4)
内容:一般法人法第72条及び第74条(第4項を除く。)の規定は、医療法人の役員の選任及び解任について準用する。
3-5.理事
■理事長(法第46条の6)
◇理事長の選出(第1項)
内容:医師・歯科医師である理事のうちより理事長を選出する。
例外:都道府県知事の認可を受けた場合
例外の効果:医師・歯科医師ではない理事のうちより理事長を選出できる。
◇理事が一人の医療法人(第2項)
内容:第46条の5第1項の例外の認可を受けて1人の理事を置く医療法人では、当該理事を理事長とみなす。
■理事長の役割(法第46条の6の2)
◇理事長の権限(第1項)
理事長の代表性:医療法人を代表する。
権限の範囲:医療法人の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
◇権限の制限(第2項)
内容:理事長の権限に加えられた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
「善意の第三者に対抗することができない」とは
善意の第三者とは、ある事柄について知らなかった第三者のことをいいます。
これを踏まえると、第46条の6の2第2項は、内部規定等に定めることにより理事長の権限に制限を加えたとしても、医療法人はその制限について知らない第三者と理事長との間でした約束・契約を無効にできないことを意味します。
◇理事長が欠けた時の対応(第3項)
内容:第46条の5の3第1項及び第2項の規定は、医療法人の理事長について準用する。
■理事の報告義務(法第46条の6の3)
報告義務発生の場面:医療法人に著しい損害を及ぼすおそれのある事実があることを発見したとき
義務の内容:直ちに、当該事実を監事に報告する。
□代表者の行為についての損害賠償責任(一般法人法第78条準用)
内容:医療法人は、理事長がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
□理事の職務を代行する者の権限(一般法人法第80条準用)
◇裁判所の許可の取得義務(第1項)
義務者:民事保全法に規定する仮処分命令により選任された、理事又は理事長の職務を代行する者
義務の内容:医療法人の常務に属しない行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。
例外:仮処分命令に別段の定めがある場合
◇権限外の意思表示(第2項)
対象者:民事保全法に規定する仮処分命令により選任された、理事又は理事長の職務を代行する者
内容:第1項の規定に違反して裁判所の許可を得ずに行った行為は無効とする。
第三者との関係:裁判所の許可を得ずに行った行為であることは、善意の第三者に対抗することができない。
□表見理事長(一般法人法第82条準用)
「表見理事長」とは
理事長以外の理事に理事長その他医療法人を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、その理事を表見理事長といいます。
内容:医療法人は、表見理事長がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負う。
□理事の忠実義務(一般法人法第83条準用)
義務の内容:
- 法令、定款・寄附行為、社員総会・評議員会の決議を遵守する。
- 医療法人のため忠実にその職務を行う。
□競業及び利益相反取引の制限(一般法人法第84条準用)
◇競業取引・自己取引・利益相反取引に関する承認取得義務(第1項)
義務者:
- 医療法人の事業と競業する取引(競業取引)をしようとしている理事
- 医療法人と、自ら当事者として又は第三者の代理人として取引(自己取引)をしようとしている理事
- 医療法人と利益が相反する取引(利益相反取引)をしようとしている理事
義務の内容:当該理事は、理事会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
◇民法第108条の規定の適用除外(第2項)
内容:理事会の承認を受けた下記に掲げる取引については、民法第108条の規定は適用しない。
- 自己取引
- 利益相反取引
□社員・評議員による理事の行為の差止め請求(一般法人法第88条準用)
◇差止請求(第1項)
差止請求者:社員・評議員
