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肥料を生産、輸入、又は販売するには(肥料登録・届出制度)

ビジネス

 ウクライナとロシアの間で戦争が始まり、ロシアに対する国際的な経済制裁が発動してからしばらく経って、ロシアからの肥料の輸入が難しくなったために肥料の値段が高くなって困っているという報道がありました(実はロシアは世界で最大の肥料輸出国です)。その報道に接したときは肥料が足りないのならば色々な国から肥料を輸入したり国内で肥料を製造したりすればよいのではないかと思ったのですが、後になって肥料を生産・輸入して販売するには生産・輸入した肥料を登録する必要があることを知りました。これは「肥料の品質の確保等に関する法律」等によって規定される制度に基づいています。この制度を肥料制度と呼びます。

肥料の定義と肥料制度

肥料の定義

 学校教育の中で肥料には窒素、リン、及びカリが含まれると教わっていると思いますが、実際には植物はこれらの三種類の成分だけで生育するものではなく、その他の成分も必要とします。肥料制度では肥料を次のように定義しています。

  • 植物の栄養のために土壌に施用されるもの
  • 植物の栽培に役立つ化学的変化を土壌にもたらすために土壌に施用されるもの
  • 植物の栄養のために植物に施用されるもの

 肥料制度の対象となっている肥料成分は、窒素、りん酸(リン)、カリウム(カリ)、有効石灰、有効けい酸、有効苦土(マグネシウムのこと)、有効マンガン、有効ほう素、及び有効硫黄の9成分であり、肥料の保証票にはこれらの成分についての記載が認められます。肥料制度では、例えば、土壌をアルカリ性にするために使用する消石灰も肥料として規定されることになります。

肥料制度の概要

制度の目的

 肥料制度の目的は、肥料の登録に際して肥料に含まれている肥料成分及び肥料の品質を確保し、それにより肥料の公正な取引を促進することです。究極的には、品質が確保された肥料の公正な取引により農業生産力の維持増進を図り、それにより国民の健康の保護を図るとされています。このような制度が作られた理由としては、見た目で肥料の品質を判別することが難しいこと、及び肥料の製造段階で副生成物や有害物質が含まれてしまう可能性があることが挙げられます。

制度の構成

 肥料制度は、大きく登録・届出制度、表示制度、及び立入検査制度から構成され、登録・届出制度は事前の品質確認、表示制度は流通時の品質保証、立入検査制度は定期的な品質及び表示の検査を目的とするものです。

制度の適用

 肥料制度が対象とする事業者には肥料の生産事業者、輸入事業者、及び販売事業者が挙げられます。

肥料の分類

 肥料制度では肥料は普通肥料と特殊肥料に分類されます。特殊肥料には米ぬか、堆肥、発酵かす、及び干魚肥料などの一般の人がイメージする有機肥料、並びに鉱物や無機物に化学的加工を施さずに肥料としたもの、例えば含鉄物及び貝殻肥料が含まれます。複数種類の特殊肥料を混合したものも特殊肥料に含まれます。普通肥料は特殊肥料以外の肥料とされており、普通肥料には大きく13種類、細かくは140種類の規格が存在します。一般の人がイメージする化学肥料は普通肥料に含まれます。

普通肥料の大分類

  1. 窒素質肥料
  2. りん酸質肥料
  3. 加里質肥料(加里とはカリウムのこと)
  4. 有機質肥料
  5. 副産肥料等
  6. 複合肥料
  7. 石灰質肥料
  8. けい酸質肥料
  9. 苦土質肥料(苦土とはマグネシウムのこと)
  10. マンガン質肥料
  11. ほう素質肥料
  12. 微量要素複合肥料
  13. 汚泥肥料等

 以上の肥料に加えて指定混合肥料と呼ばれる肥料も肥料制度の対象です。指定混合肥料とは、普通肥料同士、普通肥料と特殊肥料、普通肥料と土壌改質資材、及び特殊肥料と土壌改質資材を混合して生産した肥料です。これらのうち、普通肥料同士を混合して生産した指定混合肥料は、指定配合肥料指定化成肥料に分類されます。

登録・届出制度の概要

 業として肥料を生産、輸入、又は販売する事業者は、農林水産大臣又は都道府県知事に登録申請又は届出を行います。農林水産大臣又は都道府県知事のどちらに対して登録申請又は届出のどちらを行うのかは、肥料の種類及び事業の形態によって異なります。大まかには以下の表のようになります。

