アメリカに入国できる犬の要件が2024年8月1日に変わりました

海外(狂犬病非発生地域)からペットと共に日本へ帰国するための準備と手続き

ペットと海外移住

 これまでに日本から海外へペットの犬猫を連れていきたいときの手続きについて説明しました。本記事から2回にわたり、逆に海外からペットの犬猫と共に日本へ引っ越したいときにする、日本の検疫当局が要求する要件と手続について説明します。

 まず、前提として、日本の検疫所が狂犬病発生国に指定していない国に滞在しているペットと指定しているに滞在しているペットとでは、日本への帰国に際して必要とされる手続きに差があることをご理解ください。本記事では、狂犬病発生国であるとされていない国及び地域(清浄国)から帰国する際の要件と手続について説明します。清浄国に指定されている国と地域はアイスランド、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー諸島、ハワイ、及びグアムです。これら以外の国及び地域から日本に帰国する場合は次の記事をご覧ください。

清浄国指定地域から日本へ帰国できるペットの犬猫の要件

 清浄国指定地域からペットの犬猫を連れて日本へ帰国するには次のような要件があります。

  • マイクロチップ(ISO11784規格又は11785規格のマイクロチップ)を装着していること(動物病院における検査・処置の度にマイクロチップ番号が読み取り機で確実に読み取れることを確認してください)
  • 日本へ連れて来ようとしているペットの在住に関し、以下の要件を満たしていること
(ア)出生以来、指定地域のみで飼育されていること
(イ)日本に渡航する直前の180日間以上、指定地域のみで飼育されていること
(ウ)日本から海外へ渡航(輸出)されて以来、指定地域のみで飼育されていること
(ア)~(ウ)のいずれかを満たすことが必要です。

(ア)~(ウ)のいずれにも該当せず、指定地域で飼育されていた日数が180日未満の場合、日本到着後、180日に不足する日数を動物検疫所の係留施設で過ごすことになります。

 以上がペットの要件になります。要件ではないのですが、幼齢老齢のペット、妊娠授乳中のペット、病気のペット、怪我をしているペットは、日本到着後の検査中に万が一の事態が起きても日本の検疫所の責任ではないとされています。次に飼い主が渡航に際して日本の検疫所に対してする手続きについて説明します。

日本に出国する前に行う手続き

 ペットが上に挙げた要件を満たしている場合、次の手順に従って帰国の準備をします。

  1. 日本到着の40日前までに到着予定の空港海港を管轄する動物検疫所に輸入届出書を提出する
  2. 届出書を受けとった動物検疫所が交付する「届出受理書」を受け取り、日本渡航時に携帯する
  3. 提出した「届出書」に変更が生じたときは「変更届出書」を検疫所に提出する(到着日を早くしたり、輸入するペットの頭数を追加すること、輸入予定の個体を別の個体に変更すること、最初に提出した届出書に記入した到着予定日を過ぎてから日程を変更したりすることは認められません)
  4. 日本への渡航前(出国前)10日以内に、滞在国の民間獣医師又は政府機関の医官による臨床検査(輸出前検査)を受ける(イヌの場合では狂犬病(rabies)及びレプトスピラ症(leptospirosis)にかかっていない又はかかっている疑いが無いこと、ネコの場合では狂犬病にかかっていない又はかかっている疑いが無いことを検査します)
  5. 輸出国政府機関発行の証明書を取得する(民間獣医師が作成した健康証明書に公印をスタンプすることで政府機関発行の証明書とする国もあります)

 動物検疫所が発行する届出受理書は、輸出国政府機関による証明書の発行(民間獣医師作成の健康証明書のエンドースメント)や飛行機へのペットの搭載等に必要になります。

 ペットの輸出前検査は、輸出国政府機関発行の証明書を取得するためにも必要です。滞在地の民間動物病院等で輸出前検査を受ける際にはマイクロチップ装着証明書などの証明書類を持参します。日本の検疫所が提供している書式(Form AB)に検査結果を記載してもらい、狂犬病予防接種と狂犬病抗体価検査の情報も証明書から転記してもらい、そうして健康証明書を作成してもらいます。この健康証明書が輸出国政府機関発行の証明書の元になります。