差止請求の場面:理事が下記に掲げる行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合であって、その行為によって医療法人に回復することができない損害が生ずるおそれがあるとき
- 医療法人の目的の範囲外の行為
- 法令に違反する行為
- 定款・寄附行為に違反する行為
差止請求の内容:当該理事に対し、当該行為をやめることを請求することができる。
□理事の報酬等(一般法人法第89条準用)
内容:理事の報酬等は、社員総会・評議員会の決議によって定める。
例外:定款・寄附行為にて報酬額を定めているとき
報酬等に含まれるもの:報酬、賞与その他の職務執行の対価として医療法人から受ける財産上の利益
■一般法人法の準用(法第46条の6の4)
内容:一般法人法第78条、第80条、第82条から第84条まで、第88条(第2項を除く。)及び第89条の規定は、社団医療法人及び財団医療法人の理事について準用する。
3-6.理事会
■理事会の役割(法第46条の7)
◇理事会の構成(第1項)
内容:理事会は、すべての理事で組織する。
◇理事会の職務(第2項)
- 医療法人の業務執行の決定
- 理事の職務の執行の監督
- 理事長の選出及び解職
◇重要事項の理事への委任禁止(第3項)
内容:理事会は、下記に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を理事に委任することができない。
- 重要な資産の処分及び譲受け
- 多額の借財
- 重要な役割を担う職員の選任及び解任
- 従たる事務所その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
- 社団医療法人では、第47条第1項の責任の免除
- 財団医療法人では、第47条第4項において準用する第47条第1項の責任の免除
□医療法人の理事長の権限(一般法人法第91条準用)
◇理事長の権限(第1項)
内容:理事長は、医療法人の業務を執行する。
◇理事会への報告義務(第2項)
義務者:理事長
義務の内容:自己の職務の執行状況を理事会に報告しなければならない。
報告の頻度:3か月に1回以上
例外:定款・寄附行為で下記の内容を定めた場合
- 報告の間隔:4か月を超える間隔
- 報告の回数:毎事業年度に2回以上
□競業及び医療法人との取引等の制限(一般法人法第92条準用)
◇理事会への報告義務(第2項)
義務者:医療法人との間で競業取引、自己取引、又は利益相反取引をした理事
義務の内容:当該取引後、遅滞なく、当該取引についての重要な事実を理事会に報告しなければならない。
□理事会の招集権者(一般法人法第93条準用)
◇招集者(第1項)
内容:理事会は、各理事が招集する。
例外:理事会を招集する理事(招集権者)を定款・寄附行為又は理事会で定めたとき。
◇理事会招集の請求(第2項)
招集請求の場面:招集権者を定めた場合
請求の内容:招集権者以外の理事は、招集権者に対し、理事会の目的である事項を示して、理事会の招集を請求することができる。
◇招集通知がない場合の対応(第3項)
対応の場面:第2項の規定による請求の日から5日以内に招集通知がない場合
対応の内容:当該請求をした理事は、理事会を招集することができる。
理事会の予定日:理事会招集の請求日から2週間以内の日
□理事会の招集手続(一般法人法第94条準用)
◇理事会招集の通知義務(第1項)
義務者:理事会の招集者
義務の内容:理事会の日の1週間前までに、理事会招集の通知を発しなければならない。
例外:1週間を下回る期間を定款・寄附行為で定めた場合には、その期間の前までに通知する。
通知先:理事・監事
◇招集手続の省略(第2項)
内容:理事及び監事の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく理事会を開催することができる。
□理事会の決議(一般法人法第95条準用)
◇定足数と表決数(第1項)
定足数:議決に加わることができる理事の過半数
定足数の例外:過半数を上回る割合を定款・寄附行為で定めた場合にあっては、その割合
表決数:出席した理事の過半数
表決数の例外:過半数を上回る割合を定款・寄附行為で定めた場合にあっては、その割合
◇特別の利害関係(第2項)
内容:理事会の決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。
◇議事録の作成(第3項)
