もしペットが人を咬んで怪我をさせてしまった場合、飼い主はどうしたらよいのでしょうか。怪我をさせてしまった人に謝ったり、お見舞いをしたりということ以外にも飼い主にはやることがあります。この記事ではペットの咬傷事故が起こったときに飼い主がする手続きと事故の被害者がする手続、及びトラブル解決の助けとなる制度について解説をします。
咬傷事故発生後に各当事者がする手続
人を咬んだペットの飼い主がすること
人を咬んだペットの飼い主は、咬傷事故発生後に事故発生届出書を保健所等に提出しますが、人を咬んだペットも受けなければならない手続きがあります。
1.事故発生届出書の提出
咬傷事故を起こしたペットの飼い主は、事故発生から24時間以内に「事故発生届出書」を住所地の保健所又は動物愛護管理センターに提出します。
2.一回目の狂犬病検査
咬傷事故発生から48時間以内にペットを民間の動物病院に連れてゆき、ペットが狂犬病の保因者であるか否かの検査を受けさせます。
3.二回目の狂犬病検査
一回目の検査から2週間後に二回目の狂犬病検査をペットに受けさせます。もし咬傷事故を起こしたペットが未登録のペットであった場合、一回目の検査から1週間後と2週間後に二回目及び三回目の検査をペットに受けさせます。
4.検診証明書の提出
ペットが狂犬病に罹患していないという結果が出たら獣医師から検診証明書を取得し、これを住所地の保健所又は動物愛護管理センターに提出します。
事故発生届出書には被害者の住所、氏名、及び電話番号をわかる範囲で記載します。被害者からできるだけ情報を手に入れてください。この他にも、必要があれば咬まれた人を病院に連れていくことも大切です。
咬まれた人がする事
咬まれた被害者は、「事故被害届出書」を住所地管轄の保健所又は動物愛護管理センターに提出します。事故被害届出書には加害したペットの飼い主の住所、氏名、及び電話番号、並びにそのペットの種類、生年月日、年齢、性別、呼び名、及び毛色をわかる範囲で記載します。飼い主からできるだけ情報を聞き出してください。
裁判外紛争解決手続(ADR)によるペットトラブルの解決
ペットを原因とするトラブルを解決したいけれども裁判みたいな大事にはしたくないという方は調停を検討してみてはいかがでしょうか。現在では裁判外紛争解決手続(ADR)という制度があり、裁判によらずに民事上の紛争の解決をしようとする紛争の当事者のため、この制度に基づいて公正な第三者が関与してその解決を図ります。行政書士会でも北海道、宮城、埼玉、東京、神奈川、新潟、長野、静岡、愛知、三重、和歌山、京都、奈良、大阪、兵庫、岡山、山口、香川、及び福岡の各地にADRセンターを設置しています。調停を受けて加害ペットの飼い主との和解を目指すことをお考えの方は、行政書士ADRセンターに限らず、ペットトラブルの解決を調停の対象としている認定ADR事業者の利用を検討されてみてはいかがでしょうか。
行政書士ADRセンター東京が調停の対象として扱うトラブルの例には以下のトラブルが挙げられています。
- ペットによる咬みつき、引っ掻き事件
- ペットの医療事故
- ペットの鳴き声トラブル
- 野良猫への餌やりトラブル
- ペットの売買に関するトラブル
ADRによるトラブル解決までの流れ
行政書士ADRセンター東京を利用したときの利用申込から合意書の作成までの流れを以下に紹介します。
1.ADRセンターへの電話
調停について検討したい、手続について知りたいと思ったら行政書士ADRセンター東京まで電話します。
2.事前の相談
調停の事前相談へ参加し、手続や手数料についての説明を受けます。事前相談は無料・事前予約制です。
3.調停の申込み
ADRセンターは、調停の申込みを受理すると、相手方に調停への参加を呼びかけ、相手方が承諾すると調停の実施が正式に決定します。調停の申込みの際には調停の申込者に申込み手数料(3,600円)が発生します。当事者間で調停の申込み手数料の負担割合について合意があるときは、その負担割合で算出された額を支払うことができます。
4.調停の実施
調停人の進行のもと、紛争当事者間でトラブルの和解を目指して話し合いを行います。話し合いは非公開で実施されるため、トラブルについて秘密が保たれます。第1回の調停手数料は調停の申込人が全額(3,600円)、第2回以降の調停手数料は両当事者が半額ずつ(1,800円)支払います。
5.合意書の作成
話し合いの結果、紛争の解決について合意が成立したら調停人が合意内容を合意書にまとめます。調停人が合意を強制することはありません。話し合いの結果、合意に至らなかった場合では合意書を作成しません。合意書の作成には別途費用はかかりません。合意成立の成功報酬のような費用もありません。
以上、ペットによる咬傷事故が発生したときに当事者がする手続き、及びトラブル解決の助けとなるADR制度について説明しました。