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(終活マガジン第13号)死亡後の手続きと死後事務委任

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 最近、死後事務委任という言葉を聞くようになっていませんか?。長寿や家族観の変化によって死んだ後のことを子に頼ることができなくなってきました。死んだ後の色々な手続きを死後事務といいます。死後事務の中には死亡届の提出をはじめとする役所に対する手続き、公共料金等の支払いと契約解除などの民間企業に対する手続き、並びに葬式及び納骨の執行が含まれます。この記事では、どのような死後に行う事務があり、生前にどのような準備をしておけばよいのか説明します。

死亡した後にどのような手続きがあるのか

 死後に必要になる様々な手続きのうち、主なものを挙げます。

役所への主な手続き

  • 死亡を知った日から7日以内
    • 死亡届(死亡診断書と死亡届書を提出します)
    • 埋火葬許可証の取得(死亡届を提出すると発行されます)
    • 戸籍への死亡の事項の記載(死亡届を提出した市区町村の役所から本籍地の役所に依頼があります)
  • 死亡を知った日から14日以内
    • 住民票の世帯主の変更届(死亡者が世帯主であり、その世帯に2名以上の世帯員がいる場合)
    • 在留カード又は特別永住者証明書の返却(ただし、「死亡日」から起算)
  • 死亡日から15日以内
    • バイク及び自動車の廃車又は名義変更手続
  • 死亡後速やかに
    • 介護保険被保険者証の返納
    • 運転免許証の返納
    • パスポートの返納又は失効手続
    • 未納保険料の処理
  • 死亡を知った日の翌日から1か月以内
    • 未支給の失業給付の請求
  • 3か月程度の相当な期間
    • 未納の税金又は過払いした税金の処理(未納又は過払いの通知日から起算)
  • 死亡を知った日の翌日から4か月以内
    • 準確定申告
  • 死亡を知った日の翌日から10か月以内
    • 相続税申告
  • 2年以内
    • 高額療養費の申請(高額な医療費が発生した診療月の翌月から起算)
    • 葬祭費/埋葬料の申請(葬祭を行った翌日から起算)
    • 国民年金の死亡一時金の申請(死亡日の翌日から起算)
    • 過払保険料の処理(還付通知日から起算)
  • 3年以内
    • 不動産の相続登記(相続財産の中に不動産があるとき場合、その取得を知った日から起算)
  • 5年以内
    • 遺族基礎年金/遺族厚生年金の請求(死亡を知った日の翌日から起算)
  • 随時
    • 印鑑登録証の返納
    • 健康保険証又は後期高齢者医療保険被保険者証の返納
  • 諸手続きの終了後
    • マイナンバーカード・住民基本台帳カードの返納
  • 未支給年金の請求(被相続人が亡くなった月の年金が未支給の場合。被相続人がマイナンバーを日本年金機構に届け出ていた場合には手続き不要)
  • その他、住所地の地方公共団体から介護サービス等を受けていた場合にはそのサービスの解約手続等

民間企業等への主な手続き

  • 病院や介護施設等の費用清算
  • 電話及びインターネットなどの料金の清算、契約承継、名義変更、又は解約
  • NHK受信料の清算、及び名義変更又は解約
  • 水道、ガス、及び電気の料金の清算、及び契約の名義変更又は解約
  • サブスクリプション型サービスの清算と解約
  • 軽自動車の廃車又は名義変更手続
  • 保険会社への死亡保険や入院給付金の請求、及び契約の解約
  • 預貯金口座の名義変更や解約
  • クレジットカードの解約
  • 証券口座内の証券の移管や口座解約

住居等に関する手続き

  • 不動産の所有権の名義変更(「役所への主な手続き」で説明済み)
  • 未納固定資産税の処理
  • 未納地代の処理(借地権が登記されている場合には相続登記が必要)
  • 未納家賃の処理(賃貸住宅に入居の場合)
  • 遺品整理と賃貸借物件の解約及び明け渡し(賃貸住宅に入居の場合)

葬儀・祭祀に関する手続き

  • 埋火葬許可証の取得(「役所への主な手続き」で説明済み)
  • 葬儀社の手配と葬儀の執行
  • 墓地の管理者への連絡と納骨の執行
  • 墓地の管理料の支払い

その他の手続き

  • 遺されたペットの世話の手配
  • サブスクリプション型オンラインサービスの清算と解約
  • SNSアカウント等の閉鎖

スマホの契約解除は一番最後

スマートフォンは、サブスクリプション型オンラインサービスやネット証券やネットバンクなどの金融サービスなど、色々なサービスを享受するための手段となっています。その為、被相続人が亡くなってすぐにスマートフォンの契約を解除してしまうとその人がどのようなサービスを受けていたかわからなくなったり、その人のアカウントや口座を見つけ出すために余計な労力を費やすことになったりします。「スマホの契約解除は一番最後」と心得てください。