作成方法:理事会の議事録は、医療法施行規則第31条の5の4で定めるところに従って、作成する。
署名押印:理事会に出席した理事及び監事が議事録に署名し、又は記名押印する。
例外:定款・寄附行為の規定により、理事会に出席した理事長が議事録に署名し、又は記名押印する。
◇電磁的記録による議事録(第4項)
内容:電磁的記録をもって作成された議事録には、電子署名を付す。
◇議事録への異議(第5項)
内容:理事会の決議に参加した理事であって議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。
□理事会の決議の省略(一般法人法第96条準用)
内容:医療法人は、理事会の決議の省略について、下記の内容を定款・寄附行為で定めることができる。
- 省略の前提条件1:理事が理事会の決議の目的である事項について提案をし、
- 省略の前提条件2:当該事項について議決に加わることができる理事の全員が同意の意思表示をしたとき(例外:監事が当該提案について異議を述べたとき)、
- 効果:医療法人は、当該提案を可決する旨の理事会の決議があったものとみなす。
□議事録等(一般法人法第97条準用)
◇主たる事務所への議事録等の備置き(第1項)
内容:議事録等は、理事会の日から10年間、主たる事務所に備え置く。
議事録等の内容:
- 理事会の議事録
- 理事会の決議の省略の要件である、理事の意思表示
理事会の日の特例:一般法人法第96条の規定により理事会の決議があったみなされる日
◇議事録等の閲覧・謄写(第2項)
内容:
- 社団医療法人の場合:社員は、権利行使のため必要があるときは、裁判所の許可を得て、次に掲げる請求をすることができる。
- 財団医療法人の場合:評議員は、医療法人の業務時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
- 第1項の議事録等が書面をもって作成されている ⇒ 当該書面の閲覧・謄写の請求
- 第1項の議事録等が電磁的記録をもって作成されている ⇒ 当該電磁的記録に記録された事項を医療法施行規則第31条の3の5で定める方法により表示したものの閲覧・謄写の請求
◇債権者による閲覧・謄写請求(第3項)
請求の場面:債権者が、理事・監事の責任を追及するため必要があるとき
請求の内容:裁判所の許可を得て、第1項の議事録等について第2項各号に掲げる請求をすることができる。
◇裁判所の請求拒絶(第4項)
拒絶者:裁判所
拒絶の内容:社員・債権者の請求に係る閲覧・謄写をすることにより、医療法人に著しい損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、閲覧・謄写の許可をすることができない。
□理事会への報告の省略(一般法人法第98条準用)
◇報告省略の要件(第1項)
- 理事又は監事が、理事会に報告すべき事項を理事及び監事の全員に通知した
◇適用除外(第2項)
内容:第1項の規定は、第91条第2項の規定による報告については、適用しない。
■一般法人法の準用(法第46条の7の2)
◇社団医療法人及び財団医療法人の理事会への準用(第1項)
内容:一般法人法第91条から第98条までの規定は、社団医療法人及び財団医療法人の理事会について準用する。
◇議事録等の閲覧・謄写に関する裁判所の許可への準用(第2項)
内容:下記の一般法人法の規定は、一般法人法第97条第2項及び第3項に規定する裁判所の許可について準用する。
3-7.監事
■監事の職務(法第46条の8)
内容:第46条の8各号に掲げる事項
■理事会における監事の役割(法第46条の8の2)
◇意見表明義務(第1項)
内容:監事は理事会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べる。
◇理事会招集請求権(第2項)
招集請求の場面:第46条の8第4号に規定する場合において、必要があると認めるとき
内容:監事は、理事(理事会の招集権者を定めた場合にあっては当該招集権者)に対し、理事会の招集を請求することができる。
◇招集通知がない場合の対応(第3項)
対応の場面:第2項の規定による請求の日から5日以内に招集通知がない場合
対応の内容:当該請求をした監事は、理事会を招集することができる。
理事会の予定日:理事会招集の請求日から2週間以内の日
□監事による理事の行為の差止め(一般法人法第103条準用)
◇差止請求(第1項)
