2026年4月1日以降、シンガポール・チャンギ国際空港における輸入検疫が変わります

家畜・畜産物等の輸出入と家畜伝染病予防法

ビジネス
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 家畜伝染病予防法は、家畜の伝染病(寄生虫病を含む)の発生予防及びまん延防止により、畜産の振興を図ることを目的とする法律であり、衛生管理を定めるだけではなく、家畜及び家畜に由来する製品の輸出入検疫並びに病原体の所持に関わる規定を含んでいます。

 本記事は、このような家畜伝染病予防法の規定のうち、家畜及び家畜に由来する製品の輸出入検疫に関係している規定を紹介するものです。

第一章 総則

<定義>

 家畜伝染病予防法において、「家畜伝染病」とは、次の表の左欄に掲げる伝染性疾病であり、右欄に掲げる家畜及び当該伝染性疾病ごとに政令で定めるその他の家畜についての病気をいいます(法第二条第一項)。

伝染性疾病の種類家畜の種類
牛疫牛、水牛、めん羊、山羊、鹿、豚、いのしし
牛肺疫牛、水牛、鹿
口蹄疫牛、水牛、めん羊、山羊、鹿、豚、いのしし
流行性脳炎牛、水牛、馬、めん羊、山羊、鹿、豚、いのしし
狂犬病牛、水牛、馬、めん羊、山羊、鹿、豚、いのしし
水疱性口内炎牛、水牛、馬、鹿、豚、いのしし
リフトバレー熱牛、水牛、めん羊、山羊、鹿
炭疽牛、水牛、馬、めん羊、山羊、鹿、豚、いのしし
出血性敗血症牛、水牛、めん羊、山羊、鹿、豚、いのしし
ブルセラ症牛、水牛、めん羊、山羊、鹿、豚、いのしし
結核牛、水牛、山羊、鹿
ヨーネ病牛、水牛、めん羊、山羊、鹿
ピロプラズマ症(農林水産省令で定める病原体によるものに限る)牛、水牛、馬、鹿
アナプラズマ症(農林水産省令で定める病原体によるものに限る)牛、水牛、鹿
伝達性海綿状脳症牛、水牛、めん羊、山羊、鹿
鼻疽
馬伝染性貧血
アフリカ馬疫
小反芻獣疫めん羊、山羊、鹿
豚熱豚、いのしし
アフリカ豚熱豚、いのしし
豚水疱症豚、いのしし
家きんコレラ鶏、あひる、うずら、七面鳥
高病原性鳥インフルエンザ鶏、あひる、うずら、きじ、エミュー、だちよう、ほろほろ鳥、七面鳥
低病原性鳥インフルエンザ鶏、あひる、うずら、きじ、エミュー、だちよう、ほろほろ鳥、七面鳥
ニューカッスル病(病原性が高いものとして農林水産省令で定めるものに限る)鶏、あひる、うずら、七面鳥
家きんサルモネラ症(農林水産省令で定める病原体によるものに限る)鶏、あひる、うずら、七面鳥
腐蛆病蜜蜂

 「患畜」とは、家畜伝染病(腐蛆病を除く。)にかかつている家畜をいい、「疑似患畜」とは、患畜である疑いがある家畜及び牛疫、牛肺疫、口蹄疫、狂犬病、豚熱、アフリカ豚熱、高病原性鳥インフルエンザ又は低病原性鳥インフルエンザの病原体に触れたため、又は触れた疑いがあるため、患畜となるおそれがある家畜をいいます(法第二条第二項)。

