前回の記事において行政書士の国際業務は、日本人も対象とすると説明しました。そこで、海外へペットを連れて行くときの支援を例として取り上げてみたいと思います。海外の学校に留学を計画しているときや会社から海外への転勤を打診されたときに家でペットを飼っていたらペットのことをどうしようかと思いますよね。ペットは大切な家族の一員なので一緒に海外へ連れていきたいとき、どのような準備をしたらいいのでしょうか。そこで、2023年11月の時点における日本の動物検疫所のホームページの記載から、ペットの犬猫を海外へ連れて行くときのペットの要件と飼い主がする準備・役所への手続をまとめてみました。
海外へ連れていけるペットの要件
ペットの犬猫と海外へ引っ越しするとき、ペットにも出国手続きが必要です。その手続きを受けることができる犬猫は、次の項目1~項目4の要件を満たすことが求められます。この要件は日本出国に必ず必要というわけではありませんが、渡航先の国で要件として求めていることが多く、また、日本に帰国する際も必要であることから日本出国前に全てをクリアした方が良いと考えられます。
- マイクロチップ(ISO11784規格又はISO11785規格のマイクロチップ)をペットに装着する
- 一回目の狂犬病ワクチン接種を91日齢以降のペットに行う
- 一回目のワクチン接種から30日以上かつ1年以内での二回目の狂犬病ワクチン接種を行う
- 二回目の狂犬病ワクチン接種後に採血して狂犬病抗体価検査を行う
令和4年6月の改正動物愛護管理法の施行により、ペットの犬猫へのマイクロチップの装着がペットショップやブリーダーに義務付けられました。これ以降に購入したペットにはマイクロチップが装着されているはずです。また、それ以前のペットについてもマイクロチップが装着されている場合があります。マイクロチップ装着済みで個体登録されているペットに別のマイクロチップを新規に装着する必要はありません。
動物病院における検査・処置の度にマイクロチップ番号が読み取り機で確実に読み取れることを確認してください。イヌについてはレプトスピラ症も輸出検査の対象です。レプトスピラ症に対するワクチンも前もって接種したほうがよいでしょう。
狂犬病ワクチンは不活化ワクチン又は組換えワクチンであり、生ワクチンは認められていません。二回目のワクチン接種の有効期間が日本出国前に切れてしまう場合は二回目のワクチン接種の有効期間内に追加接種を行います。ペットのイヌがマイクロチップを装着しており、マイクロチップ装着後に毎年の狂犬病予防接種を少なくとも2回受けているのであれば、すぐに狂犬病抗体価検査を行うことができます。この場合も最後のワクチン接種の有効期間が日本出国前に切れてしまう場合は最後のワクチン接種の有効期間内に追加接種を行います。
狂犬病抗体価測定は、日本の農水省指定の検査施設で実施されることを要します。動物病院で採血してもらい、動物病院から指定検査施設に採取した血液試料を農水省指定検査施設へ送付してもらってください。獣医師の判断によっては二回目のワクチン接種と同日に採血することもできます。狂犬病抗体価検査の基準値は0.5IU/ml以上です。検査結果は採血日から2年間有効です。
短期間の海外滞在の後に日本に帰国する予定である場合には日本出国前に項目1~項目4を実施完了していることが重要です。項目1~項目4まで完了している場合、旅行者は抗体価検査のための採血日から180日以後であって、二回目の狂犬病ワクチン接種の有効期間(1年)の内に帰国すると日本到着後にペットだけ施設に係留されることなく、12時間以内にペットと共に空港から帰宅することができます。また、狂犬病抗体価検査の結果は2年間にわたって有効であるため、海外滞在中に二回目の狂犬病ワクチン接種の有効期間が満了する前に三回目の狂犬病ワクチン接種を受け、且つ、狂犬病抗体価検査の結果の有効期間内であれば同様に日本帰国後12時間以内に空港から帰宅することができます。