差止請求者:監事
差止請求の場面:
- 理事が下記に掲げる行為をする又はそのおそれがあり、かつ、
- 当該行為によって医療法人に回復し得ない損害が生ずる可能性があるとき
- 医療法人の目的の範囲外の行為
- 法令に違反する行為
- 定款・寄附行為に違反する行為
差止請求の内容:当該理事に対し、当該行為をやめることを請求することができる。
◇担保金の納付不要(第2項)
納付不要の場面:第1項の場合において、裁判所が仮処分をもって同項の理事に対し、その行為をやめることを命ずるとき
納付不要の内容:監事は担保を納付しなくてよい。
□医療法人と理事との間の訴えにおける法人の代表(一般法人法第104条準用)
◇裁判における医療法人の代表(第1項)
裁判の内容:下記のいずれかの裁判
- 医療法人が理事(理事であった者を含む。)に対して提起した裁判
- 理事が医療法人に対して提起した裁判
医療法人の代表:監事
◇その他の裁判における医療法人の代表(第2項)
医療法人の代表:監事
裁判の内容:下記のいずれかの裁判等
- 医療法人が下記の請求を受ける場合
- 第278条第1項の訴えの提起の請求(理事の責任を追及する社員・評議員による訴えの提起の請求)
- 医療法人が下記の通知を受ける場合
□監事の報酬等(一般法人法第105条準用)
◇(第1項)
内容:監事の報酬等は、社員総会・評議員会の決議によって定める。
例外:定款・寄附行為にて報酬額を定めているとき
◇監事が複数名いる場合の対応(第2項)
対応の場面:各監事の報酬等について定款・寄附行為の定め又は社員総会の決議がないとき
対応の内容:各監事の報酬等は、第1項の報酬等の範囲内において、監事の協議によって定める。
◇監事の意見(第3項)
内容:監事は、社員総会・評議員会において、監事の報酬等について意見を述べることができる。
□費用等の請求権(一般法人法第106条準用)
請求権保持者:監事
請求権の内容:監事が職務の執行について医療法人に対して下記に掲げる請求をしたときは、当該医療法人は、これを拒むことができない。
- 費用の前払の請求
- 支出した費用及び支出の日以後におけるその利息の償還の請求
- 負担した債務の債権者に対する弁済(当該債務が弁済期にない場合にあっては、相当の担保の提供)の請求
例外:当該請求に係る費用又は債務が監事の職務の執行に必要でないことを証明した場合
■一般法人法の準用(法第46条の8の3)
内容:一般法人法第103条から第106条までの規定は、社団医療法人及び財団医療法人の監事について準用する。
3-8.役員等の損害賠償責任
■医療法人に対する賠償責任(法第47条)
◇賠償責任(第1項)
内容:社団医療法人の理事・監事は、当該医療法人に対し、任務懈怠によって生じた損害を賠償する責任を負う。
◇損害額の推定(第2項)
損害の原因:社団医療法人の理事が、第46条の6の4において準用する一般法人法第84条第1項の規定に違反して競業取引をした
推定される損害額:理事又は第三者が当該取引によって得た利益の額 = 第1項の損害の額と推定
◇責任を負う理事の範囲(第3項)
損害の原因:社団医療法人の理事が、第46条の6の4において準用する一般法人法第84条第1項の規定に違反して自己取引又は利益相反取引をした
責任のある理事の範囲:下記に掲げる理事は、その任務を怠ったものと推定する。
- 自己取引又は利益相反取引をした理事
- 社団医療法人が当該取引をすることを決定した理事
- 当該取引に関する理事会の承認の決議に賛成した理事
◇財団医療法人への適用(第4項)
内容:第1項、第2項及び第3項の規定は、財団医療法人の評議員・理事・監事に適用する。
■一般法人法の準用(法第47条の2)
◇役員等の責任についての準用(第1項)
内容:一般法人法第112条から第116条までの規定は、第47条第1項の社団医療法人の理事・監事の責任及び同条第4項において準用する同条第1項の財団医療法人の評議員・理事・監事の責任について準用する。
◇社員総会の決議の表決数(第2項)
内容:一般法人法第113条第1項の評議員会の決議をするをするとき、下記の割合以上の賛成が必要。
表決数:出席者の3分の2
例外:3分の2を上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合
◇評議員会の決議の表決数(第3項)
内容:一般法人法第113条第1項の評議員会の決議をするとき、下記の割合以上の賛成が必要。