第四章 輸出入検疫等

輸入規制

 家畜伝染病予防法は、第三十六条において、輸入禁止されている物品を定めています。

(輸入禁止)
第三十六条 何人も、次に掲げる物を輸入してはならない。ただし、試験研究の用に供する場合その他特別の事情がある場合において、農林水産大臣の許可を受けたときは、この限りでない。
一 農林水産省令で定める地域から発送され、又はこれらの地域を経由した第三十七条第一項各号の物であつて農林水産大臣の指定するもの
二 次のイ又はロに掲げる家畜の伝染性疾病の病原体
イ 監視伝染病の病原体
ロ 家畜の伝染性疾病の病原体であつて既に知られているもの以外のもの
2 前項但書の許可を受けて輸入する場合には、同項の許可を受けたことを証明する書面を添えなければならない。
3 第一項但書の許可には、輸入の方法、輸入後の管理方法その他必要な条件を附することができる。

 法第三十六条第一項第一号及び第二号の物品は、農林水産大臣の許可を得た場合を除き、輸入できません。

 第一号における「第三十七条第一項各号の物」とは、次の物です。

第三十七条第一項各号の物

  1.  動物、その死体又は骨肉卵皮毛類及びこれらの容器包装
  2.  穀物のわら(飼料用以外の用途に供するものとして農林水産省令で定めるものを除く。)及び飼料用の乾草
  3.  前二号に掲げる物を除き、監視伝染病の病原体を拡散するおそれがある敷料その他これに準ずる物

 第一号の「農林水産省令で定める地域から発送され、又はこれらの地域を経由した第三十七条第一項各号の物であつて農林水産大臣の指定するもの」は、施行規則第四十三条の表にまとめられています。

 家畜の伝染性疾病の病原体のうち、第二号イの監視伝染病の病原体は、以下のページに見ることができます。

動物衛生研究部門:家畜の監視伝染病 | 農研機構

法第三十六条第一項但書の許可について(施行規則第四十四条)

  1.  法第三十六条第一項各号に掲げる物(以下「禁止品」)の輸入許可を受けようとする者は、農林水産大臣に様式第二十号による申請書を提出します。
  2.  農林水産大臣は、許可をしたときは、禁止品一個又は一頭当り一通ずつ様式第二十一号による輸入許可証明書を交付します。
  3.  申請者は、交付された輸入許可証明書を発送人に送付し、当該禁止品に添付して、又は当該禁止品とともに、発送させます。

 法第三十六条第一項但書の許可には、輸入の方法、輸入後の管理方法その他必要な条件を附することができます(法第三十六条第三項)。

(病原体の輸入に関する届出)
第三十六条の二 家畜の伝染性疾病の病原体であつて既に知られているもののうち、監視伝染病の病原体以外のものを輸入しようとする者は、農林水産省令の定めるところにより、農林水産大臣に届け出なければならない。
2 農林水産大臣は、前項の規定により届け出なければならないこととされる家畜の伝染性疾病の病原体を公示するものとする。
3 第一項の規定は、第六十二条第一項の規定により指定された疾病の病原体について同項において準用する前条第一項の規定により同項ただし書の許可を受けて輸入する場合には、適用しない。

 第二項で規定される公示の対象である家畜の伝染性疾病の病原体は、下のページで見ることができます。

家畜の伝染性疾病の病原体であって既に知られているもののうち、監視伝染病の病原体以外のものを公示する件

 第一項の規定による届出は、様式第二十一号の二による書面により行います(施行規則第四十四条の二)。

 第三項に関し、法第六十二条第一項は、家畜伝染病予防法の適用範囲を拡張する規定であり、家畜の生産又は健康の維持に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、政令で、動物及び疾病の種類並びに地域を指定し、一年以内の期間を限り、家畜伝染病予防法中の複数の規定をこれらについて準用するとしています。

 法第六十二条第一項の規定により指定疾病となった伝染性疾病の病原体は、法第三十六条の二第一項の規定ではなく、法第三十六条但書の規定に基づいて輸入することができます(法第三十六条の二第三項)。

<家畜伝染病病原体の所持>

 家畜伝染病病原体の輸入者がそのまま所持者となる又はその輸入者から譲り受けて所持者となるものは、家畜伝染病予防法第五章の規定に則って当該病原体を管理する必要があります。

