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動物の輸出入

ビジネス
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 最近は犬猫以外の動物をペットとして飼育する人も増えました。この記事では、犬猫以外の動物を個人的なペットとして飼育している人やペット産業の事業者を対象として、日本と外国との間でそれらの動物を移動させる際に求められる手続を説明します。

 これらの手続の目的は、海外から輸入されたり、海外へ輸出した生物から病気の病原体が家畜や人に感染して拡散することを防止することにあります。この目的を果たす役割を与えられた組織が検疫所です。

農水省動物検疫所と厚労省検疫所の違い

 検疫所には農林水産省動物検疫所と厚生労働省検疫所が存在し、動物種によって担当する検疫所が異なります。動物検疫所は、海外の動物や畜産物の感染症の日本国内への侵入と国内の動物や畜産物への拡散を防ぐことを目的としています。厚生労働省検疫所は、海外の動物に由来する人の感染症(人獣共通感染症)の日本国内への侵入とへの拡散を防ぐことを目的としています。

農林水産省動物検疫所担当動物

  • 家畜(ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イノシシ、シカ等の偶蹄目の動物、ウマ、蜜蜂)
  • 犬猫
  • ウサギ、キツネ、アライグマ、スカンク
  • 家禽(鶏、ウズラ、雉、ダチョウ、ホロホロ鳥、七面鳥、アヒル、ガチョウ、カモ目の鳥類)
  • 農林水産省動物検疫所指定の水産動物
  • サル(ペット用を除く)

 これらの動物の輸出入規制は、家畜伝染病予防法、狂犬病予防法、及び水産資源保護法に規定されています。

厚生労働省検疫所担当動物

  • 陸生哺乳類(動物検疫所担当の動物を除く)
  • 鳥類(家禽を除く)
  • げっ歯目の死体

 これらの動物の輸入規制は、感染症予防法に規定されています。

 イタチアナグマ、コウモリ、サル、タヌキ、ハクビシン、プレーリードッグ及びヤワゲネズミは、特別の理由がある場合を除いて輸入が禁止されています(感染症予防法第54条及び同施行令第十三条)。

ウサギの輸出入

 ウサギの輸出入の手続は、動物検疫所に対して行います。輸出検査・輸入検査の申請は、書面又はオンラインで行います。

ウサギの輸出

  1.  相手国の輸入条件を調査します。届出で済む国もあれば、許可を必要とする国もあります。
  2.  係留検査開始の10日前までに輸出検査申請を行います。
  3.  出国前に動物検疫所において2泊3日の係留検査を受けて家畜の伝染性疾病の病原体の有無を調査します。

 係留検査中のウサギの飼養管理及び餌は、飼い主の負担になります。

ウサギの輸入

  1.  係留検査開始の10日前までに輸出検査申請を行います。
  2.  日本へ向かって出国する前10日以内に輸出国政府機関による衛生証明書を入手します。
  3.  日本到着後に動物検疫所において2泊3日の係留検査を受けます。

 輸出国政府機関による証明書には、伝染性疾病(野兎病、兎出血病、兎粘液腫)の病原体をひろげるおそれのない旨の記載が必要です。
 係留検査中のウサギの飼養管理及び餌は、飼い主の負担になります。

ハムスターやモルモット等のげっ歯目動物の輸出

 ハムスターやモルモット等は、げっ歯目動物といいます。げっ歯目動物は、日本から連れて行くことはできますが、日本に連れて帰ることはできない動物です。

げっ歯目動物の輸出

  1.  相手国の輸入条件を調査します。届出で済む国もあれば、許可を必要とする国もあります。
  2.  相手国が日本政府機関による衛生証明書を求めている場合には動物検疫所において輸出検査を受けます。

 個人がハムスターやモルモット等のげっ歯目動物を日本に連れて帰ることはできませんが、事業者が販売用にげっ歯目動物を輸入することは可能です。その場合には、げっ歯目動物は、輸出国政府の指定を受けている、7種類の対象感染症が発生していない保管施設に出生以来保管されており、日本への出発時に狂犬病の症状がない動物でなくてはなりません。(輸出国政府が認定する衛生管理された施設で飼育されているげっ歯目動物を日本に輸入することは可能です)

 7種類の対象感染症は、ペスト、狂犬病、エムポックス、腎症候性出血熱、ハンタウイルス肺症候群、野兎病及びレプトスピラ症です。

その他の陸生哺乳類の輸出入

フェレットの輸出

  1.  相手国の輸入条件を調査します。届出で済む国もあれば、許可を必要とする国もあります。
  2.  相手国が日本政府機関による衛生証明書を求めている場合には動物検疫所において輸出検査を受けます。

 EU諸国及びイギリスでは犬猫と同じ様式の動物衛生証明書がフェレットについても使用されます。アメリカでは州毎にフェレットの海外からの持込みについて規制が存在します。