表決数:出席者の3分の2
例外:3分の2を上回る割合を寄附行為で定めた場合にあっては、その割合
□医療法人に対する損害賠償責任の免除(一般法人法第112条準用)
内容:評議員・役員の医療法第47条第1項の責任は、総社員・総評議員の同意があれば、免除できる。
□責任の一部免除(一般法人法第113条準用)
◇役員等の賠償責任の一部免除(第1項)
内容:評議員・役員の医療法第47条第1項の責任は、社員総会・評議員会の決議によって一部免除することができる。
免除の条件:当該評議員・役員が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないとき
免除額の限度:(最大の免除額)=(第1号に掲げる賠償責任額)-(第2号に掲げる「最低責任限度額」)
◇免除における開示義務(第2項)
開示の場面:評議員・役員の責任の一部免除について決議する社員総会・評議員会
開示の内容:理事は、社員総会・評議員会において第2項各号に掲げる事項を開示する。
◇監事の同意の必要性(第3項)
同意が必要な場面:評議員・役員の医療法第47条第1項の責任について、当該責任の免除に関する議案を社員総会・評議員会に提出するとき
免除する責任の限定:理事・評議員の責任の免除に限る。
同意の取得義務:理事は、監事(監事が2人以上いる場合には、各監事)の同意を取得する。
◇財産上の利益の付与における承認の取得義務(第4項)
義務発生の場面:医療法人が、第1項の決議を受けた役員に対し医療法施行規則第32条の2で定める財産上の利益を与えるとき
義務の内容:当該財産上の利益の付与に関し、社員総会・評議員会の承認を受けなければならない。
□理事等による免除に関する定款・寄附行為の定め(一般法人法第114条準用)
◇免除に関する定款・寄附行為の定め(第1項)
規定の制定:評議員・役員の医療法第47条第1項の責任について、当該責任の免除に関する規定(免除規程)を定款・寄附行為で定めることができる。
規程の内容:第113条第1項の規定による免除額を限度として理事会の決議によって免除することができる。
◇第113条第3項の規定の準用(第2項)
内容:第113条第3項の規定は、下記の場合について準用する。
- 定款・寄附行為を変更して第1項の規定による定款・寄附行為の定めを設ける議案を社員総会・評議員会に提出する場合
- 第1項の規定による定款・寄附行為の定めに基づく責任の免除に関する議案を理事会に提出する場合
◇理事会決議の通知義務(第3項)
義務の発生場面:評議員・役員の責任を免除する旨の理事会の決議を、第1項の定款・寄附行為の定めに基づいて行ったとき
義務の内容:理事は、遅滞なく、及び旨を下記の事項を社員・評議員に通知しなければならない。
- 第113条第2項各号に掲げる事項
- 責任を免除することに異議がある場合には1か月を下らない一定の期間内に当該異議を述べるべきこと
◇免除の適用除外(第4項)
適用除外の場面:総社員・総評議員の10分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の社員・評議員が第3項の期間内に異議を述べたとき。
総社員・総評議員の範囲:責任を負う役員・評議員である者を除く。
適用除外の内容:医療法人は、第1項の規定による定款・寄附行為の定めに基づく免除をしてはならない。
◇第113条第4項の規定の準用(第5項)
内容:第113条第4項の規定は、第1項の規定による定款・寄附行為の定めに基づき責任を免除した場合について準用する。
□責任限定契約(一般法人法第115条準用)
◇責任限度契約の締結(第1項)
規定の制定:評議員・役員の医療法第47条第1項の責任について、その限度に関する規定を定款・寄附行為で定めることができる。
役員等の範囲:
- 理事:業務執行理事又は当該医療法人の職員でないものに限る。
- 監事
※両者合わせて「非理事長理事等」と呼ぶ。
責任限定の条件:評議員・非理事長理事等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない。
規程の内容:あらかじめ医療法人が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を責任限度とする旨の契約を評議員・非理事長理事等と締結することができる旨を定款・寄附行為で定めることができる。