(輸入のための検査証明書の添付)
第三十七条 次に掲げる物であつて農林水産大臣の指定するもの(以下「指定検疫物」という。)は、輸出国の政府機関により発行され、かつ、その検疫の結果監視伝染病の病原体を拡散するおそれがないことを確かめ、又は信ずる旨を記載した検査証明書又はその写しを添付してあるものでなければ、輸入してはならない。
一 動物、その死体又は骨肉卵皮毛類及びこれらの容器包装
二 穀物のわら(飼料用以外の用途に供するものとして農林水産省令で定めるものを除く。)及び飼料用の乾草
三 前二号に掲げる物を除き、監視伝染病の病原体を拡散するおそれがある敷料その他これに準ずる物
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 動物検疫についての政府機関を有しない国から輸入する場合その他農林水産大臣の指定する場合
二 農林水産省令で定める国から輸入する指定検疫物について、前項の検査証明書又はその写しに記載されるべき事項が当該国の政府機関から電気通信回線を通じて動物検疫所の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。)に送信され、当該電子計算機に備えられたファイルに記録された場合

 第一項の「指定検疫物」の輸入には、輸出国政府機関発行の検査証明書又はその写しの添付が必要です。

 指定検疫物には次のものが挙げられます(施行規則第四十五条)。

  1.  次に掲げる動物及びその死体
    • イ 偶蹄てい類の動物及び馬
    • ロ 鶏、うずら、きじ、だちよう、ほろほろ鳥及び七面鳥並びにあひる、がちょうその他のかも目の鳥類(以下「かも類」という。)(これらの初生ひなであって、農林水産大臣が定める要件に該当し、かつ、家畜防疫官の指示に従いその輸入に係る港又は飛行場の区域外に移動しないでそのまま輸出されるものを除く。)
    • ハ 犬(農林水産大臣が定める要件に該当し、かつ、家畜防疫官の指示に従いその輸入に係る港又は飛行場の区域外に移動しないでそのまま輸出されるものを除く。)
    • ニ うさぎ(農林水産大臣が定める要件に該当し、かつ、家畜防疫官の指示に従いその輸入に係る港又は飛行場の区域外に移動しないでそのまま輸出されるものを除く。)
    • ホ 蜜蜂(農林水産大臣が定める要件に該当し、かつ、家畜防疫官の指示に従いその輸入に係る港又は飛行場の区域外に移動しないでそのまま輸出されるものを除く。)
  2.  鶏、うずら、きじ、だちよう、ほろほろ鳥、七面鳥及びかも類の
  3.  第一号の動物の骨、、脂肪、血液、皮、毛、羽、角、蹄てい、腱けん及び臓器
  4.  第一号の動物の生乳乳等(乳(生乳を除く。)、脱脂乳、クリーム、バター、チーズ、れん乳、粉乳その他乳を主要原料とする物をいい、外国から入港した船舶又は航空機に乗って来た者の携帯品として輸入するものを除く。)、精液、受精卵、未受精卵、ふん及び尿
  5.  第一号の動物の骨粉、肉粉、肉骨粉、血粉、皮粉、羽粉、蹄てい角粉及び臓器粉
  6.  第三号の物を原料とするソーセージハム及びベーコン
  7.  施行規則第四十三条の表法第三十七条第一項第二号に掲げる物の項の中欄に掲げる地域から発送され、又はこれらの地域を経由した穀物のわら(飼料用以外の用途に供するために加工し、又は調製したものを除く。)及び飼料用の乾草
  8.  法第三十六条第一項ただし書の許可を受けて輸入する物

 ただし、動物検疫についての政府機関を有しない国から輸入する場合その他農林水産大臣の指定する場合には、輸出国政府機関発行の検査証明書又はその写しの添付が除外されます(法第三十七条第二項第一号)。農林水産大臣の指定する場合とは、次の場合です(施行規則第四十六条第一項)。