 健康証明書(後の輸出国政府機関発行の証明書)には

(ア)イヌ・ネコの生年月日又は年齢
(イ)マイクロチップの番号と埋込年月日
(ウ)ペットの在住に関する情報
(エ)輸出国における輸出前過去2年間に狂犬病の発生がないことの証明
(オ)輸出前検査の結果
(検査年月日と狂犬病及びレプトスピラ症(イヌのみ)の検査結果)
(カ)輸送ケージに封印をする場合、封印(シール)番号
(キ)予防接種及び寄生虫の駆除の情報(参考情報)

の記載が必要です。

 項目(キ)は、実施した接種又は処置の記載が必要であり、記載内容は、対象の疾患又は寄生虫の名前、予防接種又は駆虫薬投与の年月日、ワクチンの種類(不活化ワクチン又は組換えワクチン。生ワクチンは認められません)、及びワクチンの有効免疫期間です。指定国・地域から日本に帰国するペットについては各種予防接種及び駆虫薬投与は、日本入国の要件ではありませんが、推奨されています。

  輸出国政府機関発行の証明書は、動物病院等で作成してもらった健康証明書を滞在地の動物検疫当局その他に持参し、当獣医官が健康証明書に追加情報を記入し、署名押印等をしてエンドースメント(裏書)を付すことで作成されます。エンドースメント(裏書)を付す前の証明書の内容を日本の動物検疫所で確認してもらうことができます。

 獣医官によるエンドースメント時には健康証明書に加えて各種証明書及び届出受理書を必要とする国もあります。必要書類については各国の検疫当局にお尋ねください。

 動物病院における検査、及び予防接種等の処置の度にマイクロチップ番号が読み取り機で確実に読み取れることを確認してください。

トランジット便で帰国の場合

 指定地域からの直行便で日本に帰国するのではなく、それ以外の国、地域を経由(トランジット)して帰国する場合は輸送ケージを封印するか、輸送中にペットが他の動物と接触しないようにすることが必要であり、これを証明する封印番号又は輸送に関する追加証明書のどちらかの取得が必要です。封印番号は、日本に帰国する便を運航する会社に確認してください。封印番号を得た場合は輸出国政府機関発行の証明書に番号を記載します。輸送に関する追加証明書は、経由地において当地の動物検疫機関・税関、又は航空海運会社や機長船長から取得します。日本に帰国する便を予約する際にその便を運航する会社に確認してください。

 以上の手順を完了した後に日本に向かって出国します。

日本到着後の手続き

 日本到着後に動物検疫所で輸入検査を受けます。輸入検査申請書輸出国政府機関発行証明書、経由地がある場合は輸送に関する追加証明書(封印をしなかった場合)、貨物便としてペットを送付したときはそれらの書類に加えて航空運送状又は船荷証券を、届出受理書の受領時に他の提出書類を指示されたときはその書類を提出して輸入検査を受けます。問題が無ければ12時間以内にペットと共に空港海港を出ることができます。問題がある場合は、最大で180日間の係留処分を受ける可能性があります。

まとめ

 本記事では、清浄国から日本へペットと共に帰国する際に日本の検疫当局から要求されるペットの要件と飼い主がする手続きについて説明しました。今回のポイントをまとめます。

  • 日本が狂犬病の清浄国として指定する国・地域はわずかに6か国・地域である
  • ペットは指定地域でのみ飼育されている
  • ペットにマイクロチップを装着する
  • 帰国40日前までに日本の動物検疫所に輸入届出書を提出して届出受理書を受け取る
  • 帰国10日以内に滞在国でペットに健康検査を受けさせて輸出国政府機関発行の証明書を得る
  • 輸出国政府機関発行証明書、届出受理書、輸入検査申請書、及びその他の書類を携帯してペットと共に帰国する
  • トランジット便で帰国する際には上記の書類に加えて封印番号又は輸送に関する追加証明書を得て帰国する
  • 日本に帰国したら上記の書類を提出して輸入検査を受ける

 帰国前の滞在国が出国に際して要求する要件と手続は、それぞれの国によって異なると思いますので、ここでは紹介しません。次の記事では、清浄国に指定されていない国・地域から日本に帰国する際に要求される要件と手続について説明します。

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