◇責任限度契約の失効(第2項)
失効の内容:第1項の責任限度契約を締結した評議員・非理事長理事等が医療法人の業務執行理事又は職員に就任したときは、当該契約は、将来に向かってその効力を失う。
◇第113条第3項の規定の準用(第3項)
内容:第113条第3項の規定は、下記の場合について準用する。
- 第1項の規定による定款・寄附行為の定め(評議員又は同項に規定する理事と契約を締結することができる旨の定めに限る。)を設ける議案を社員総会・評議員会に提出する場合
◇損害発生における開示義務(第4項)
義務者:責任限度契約を締結した医療法人
義務発生の場面:契約の相手方である評議員・非理事長理事等が任務を怠ったことにより損害を受けたことを知ったとき
義務の内容:損害発生を知ったあとに最初に招集される社員総会・評議員会において第4項各号に掲げる事項を開示しなければならない。
◇第113条第4項の規定の準用(第5項)
内容:第113条第4項の規定は、下記の場合について準用する。
- 非理事長理事等が責任限度契約によってその限度を超える部分について損害を賠償する責任を負わないとされた場合
□理事が自己のためにした取引に関する特則(一般法人法第116条準用)
◇無過失責任(第1項)
内容:自己取引をした理事の医療法第47条第1項の責任は、任務を怠ったことがその理事の責めに帰することができない事由によるものであっても、免れることができない。
◇適用除外(第2項)
内容:一般法人法第113条~第115条の規定は、前項の責任については、適用しない。
■役員等の賠償責任(法第48条)
◇第三者に対する賠償責任(第1項)
役員等:医療法人の評議員・理事・監事
責任の発生場面:役員等がその職務を行うについて悪意・重大な過失があったとき
責任の内容:当該役員等は、悪意・重大な過失によって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
◇役員等のその他の賠償責任(第2項)
内容:第2項各号に掲げる者が、当該各号に定める行為をしたときも、第1項と同様に責任を負う。
例外:当該行為をすることについて注意を怠らなかったことを証明したとき
「悪意」・「重大な過失」とは?
「悪意」とは、ある事実や結果が生じることを知っていた状態を指します。これに対し「重大な過失」とは、少し注意を払えば損害の発生を予測できたのに、それを見逃してしまうほど注意を書いた状態をいいます。
第48条第1項に照らすと、問題となるのは、役員等が任務を怠った際に、その結果として第三者に損害が生じることを認識していたか、あるいは通常の注意を払えば気づけたのにそれを見逃したかという点なのです。
役員等は第三者に対する賠償責任から免れるか
医療法第47条の2に規定される一般法人法第112条から第116条までの規定の準用は、評議員・役員が医療法人に対して与えた損害の賠償責任に関するものです。したがって、一般法人法第112条から第116条までの規定は、評議員・役員が第三者に対して与えた損害の賠償責任には適用されません。
■賠償責任の連帯責任化(法第49条)
連帯責任化の場面:役員等が医療法人・第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合において、他の役員等も当該損害の賠償責任を負うとき
連帯責任の内容:これらの役員等は、連帯債務者とする。
■一般法人法の準用(法第49条の2)
内容:一般法人法第6章第2節第2款「一般社団法人における責任追及の訴え」の規定は、社団医療法人について準用する。
□責任追及の訴え(一般法人法第278条準用)
◇訴えの提起の請求(第1項)
請求者:社員
被請求者:医療法人
請求の内容:社員は、理事・監事の責任を追及する訴えの提起を請求することができる。
請求の例外:
- 責任追及の訴えが当該社員・第三者の不正な利益を図ることを目的とする場合
- 責任追及の訴えが当該医療法人に損害を加えることを目的とする場合
◇訴えの提起がない場合の対応(第2項)
対応者:責任追及の訴えの提起を請求した社員
対応の発動基準:医療法人が第1項の請求の日から60日以内に責任追及の訴えを提起しない。
対応の内容:当該請求をした社員は、責任追及の訴えを提起することができる。
◇理由の通知義務(第3項)
義務者:医療法人
