ニュージーランドは、島国であり、火山と温泉があり、地震も多いという日本と似ている点がある国です。第一次産業がニュージーランドの主要産業であり、日本とニュージーランドの間で経済交流が活発とは言えないかもしれませんが、オーストラリアと共にワーキングホリデー制度の先駆国であり、日本からニュージーランドへの留学生は2019年の統計では9,000人以上でした。2022年の統計では留学生も含めて約19,700人の日本人がニュージーランドに在留しています。
ペットを飛行機でニュージーランドに持ち込む場合、貨物便での空輸のみが認められています(介助犬、盲導犬、及び聴導犬を除く)。そのため、ペットの犬猫とニュージーランドに移住を予定されている方は株式会社エコノムーブジャパン又は有限会社バーデン等の専門業者に支援を求めてください。この記事は、ニュージーランドの第一次産業省(MPI)のホームページの記述を基に、そんなニュージーランドに移住する人がペットの犬猫を携帯貨物(ハンドキャリー)扱いで日本ニュージーランド間で空輸するための準備と手続きについて説明します。
犬については1ページ目、猫については2ページ目で説明しています。日本を出国するまでの手続きについては本ブログの記事「ペットと共に海外移住したいときの準備と手続き」をご覧ください。
ペットの犬をニュージーランドに持ち込むための要件と手続き
ここではペットの犬猫をニュージーランドに持ち込むための要件と手続きを説明しますが、どちらのペットについても日本出国に必要な2回の狂犬病予防接種を行っていることを前提とします。
イヌの要件
ニュージーランドに入国できるイヌの要件には次のようなものがあります。
- ニュージーランド入国前の少なくとも6か月間は日本に居ること
- 輸送時に12週齢よりも上であること
- イエイヌであること(他の動物、例えばオオカミとの雑種ではないこと)
- ピットブルテリア、土佐犬、ドゴ・アルヘンティーノ、ペロ・デ・プレサ・カナリオ、及びブラジリアンガードドッグではないこと
- ブルセラ症又はバベシア症であると診断されたことがないこと
- 輸送時に妊娠42日目以降ではないこと
これらの要件のうちの一つでも満たしていないと、そのイヌはニュージーランドに入国できません。
必要な書類と手続き
- モデル動物健康証明書A及びモデル動物健康証明書Bへの記入(獣医師が記入し、その後で獣医官に裏書をしてもらいます)
- MPI認証検疫施設への収容の予約(ペットはニュージーランド到着後すぐにこの施設に送られ、10日間の検疫期間をここで過ごします)
- 輸入許可の申請(許可を得るために少なくとも20~30営業日と268.24NZドルの料金を要します)
- 薬剤宣誓書の記入(ペットが病気の薬物治療を受けており、そのための薬剤をニュージーランドに持ち込む場合、その薬剤を説明し、自己消費のためにその薬剤をニュージーランドに持ち込むことを宣誓します)
モデル動物健康証明書Bには渡航前の少なくとも21日間について感染性呼吸器疾患(犬インフルエンザ)の兆候を示していないこと、及び感染性呼吸器疾患(犬インフルエンザ)の兆候を示す犬猫と同じ場所で飼育されていないことを記入します。また、モデル動物健康証明書Bには渡航前の少なくとも44日間についてブルセラ症の犬と交尾していないことも記入します。さらに、雌犬が人工授精を行っていたらその精液はNew Zealand Import Health Standardに合致するものであったことをモデル動物健康証明書Bに記入します。
必要なペットへの処置
- マイクロチップ(ISO 11784又は11785規格)の装着
- 犬ジステンパー、犬感染性肝炎、犬パルボウイルス感染症、犬パラインフルエンザ、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)感染症、及び犬インフルエンザに対するワクチンの接種
- 犬糸状虫(フィラリア)の検査と駆除
- 病原性レプトスピラ血清型canicolaの検査又はレプトスピラ症の治療
- バベシア・カニス(Babesia canis)及びバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)の検査
- ブルセラ・カニス(Brucella canis)の検査
- 外部寄生虫(ノミ及びダニ)の駆除
- 内部寄生虫(線虫及び条虫)の駆除
- 可移植性性器腫瘍の検査
- 輸出前臨床診断
ワクチン接種について、犬ジステンパー、犬感染性肝炎、及び犬パルボウイルス感染症については犬用5種混合ワクチンで、犬パラインフルエンザについては気管支敗血症菌感染症については共立製薬の「キャニバックKC-3」で対応可能です。犬インフルエンザに対するワクチンの接種は必須ではなく、ワクチンが入手可能であれば接種してくださいと書かれています。