 上に挙げた手続きだけでも40種類近くになります。これらの諸々の手続きをまとめて「死後事務」と呼んでいます。このように、人が死亡した後に行う手続きはたくさんあります。これまで本勉強会で勉強してきた方は理解されているように、遺産の分割に関する決定は遺言又は遺産分割協議で行います。遺産分割は、死後事務ではありません。

死後事務を委任するとは

 人生の最期の段階で後見を受けることになれば後見人が死亡した後のことも面倒を見てくれるのではないかと期待されている人もいるかもしれません。しかしながら、後見人は、幾つかの例外を除いて基本的に被後見人の死後の手続きを代行することができません。そのため、これらの死後の手続きの執行を相続人ではない誰かに依頼したい人は、死後事務委任契約を結んで依頼しなくてはなりません。

 死後事務委任を必要とする人が増加した結果、この依頼を受けて死後事務を相続人に代わって執行する死後事務代行事業者が現れました。死後事務委任は、このような代行業者との間で死後事務委任契約を結んで行われるようになってきました。ここでは、死後事務代行事業者を賢く利用するために死後事務委任契約について簡単に説明します。

死後事務委任契約

 死後事務委任契約は、公正証書により作成します。判例により、本人が死亡しても契約の効力は失われないとされていますが、いかなる場合にも当てはまるわけではなく(最判平4.9.22)、公正証書にして万全を期します。契約の内容は、双方の合意によって自由に決定可能です。契約の中に含まれる主な条項としては、(1)委任事務の範囲、(2)預託金及び費用報酬の支払いに関する定め、(3)契約の解除及び終了に関する定め、並びに(4)預託金の返還及び事務執行報告に関する定め等が挙げられます。

委任事務の範囲

 上に挙げた死後に行われる事務のうち、必要と思われるものを選択して契約の中に含めることができます。

預託金及び費用報酬の支払いに関する定め

 死後事務を受任する事業者によって様々ですが、死後事務執行の費用(経費)と報酬を死後事務の委任者の死後にその預託金の中から受け取る場合があります。そのような場合では契約の中に預託金に関する定めがあります。預託金ではなく、死後事務委任契約締結と同時に生命保険に加入し、その生命保険の死亡保険金の中から費用と報酬を支払う契約になっている場合もあります。

 死後事務委任の費用と報酬として委任者の財産を受任者に贈与させる贈与契約を委任者に結ばせる、又は遺言を書かせる事業者も存在したと聞きます。このような場合に委任者が望まない契約をさせられたり、遺言内容を書かされたりするトラブルが生じているようです。

契約の解除及び終了に関する定め

 契約の解除に関する定めとは、委任者は、受任者に健康上の理由等により事務の遂行ができないとき又は受任者との信頼関係が破綻したとき、受任者は正当な理由があるときに限り契約を解除できるという定めです。契約が、預託金の中から死後事務委任の費用と報酬を支払うとしている場合、委任者の死後ではその相続人が預託金の潜在的権利者になります。その相続人と受任者は預託金に関して利害が対立し得る関係になるため、委任者の相続人による契約の解除についても定めておくことが必要になります。

 死後事務委任契約は、委任した事務が終了した時点で終了します。

預託金の返還及び事務執行報告に関する定め

 死後事務の終了後、受任者は事務執行の費用と自分への報酬を預託金から清算し、残金を遺言執行者、相続人、又は財産清算人に返還します。さらに受任者は、事務執行の詳細、費用の支出、及び報酬等を記載した報告書を作成して報告します。

死後事務代行サービスを賢く利用するために

どのような人が利用するのか

身寄りがない人
 お独り様が身寄りがない人に含まれます
相続人が高齢である人
 子が既に高齢であるという理由で自分が死亡した後のことを任せられないと考えている人になります
家族に負担をかけたくない人
 子や他の相続人が遠方に住んでいたり、普段からの交流がなかったりといった理由で負担をかけたくない人、又は自分が死亡した後のことを任せられないと考えている人になります

死後事務委任契約に見られるトラブル

 死後事務委任をしたい者は、死後事務代行事業者と契約して死後事務を委任します。しかしながら、死後事務委任契約に関するトラブルも報告されています。

 筆者は、死後事務委任契約に見られるトラブルの原因は、契約を結んでから契約した事務が執行されるまでの間が長時間にわたること、死後に行われる事務の種類が多すぎて受任者が何をどこまでしてくれるのか明確なイメージが湧かないこと、及び契約書を読んでも内容がすんなりと理解しにくいことではないかと考えます。このことは以前の記事「身寄りのない高齢者支援事業者が守るべき指針」でも説明しました。