義務の発生場面:第1項の請求の日から60日以内に責任追及の訴えを提起しない場合において、第1項の社員、理事又は監事から請求を受けたとき
義務の内容:当該請求をした者に対し、責任追及の訴えを提起しない理由を通知する。
◇訴え提起の特則(第4項)
特則の適用場面:第1項及び第2項に定める60日の経過により医療法人に回復することができない損害が生ずるおそれがある場合
特則の内容:第1項の社員は、直ちに責任追及の訴えを提起することができる。
例外:第1項に定める請求の例外に該当する場合
◇非財産権訴訟(第5項)
内容:第2項又は第3項の責任追及の訴えは、財産権上の請求でない請求に係る訴え(非財産権訴訟)とみなす。
◇担保決定(第6項)
省略
◇担保決定の条件(第7項)
省略
□訴えの管轄(一般法人法第279条準用)
管轄裁判所:医療法人の主たる事務所の所在地を管轄する地方裁判所
□訴訟参加(一般法人法第280条準用)
◇共同訴訟人(第1項)
内容:社員・医療法人は、共同訴訟人として、又は当事者の一方を補助するため、責任追及の訴えに係る訴訟に参加することができる。
例外:下記のいずれかの場合には、この限りではない。
- 不当に訴訟手続を遅延させることとなるとき
- 裁判所に対し過大な事務負担を及ぼすこととなるとき
◇訴訟参加の要件(第2項)
訴訟参加の場面:医療法人が、理事・理事であった者を補助するため、責任追及の訴えに係る訴訟に参加するとき
要件の内容:監事(監事が2人以上いる場合には、各監事)の同意を取得する。
◇訴訟告知の義務(第3項)
義務者:責任追及の訴えを提起した社員
義務の内容:遅滞なく、医療法人に対し、訴訟告知をする。
◇社員への通知義務(第4項)
義務者:医療法人
義務の内容:責任追及の訴えを提起したとき、又は訴訟告知を受けたときは、遅滞なく、すべての社員にその旨を通知する。
□和解時の同意取得義務(一般法人法第280条の2準用)
義務者:医療法人
義務の発生場面:理事・理事であった者の責任を追及する訴えに係る訴訟において和解をするとき
義務の内容:監事(監事が2人以上いる場合には、各監事)の同意を取得する。
□和解に関する通知・催告(一般法人法第281条準用)
◇民事訴訟法第267条の規定の適用除外(第1項)
適用除外の場面:医療法人が責任追及の訴えに係る訴訟における和解の当事者でない場合
適用除外の内容:民事訴訟法第267条の規定は、当該訴訟における訴訟の目的については、適用しない。
例外:当該医療法人の承認がある場合
医療法人が和解の当事者である場合
医療法人が和解の当事者である場合、裁判上の和解が成立して調書に記載されると、民事訴訟法第267条によって確定判決と同一の効力を持つことになります。
◇和解内容の通知と催告(第2項)
通知・催告者:裁判所
内容:第1項に規定する場合において、裁判所は、医療法人に対し、下記の事項を実施しなければならない。
- 和解内容の通知
- 和解に異議があるときは2週間以内に異議を述べるべき旨の催告
◇和解の自動承認(第3項)
内容:医療法人が2週間以内に書面により異議を述べなかったときは、第2項の規定による通知の内容で社員が和解をすることを承認したものとみなす。
◇一般法人法第112条の規定の適用除外(第4項)
内容:一般法人法第112条の規定は、責任追及の訴えに係る訴訟における和解をする場合には、適用しない。
□費用等の請求(一般法人法第282条準用)
省略
□再審の訴え(一般法人法第283条準用)
省略
■一般法人法の準用(法第49条の3)
内容:一般法法第6章第2節第3款「一般社団法人等の役員等の解任の訴え」の規定は、医療法人の役員等(評議員・理事・監事)の解任の訴えについて準用する。
□医療法人の役員等の解任の訴え(一般法人法第284条準用)
訴えの提起:下記の事実があったとき、役員等の解任の訴えを提起できる。
- 役員・評議員の職務の執行に関し、重大な不正行為・法令違反・定款違反・寄附行為違反の事実があり、かつ
- 当該役員・評議員を解任する旨の議案が社員総会・評議員会において否決された
訴えの請求者:
- 評議員
- 総社員の議決権の10分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合には、その割合)以上の議決権を有する社員
社員の範囲:請求に係る理事・監事である社員を除く。
訴え提起の期限:解任議案を否決した社員総会・評議員会の日から30日以内
□被告(一般法人法第285条準用)