事業者別肥料の登録申請先・届出先

事業者登録・届出の別普通肥料一部の普通肥料特殊肥料指定混合肥料一部の指定混合肥料
生産事業者登録大臣知事
届出知事大臣知事
輸入事業者登録大臣大臣
届出知事大臣大臣
販売事業者登録
届出知事知事知事知事知事

 業として普通肥料生産する事業者は農林水産大臣又は都道府県知事に登録申請を行い(農林水産大臣と都道府県知事のどちらに登録申請するかは肥料の種類によります)、輸入する者は農林水産大臣に登録申請を行います。届け出内容に変更があったとき、及び事業を廃止するときには農林水産大臣又は都道府県知事に対して届出を行います。

 肥料の登録には有効期間があり、肥料の種類などによって3年又は6年になっています。有効期間を延長したい事業者は更新申請をすることができます。

 業として特殊肥料生産又は輸入する事業者は、都道県知事に対して届出を行い、届け出内容に変更があったとき、及び事業を廃止するときも都道府県知事に対して届出を行います。

 行として肥料を販売する事業者は、都道県知事に対して届出を行い、届け出内容に変更があったとき、及び事業を廃止するときも都道府県知事に対して届出を行います。

表示制度の概要

 肥料の生産業者、輸入業者、及び販売業者は、公正な肥料の取引を促進するために肥料の容器に保証票の品質表示をしなくてはなりません。

普通肥料の場合

 肥料の生産業者が普通肥料を生産した場合、その生産業者はその肥料の容器に生産業者保証票の表示をします。

 肥料の輸入業者が普通肥料を輸入した場合、その輸入業者はその肥料の容器に輸入業者保証票の表示をします。

 肥料の販売業者が、普通肥料が入っている袋等を開いた場合、普通肥料を別の袋に入れ替えた場合、又は普通肥料を新たに袋詰めした場合、その販売業者はその肥料の容器に販売業者保証票の表示をします。

 普通肥料については保証票の表示に加えて、必要性に応じて肥料の施用上若しくは保管上の注意又は肥料の品質若しくは効能について表示することが義務付けられています。

指定混合肥料の場合

 肥料の生産業者、輸入業者、及び販売業者は、指定混合肥料についても普通肥料と同様に保証票の表示をします。

特殊肥料の場合

 特殊肥料のうち、堆肥、動物の排泄物、及び混合特殊肥料について品質表示基準が定められ、品質表示を行うことが義務付けられています。

保証票・事故肥料譲渡許可証・虚偽表示

 普通肥料及び指定混合肥料について、保証票が付されていない肥料の譲渡は禁止されています。ただし、輸出用、工業用、又は飼料用の肥料については保証票の添付は不要です。

 さらに、事故により変質又は異物混入した肥料(「事故肥料」といいます)についても保証票の添付は不要です。農林水産大臣の許可を得て事故肥料を譲渡する場合では「事故肥料譲渡許可証」を事故肥料に添付します。

 また、保証票の表示及び品質表示に関して虚偽の事項を表示することは禁止されています。この虚偽表示には虚偽の宣伝及び誤解を招く表示も含まれます。

立入検査制度の概要

農林水産大臣・都道府県知事の権能

 肥料の安全・品質の確保のため、又は肥料の公正な取引のため、農林水産大臣又は都道府県知事は、肥料の生産、輸入、運送・保管、施用、又は販売に関与する者から報告を徴収することができます(報告徴収)。

 農林水産大臣又は都道府県知事は、その職員に、肥料の生産、輸入、販売、輸送・保管、又は施用に関係がある場所に立ち入らせて帳簿書類等を検査させ、関係者に質問させ、又は肥料若しくはその原料を無償で収集させることができます(立入検査)。

記帳義務

 生産業者、輸入業者、及び販売業者は、報告徴収・立入検査に対処するためにそれぞれ事業所ごとに備え付け帳簿を用意し、記帳する義務を有します。帳簿については2年間の保存が義務付けられています。

 生産業者及び輸入業者は生産、輸入の業務を行う事業所ごとに帳簿を備え、肥料を生産又は輸入したときにその名称、数量、原料、その他の事項を記載します。

 さらに、生産業者、輸入業者、及び販売業者は、生産、輸入、販売の業務を行う事業所ごとに帳簿を備え、肥料を購入又は販売したときにその名称、数量、年月日、相手方の名称を記載します。

 ここまで肥料制度の概要を説明してきました。次のページでは特殊肥料の届出を詳しく説明します。

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