犬糸状虫(フィラリア)の検査は、ペットの犬が渡航時に6か月齢以上の場合、渡航前30日以内に酵素吸着免疫結合法(ELISA)によって行います。犬糸状虫の駆除は、全ての犬について行います。渡航4日前にイベルメクチン、ミルベマイシン、セラメクチン、又はモキシデクチンによる駆除を行います。各薬剤の用量についてはモデル動物健康証明書に記載されていますので、各用量を参照してください。
病原性レプトスピラ血清型canicolaについて渡航前30日以内に少なくとも連続して14日にわたって5~10 mg/kgの治療用量のドキシサイクリンで治療するか、又は顕微凝集検査(MAT)で陰性の結果が得られれば基準をクリアしています。もし検査で1:400という陽性の結果を得た場合、最初の検査の少なくとも14日後に再検査をして最初の検査結果から抗体価が上昇していなければよしとするか、又は渡航前30日以内に少なくとも連続して14日にわたって5~10 mg/kgの治療用量のドキシサイクリンで治療します。
バベシア・カニス(Babesia canis)及びバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)の検査について、ペットの犬を南アフリカに連れて行ったことがある場合、又はペットの犬が南アフリカに在住していたことがある場合にのみバベシア・カニスの検査が必要になります。バベシア・カニス及びバベシア・ギブソニの検査を免疫蛍光抗体検査(IFAT)又はELISAで行う場合、渡航前16日以内の検査で結果が陰性であることが必要です。バベシア・カニス及びバベシア・ギブソニの検査をPCRで行う場合、30~37日の間隔を空けて採取した2試料について結果が陰性であることが必要であり、2つ目の試料は渡航前16日以内に採取された試料であることが必要です。バベシア症であると診断されたことがある犬は、治療とは無関係にニュージーランドへ入国することができません。
ブルセラ・カニス(Brucella canis)の検査は、迅速スライド凝集検査(RSAT)、試験管凝集検査(TAT)、又は細胞質寒天ゲル免疫拡散テスト(CPAg-AGID)で行います。どの検査法でも渡航前16日以内の検査で結果が陰性であることが必要です。もしRSAT又はTATによる結果が陽性又は不確定であった場合、CPAg-AGIDで再検査を行えます。もしTATによる結果が陽性又は不確定であった場合、渡航前16日以内であって、1回目の検査から30~42日後に再検査を行えます。ブルセラ症であると診断されたことがある犬は、治療とは無関係にニュージーランドへ入国することができません。
外部寄生虫の駆除については、ニュージーランド渡航前30日以内に1回目の処置、及び1回目の処置の少なくとも2週間後でニュージーランド渡航前2日以内に2回目の処置を行います。
内部寄生虫の駆除については、ニュージーランド渡航前30日以内に1回目の処置、及び1回目の処置の少なくとも2週間後でニュージーランド渡航前4日以内に2回目の処置を行います。
可移植性性器腫瘍の検査については、渡航前2日以内に外部生殖器を検査します。
輸出前臨床診断では、獣医師がニュージーランド渡航前2日以内に実施し、外部寄生虫が居ないこと、感染症及び接触性伝染病の兆候がないこと、並びに健康状態が渡航に耐えうるものであることを確認します。
以上の予防接種、検査、治療、及び駆除についてはモデル動物健康証明書Aに記入欄があります。
タイムテーブル
渡航7~8週間前
- マイクロチップの確認
- Babesia canis及びBabesia gibsoniのPCR検査のための血液試料採取(PCR検査を選択した場合)
- MPI認証検疫施設への収容の予約
- 輸入許可申請
渡航前30日間以内
- マイクロチップの確認
- 糸状虫の検査のための血液試料採取
- 病原性レプトスピラ血清型canicolaの検査のための血液試料採取又はレプトスピラ症の治療開始
- 外部寄生虫の目視検査
- 一回目の外部寄生虫の駆除
- 一回目の内部寄生虫の駆除
渡航前16日間以内
- マイクロチップの確認
- バベシア・カニスとバベシア・ギブソニの検査のための血液試料採取
- ブルセラ・カニスの検査の検査のための血液試料採取
渡航前4日間以内
- マイクロチップの確認
- 犬糸状虫の駆除
渡航前2日以内
- マイクロチップの確認
- 外部寄生虫の目視検査
- 感染症の兆候の目視検査
- 可移植性性器腫瘍の検査
- 健康状態の検査
- 二回目の外部寄生虫の駆除
- 二回目の内部寄生虫の駆除
- 動物検疫所におけるモデル動物健康証明書A及びモデル動物健康証明書Bへの獣医官のサインと公印の取得
- クレートに貼る封印(シール)の取得
渡航当日
- 封印(シール)のクレートへの貼付
ペットは貨物便で送ることになりますので、飼い主は輸入許可証、モデル動物健康証明書A及びモデル動物健康証明書B、上記検査の結果報告書、ワクチン接種証明書、薬剤宣誓書(該当する場合のみ)、及び航空会社から求められたその他の書類を忘れずに自分の機内持ち込み用バッグに入れてニュージーランドに向けて出発します。