医療法人の役員等の解任の訴えの被告:
- 医療法人
- 前条の役員・評議員
□訴えの管轄(一般法人法第286条準用)
管轄裁判所:医療法人の主たる事務所の所在地を管轄する地方裁判所
3-9.補償契約・役員のために締結される保険契約
■一般法人法の準用(法第49条の4)
内容:一般法人法第2章第3節第9款「補償契約及び役員等のために締結される保険契約」の規定は、社団医療法人及び財団医療法人について準用する。
□補償契約(一般法人法第118条の2準用)
◇補償契約の内容の決定(第1項)
契約の当事者:医療法人・役員
契約の内容:医療法第49条の4が準用する一般法人法第118条の2第1項各号が(下記に)掲げる費用等の全部又は一部を当該医療法人が補償することを約束する。
- 当該役員が、その職務の執行に関し、法令の規定に違反したことが疑われ、又は責任の追及に係る請求を受けたことに対処するために支出する費用
- 当該役員が、その職務の執行に関し、第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合における次に掲げる損失
- イ. 当該損害を当該役員が賠償することにより生ずる損失
- ロ. 当該損害の賠償に関する紛争について当事者間に和解が成立したときは、当該役員が当該和解に基づく金銭を支払うことにより生ずる損失
契約内容の決定:補償契約の内容の決定は、理事会の決議によらなければならない。
◇対象外の補償(第2項)
内容:医療法人は、補償契約を締結している場合であっても、次に掲げる費用等を補償することができない。
- 第1項第1号に掲げる費用のうち通常要する費用の額を超える部分
- 第1項第2号に掲げる第三者に生じた損害を賠償するとき、当該役員が当該医療法人に対して医療法第47条第1項又は第4項の責任を負う場合には、同号に掲げる損失のうち当該責任に係る部分
- 役員がその職務を行うにつき悪意又は重大な過失があったことにより第1項第2号の責任を負う場合には、同号に掲げる損失の全部
◇返還請求(第3項)
返還請求者:補償契約に基づき第1項第1号に掲げる費用を補償した医療法人
返還請求の場面:当該医療法人が、当該補償を受けた役員が自己若しくは第三者の不正な利益を図り、又は当該医療法人に損害を加える目的で第1項第1号の職務を執行したことを知ったとき
請求の内容:当該役員に対し、補償した金額に相当する金銭の返還を請求することができる。
◇理事の報告義務(第4項)
内容:補償契約に基づく補償をした理事及び当該補償を受けた理事は、遅滞なく、当該補償についての重要な事実を理事会に報告しなければならない。
◇一般法人法第84条第1項、第92条第2項及び第116条第1項の規定の適用除外(第5項)
内容:一般法人法第84条第1項、第92条第2項及び第116条第1項の規定は、医療法人と理事との間の補償契約については、適用しない。
◇民法第108条の規定の適用除外(第6項)
内容:第1項の決議によってその内容が定められた第5項の補償契約の締結については、民法第108条の規定は適用しない。
□役員のために締結される保険契約(一般法人法第118条の3準用)
◇役員賠償責任保険の契約内容の決定(第1項)
保険契約者:医療法人
被保険者:医療法人の役員
役員賠償責任保険契約の目的:
- 役員がその職務の執行に関し責任を負うことによって生ずることのある損害を塡補するため
- 役員がその当該責任の追及に係る請求を受けることによって生ずることのある損害を塡補するため
契約内容の決定:役員賠償責任保険契約の内容の決定は、理事会の決議によらなければならない。
契約内容の例外:医療法施行規則第32条の4の2各号に掲げるもの
◇一般法人法第84条第1項及び第92条第2項の規定の適用除外(第2項)
内容:一般法人法第84条第1項及び第92条第2項の規定は、理事を被保険者とする役員賠償責任保険契約の締結については、適用しない。
◇民法第108条の規定の適用除外(第3項)
内容:第2項の保険契約の締結については、民法第108条の規定は適用しない。
例外:契約が役員賠償責任保険契約である場合には、第1項の決議によってその内容が定められたときに限る。
今回は医療法第6章「医療法人」のうち、第1節「通則」から第3節「機関」までに含まれる条文を解説しました。
次回は、第4節「計算」以降の条文について、ポイントを整理しながら解説していきます。