フェレットの輸入

 現在のところ日本は、フェレットの輸入に動物検疫の実施を求めていませんが、輸入の届出が必要です。

  1.  輸出国政府機関による衛生証明書を入手します。
  2.  輸入の届出書に必要事項を記入して完成させます。
  3.  動物が日本に到着したら輸出国政府機関による衛生証明書と輸入届出書を厚労省検疫所に提出します。
  4.  届出受理書が厚労省検疫所から交付されてはじめて輸入した動物を通関させることができます。

日本に輸入できるフェレットの要件

  • 日本への出発時に狂犬病の症状がないこと
  • 次のいずれかに該当すること
    • イ 狂犬病の発生していない地域として厚生労働大臣の指定する地域(以下「指定地域」という)で、過去6月間又は出生若しくは捕獲以来保管されていたこと
    • ロ 指定地域以外の地域で、過去12月間狂犬病が発生していない保管施設において、過去12月間又は出生以来保管されていたこと
    • ハ 指定地域以外の地域で、検疫施設(輸出国の政府機関の監督を受けて、他の動物との直接又は間接の接触のない状態で隔離された動物群について、必要な期間の観察、検査及び処置を行う施設をいう)において、過去6月間又は出生以来係留されていたこと
    • ニ 指定地域以外の地域から指定地域に輸入されたもので、当該輸入の際にロ又はハのいずれかに該当することが確認され、かつ、当該輸入以来指定地域で保管されていたこと

 輸出国政府機関による衛生証明書には、対象動物がこれらの要件を満たしていることが記載されていなければなりません。

ナキウサギの輸入

 ナキウサギはウサギ目の動物の動物ですが、その輸入は、動物検疫所に検査を申請するのではなく、厚生労働省検疫所に届け出て行います。

  1.  輸出国政府機関による衛生証明書を入手します。
  2.  輸入の届出書に必要事項を記入して完成させます。
  3.  動物が日本に到着したら輸出国政府機関による衛生証明書と輸入届出書を厚労省検疫所に提出します。
  4.  届出受理書が厚労省検疫所から交付されてはじめて輸入した動物を通関させることができます。
日本に輸入できるナキウサギの要件
  • 日本への出発時に狂犬病の症状がないこと
  • 次のいずれかに該当すること
    • イ 狂犬病の発生していない地域として厚生労働大臣の指定する地域(以下「指定地域」という)で、過去6月間又は出生若しくは捕獲以来保管されていたこと
    • ロ 指定地域以外の地域で、過去12月間狂犬病が発生していない保管施設において、過去12月間又は出生以来保管されていたこと
    • ハ 指定地域以外の地域で、検疫施設(輸出国の政府機関の監督を受けて、他の動物との直接又は間接の接触のない状態で隔離された動物群について、必要な期間の観察、検査及び処置を行う施設をいう)において、過去6月間又は出生以来係留されていたこと
    • ニ 指定地域以外の地域から指定地域に輸入されたもので、当該輸入の際にロ又はハのいずれかに該当することが確認され、かつ、当該輸入以来指定地域で保管されていたこと
  • 日本への出発時に野兎病の症状がないこと
  • 過去12月間野兎病が発生していない保管施設において、過去12月間又は出生以来保管されていたこと
  • マダニの駆除を受けたこと
  • 検疫施設において、過去15日間又は出生以来係留されていたこと

 輸出国政府機関による衛生証明書には、対象動物がこれらの要件を満たしていることが記載されていなければなりません。

家禽以外の鳥類の輸出入

家禽以外の鳥類の輸出

  1.  相手国の輸入条件を調査します。届出で済む国もあれば、許可を必要とする国もあります。
  2.  相手国が日本政府機関による衛生証明書を求めている場合には動物検疫所において輸出検査を受けます。

家禽以外の鳥類の輸入

 現在のところ日本は、家禽以外の鳥類の輸入に動物検疫の実施を求めていませんが、輸入の届出が必要です。

  1.  輸出国政府機関による衛生証明書を入手します。
  2.  輸入の届出書に必要事項を記入して完成させます。
  3.  動物が日本に到着したら輸出国政府機関による衛生証明書と輸入届出書を厚労省検疫所に提出します。
  4.  届出受理書が厚労省検疫所から交付されてはじめて輸入した動物を通関させることができます。
日本に輸入できる家禽以外の鳥類の要件
  • 輸出の際に、ウエストナイル熱並びに高病原性鳥インフルエンザ及び低病原性鳥インフルエンザの臨床症状を示していないこと
  • 出生以来飼養されていたものにあっては、日本国が加盟している国際機関(WOAH: World Organization for Animal Health)が高病原性鳥インフルエンザ及び低病原性鳥インフルエンザの発生していないとする地域のうち厚生労働大臣が指定する地域(「指定地域」)で、保管施設(蚊の侵入を防止するための措置が講じられているものに限る)において、過去21日間又は出生以来保管されていたこと
  • 出生以来飼養されていたもの以外のものにあっては、指定地域で、検疫施設(蚊の侵入を防止するための措置が講じられているものに限る)において、過去21日間又は出生以来係留されていたこと

