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信託でペットにお金を遺す

ドッグ ペット

 筆者はペットの飼主の死後にペットの世話人にお金を支払う方法として負担付き死因贈与契約が比較的に優れていると考えるため、先日の記事「遺言・死因贈与でペットにお金を遺す」では信託制度について詳しく説明しませんでした。しかし、いろいろな事情があって独りで暮らしている人が増えていることを考えると信託についてもう少し詳しく説明した方がよいと考えを改めました。この記事では先日の記事でお伝えしなかった信託の詳細について説明します。

相続人がいない人に適している

 飼主に相続人がいれば、飼主は自身の死後にペットの世話をしてくれるように相続人に依頼し、ペットの世話に係る費用としてのお金を支払うような死因贈与契約を結べばいいでしょう。しかし、例えば、ずっと独身で相続人が疎遠な甥姪しかいない場合、又は自分の死後にペットの世話をしてくれるほど親密な友人がいない場合には信託制度が適していると考えました。

 前回の記事の中でも説明しましたが、信託契約は委任者と受託者及び受益者の間で結ばれます。委任者はペットの飼主、ペットの世話人を受益者、そしてペットの世話人に定期的にその報酬を支払う金銭管理者を受託者とすることまでは前回の記事の中で説明しました。信託契約の中で委託者が信託した財産(信託財産)が信託の開始時に受託者の管理下に移ることになり、受託者はペット世話人(受益者)の働きに応じて報酬を受益者に支払います。信託財産のうち、金銭は銀行の通常口座ではなく信託口口座に振り込まれることで受託者はその信託口講座からお金を引き出すことができるようになります。

 作成された信託契約は公証役場で公正証書化する必要があります。信託契約書が公正証書化されていないと銀行で信託口口座の開設を認めてもらえません。また、信託口口座を開設する銀行は信託銀行だけではありませんが、信託業務を行っていない銀行もあります。取引がある銀行にお尋ねになってください。

誰に受託者、受益者になってもらうか

 実際に契約をするにあたって、誰に受託者及び受益者になってもらうかという問題があります。受益者が受け取る金銭は死因贈与又は遺贈によるものではなく、報酬という形になるため、この形の信託契約における受益者はペットの世話を事業としている人又は団体であるほうがよいと考えます。例としては老犬老猫ホームの運営事業者が挙げられます。受託者は甥姪等の親族でもよいですし、遺されるペットのための「ペット信託®」や「家族信託®」をうたう一般社団法人やNPO法人などの団体でもいいと思います。このような法人の中には受益者としてペットの世話をしてくれる事業者と提携している団体もあります。

どれくらいの費用がかかるのか

 信託契約の期間には始まりと終わりがあります。期間の終わりをどこに設定するかで準備しておく金銭の金額が変わってきます。老犬老猫ホームのような施設でペットの世話をしてもらう契約をしたと仮定してみましょう。関東の老犬老猫ホームのホームページを見てみると2024年の時点において入居一時金で40万円程度、小型犬の飼養に年間80万円程度の費用を提示していました。信託期間の終了時点をペットが死亡するまでに設定し、受益者にペットを例えば5年間にわたって世話してもらうつもりであれば500万円程度の金銭を信託口口座に預けておかなくてはなりません。信託監督人を設置する場合はその分の費用もかかります。信託期間の終了時点をペットが死亡するまでではなく、新しい飼い主が見つかるまでに設定すればもっと少ない金額でよいでしょう。

 ペットの余命を考慮してそれに見合う金額の金銭を信託口口座に預けたが、予想よりも早くペットが死んでしまい、信託口口座にお金が残っている状態になってしまったとき、その残金は誰のものになるのでしょうか。信託制度では信託期間が終了し、信託財産に残余部分があったときにその部分をどう処理するかを信託契約の中で決定することになっています。一般社団法人やNPO法人などの団体を信託の受託者とする契約では残余財産をその団体に移転する契約になっていることがあります。筆者は、このような信託終了後の財産の移転は、非営利的な慈善を目的とする団体の運営を助けるという点で有意義な契約であると考えます。

 以上、信託について説明しました。遺贈、死因贈与、及び信託にはそれぞれ特性があります。それらの特性を十分に考慮してこれらの制度を使ったらよいと思います。遺贈及び死因贈与については以前の記事「遺言・死因贈与でペットにお金を遺す」をご覧ください。

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