 受任者が何をどこまでしてくれるのかあやふやだし、契約書の内容もよくわからないまま契約して預託金を支払わされ、(実際には、死後事務を執行するので委任者が死亡するまで何もすることがないのですが)受任者が契約を結んでから何もしていない様子を長期間にわたって見せつけられていると、受任者に落ち度がなかったとしても受任者に対する疑念が委任者に生じてしまうことは自然なことかもしれません。

 また、委任者が契約をして預託金を支払ってから実際に死後事務を執行してもらうまでの間に受任者である事業者が破産したり事業を止めてしまったりしてサービスを提供しないというトラブルが生じる可能性は否定できません。

 さらに、委任者の死後に預託金を巡って受任者と委任者の相続人との間で争い(トラブル)が発生する可能性があります。相続人が既に高齢者である等の事情で相続人に頼ることができない委任者でも、死後事務委任契約の締結に相続人を関与させる等してトラブル発生の可能性を低下させることが大事であると考えます。

 死後事務を受任する事業者による贈与の強要といったトラブルは既に上で説明しました。その他のトラブルの原因として、死後事務の受任者が死後事務代行に日常生活支援や身元保証を組み合わせたサービスを提供していることがトラブルを増やしている可能性も考えられます。日常生活支援や身元保証の必要性は、個々の委任者の事情によって異なります。不要なサービスを抱き合わせで販売されたらサービス利用者が不満を持つのは当然です。

トラブルを避けて賢く利用するためのポイント

ポイント1. 自分が必要とする死後の手続きを決める

 既に紹介したように本人の死亡後に行われる手続きは多岐にわたります。自分がどの手続きの代行を必要としているのか理解していることが死後事務代行事業者から不要なサービスへの契約を押し付けられないためにも大事です。

ポイント2. 死後事務を委任する事業者を決める

 ポイント1で選んだ手続きを代行してくれる死後事務代行事業者を探し出して選びます。優良代行業者を選ぶためのチェックリスト(「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(案)」より)を以前の記事「身寄りのない高齢者支援事業者が守るべき指針」からダウンロードすることができます。参考にしてください。

ポイント2-1.法律の専門家が在籍する事業者を選ぶ

 死後事務代行事業者の中には行政書士や司法書士が運営に関わっている事業者もいます。

ポイント2-2.法人である事業者を選ぶ

 死後事務委任契約をしてから死後事務が執行されるまでの時間が長いため、契約の受任者として個人事業主ではなく法人の代行事業者を選択することにより、受任者が本人よりも先に亡くなってしまうリスクを低下させます。

ポイント2-3.死後事務の執行後に費用と報酬を支払えるような事業者を選ぶ

 死後事務委任契約の受任者として法人事業者を選択しても死後事務が執行されるまでにその事業者が事業を止めてしまう可能性は無くなりません。そのような場合に預託金を返還できない事業者もあるかもしれません。預託金ではなく生命保険の死亡保険金を死後事務委任の費用と報酬の支払い手段としている事業者も存在します。

まとめ

 今号の記事は、死後事務について解説しました。自分が死んだ後にも色々な手続きがあることを知ってもらい、それにより死ぬ前に身の回りの物事を整理する意識を持ってもらおうと生前整理の前に死後事務について解説しました。今号のポイントを以下にまとめます。

  • 死後事務には役所への手続き、民間企業等への手続き、住居等に関する手続、葬儀・祭祀に関する手続、及びその他の手続きがある
  • 死後事務委任契約は公正証書によって行う
  • 死後事務委任契約は少なくとも委任事務の範囲、預託金及び費用報酬の支払いに関する定め、契約の解除及び終了に関する定め、並びに預託金の返還及び事務執行報告に関する定めを含む
  • 死後事務委任に関するトラブルは、死後事務代行事業者の悪意によるものを除けば、契約内容をよく理解できないことから生じ得る

 今後、色々な事情で子や相続人に死後事務の執行を期待できない人が死後事務代行事業者を利用することが増加するでしょう。死後事務委任がどうしても必要になることはあると思いますが、死後事務委任にまつわるトラブルを回避するためには自分は死後事務委任に関してどこまでのサービスを必要としているのか理解し、不要なサービスについてはきっぱりと断る意思を持つことが必要です。筆者は、死後事務委任がどのようなものであるのか知り、事業者が提供する死後事務代行サービスの内容を理解することで死後事務代行サービスの利益を享受できるものと信じます。

 死後事務委任契約は、遺言や後見とは別個のものであり、もちろん単独で考えてよい契約ですが、遺言や後見を考える時期に死後事務委任契約を検討することで自身の老後を長期的・包括的に計画することができます。

以下のアンケートにお答えください。よろしくお願いします。