 輸出国政府機関による衛生証明書には、対象動物がこれらの要件を満たしていることが記載されていなければなりません。

 狂犬病の発生していない地域として厚生労働大臣の指定する地域は次の通りです。

  1.  オーストラリア 
  2.  ニュージーランド
  3.  グアム
  4.  ハワイ
  5.  フィジー
  6.  アイスランド
  7.  アイルランド
  8.  英国(グレート・ブリテン及び北アイルランドに限る)
  9.  スウェーデン
  10.  ノルウェー(スヴァルバルト、ヤン・マイエン及び欧州外にある属領を除く)

 これらの指定地域は農林水産省動物検疫所が定める指定地域とは異なります。農林水産省動物検疫所が定める指定地域は、この表のオーストラリアからアイスランドまでになります。

 高病原性鳥インフルエンザ及び低病原性鳥インフルエンザの発生していない地域として厚生労働大臣の指定する地域は次の通りです。鳥類の指定地域一覧 |厚生労働省

水産動物の輸入

水産資源保護法に基づく規制

 輸入に際して水産資源保護法に基づいて輸入許可が必要とされる水産動物は以下のとおりです。

魚類サケ科魚類、コイ、フナ属魚類(きんぎょ等)、コクレン、ハクレン、アオウオ、ソウギョ、ナイルティラピア、マダイ
甲殻類クルマエビ科エビ類、サクラエビ科アキアミ属エビ類、テナガエビ科エビ類
貝類トコブシ、フクトコブシ、エゾアワビ、クロアワビ、マダカアワビ、メガイアワビ、マガキ属カキ類、ホタテガイ、マボヤ

 これらの水産動物の輸入に際して水産資源保護法に基づいて輸入許可が必要とされる場合は以下のとおりです。

  • 上記水産動物を生きた状態で輸入する場合(食用としてすぐに店頭で販売する場合を除く)
  • 上記水産動物を生きていない状態(加工物を含む)で養殖の用に供するものとして輸入する場合

 例えば、上記リストの水産動物を食用として生きた状態で輸入するが、市場に流通させるまで生け簀で生かしたまま保管する場合には輸入許可を申請しなくてはなりません。

衛生条件の合意国

 上記リストに記載される水産動物のうち、輸入できる水産動物は、輸出国と衛生条件が合意されている水産動物のみです。

 動物検疫所のホームページに記載されている衛生条件合意済みの輸出国と水産動物は以下のとおりです。

国名水産動物
シンガポール生きているフナ属魚類(きんぎょ等)、生きている甲殻類
タイ生きているフナ属魚類(きんぎょ等)、生きている甲殻類
インドネシア生きているフナ属魚類(きんぎょ等)
マレーシア生きているフナ属魚類(きんぎょ等)
中国生きているフナ属魚類(きんぎょ等)
香港生きているフナ属魚類(きんぎょ等)
韓国生きている甲殻類、養殖飼料用アキアミ属(生きていないもの)
米国生きている甲殻類、生きているサケ科魚類
カナダ生きているサケ科魚類
アイスランド生きているサケ科魚類
ノルウェー生きているサケ科魚類
生きているフナ属魚類(きんぎょ等)にはコイとの交雑種は含まれません。

リストにない水産動物の輸入

 リストにない水産動物を輸入する場合であっても輸入の前に動物検疫所と相談します。また、外来生物法やワシントン条約の対象となる生物ではないか確認します。

昆虫の輸入

 昆虫は作物に被害を与える有害動物である可能性があることから、植物防疫所によってその日本国内への移動を管理しています。

 植物防疫所は、コガネムシ、ハナムグリ、カナブン、タマムシ、カミキリムシ、ナナフシ、コノハムシ、チョウ・ガなどを含む昆虫類やオカヤドカリの生きたままでの日本への持ち込みを禁止しています。そのため、生きた昆虫類を日本に持ち込みたい場合は、その昆虫類が有害動物に該当するかどうかについて事前に植物防疫所に相談します。

 有害動物の種名は、植物防疫法施行規則の別表第一に記載されています。

 植物防疫所との相談により輸入できることになったときは、輸入時に税関検査の前に植物防疫所において輸入可能な昆虫類かどうか確認を受けます。

 次ページでは、家畜伝染病予防法、狂犬病予防法、感染症予防法、水産資源保護法、及び植物防疫法を除く、動物の輸出入に関係する法令を紹介します。

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