  1.  法第三十七条第一項の検査証明書又はその写しの添付が特に困難であると認められる国から輸入する場合
  2.  指定検疫物のうち、当該指定検疫物につき法第三十七条第一項の検査証明書又はその写しに記載されるべき事項が記録され、かつ、輸出国の政府機関が作成したと認められる電磁的記録が作成されたものを輸入する場合
  3.  試験研究の用に供するための人又は動物の細胞に添加された血清を輸入する場合
  4.  農林水産大臣が指定する施設において試験研究の用に供するための指定検疫物(前号に規定する血清を除く。)を輸入する場合

 また、農林水産省令で定める国から輸入する指定検疫物について、法第三十七条第一項の検査証明書又はその写しに記載されるべき事項が当該国の政府機関から電気通信回線を通じて動物検疫所のコンピューターに送信され、当該コンピューターに備えられたファイルに記録された場合も検査証明書又はその写しの添付がされます(法第三十七条第二項)。この「農林水産省令で定める国」とは、現時点では、オーストラリアです(施行規則第四十六条第二項)。

家畜防疫官及び家畜防疫員(法第五十三条)

 家畜伝染病予防法に規定する事務に従事させるため、農林水産省には獣医師の中から任命される家畜防疫官を設置し、都道府県には獣医師の中から任命される家畜防疫員を設置します。ただし、特に必要があるときは家畜の伝染性疾病予防に関し学識経験のある獣医師以外の者を家畜防疫官又は家畜防疫員に任命することができます。

(輸入場所の制限)
第三十八条 指定検疫物は、農林水産省令で指定する港又は飛行場以外の場所で輸入してはならない。但し、第四十一条の規定により検査を受け、且つ、第四十四条の規定による輸入検疫証明書の交付を受けた物及び郵便物として輸入する物については、この限りでない。

 法第三十八条の農林水産省令で指定する港又は飛行場は、指定検疫物の種類ごとに指定されています(施行規則第四十七条)。

(動物の輸入に関する届出等)
第三十八条の二 指定検疫物たる動物で農林水産大臣の指定するものを輸入しようとする者は、農林水産省令で定めるところにより、当該動物の種類及び数量、輸入の時期及び場所その他農林水産省令で定める事項を動物検疫所に届け出なければならない。ただし、携帯品又は郵便物として輸入する場合その他農林水産省令で定める場合は、この限りでない。
2 動物検疫所長は、前項の規定による届出があつた場合において、第四十条第一項又は第四十一条の規定による検査を円滑に実施するため特に必要があると認めるときは、当該届出をした者に対し、当該届出に係る輸入の時期又は場所を変更すべきことを指示することができる。
(検疫信号)
第三十九条 省略

 第一項の指定検疫物たる動物で農林水産大臣の指定するものは、次の動物です(施行規則第四十七条の二)。

  1.  偶蹄てい類の動物及び馬
  2.  鶏、うずら、きじ、だちよう、ほろほろ鳥、七面鳥及びかも類
  3.  犬

 第一項の届出については、施行規則第四十七条の三において、その届出期間及び届出書の様式が定められています。

輸入物品の内容届出機関届出書の様式
偶蹄類の動物及び馬輸入物品を搭載する船・飛行機の到着予定日の120日前から90日前までの期間様式二十一号の三
鶏、うずら、きじ、だちよう、ほろほろ鳥、七面鳥及びかも類輸入物品を搭載する船・飛行機の到着予定日の70日前から40日前までの期間様式二十一号の三
輸入物品を搭載する船・飛行機の到着予定日の40日前まで様式二十一号の四

 届出書は、当該動物の種類及び数量、輸入の時期及び場所に加え、次の事項の記入を必要とします(施行規則第四十七条の四)。

  1.  荷受人及び荷送人の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
  2.  輸入しようとする動物の性、年齢及び生産地
  3.  輸入しようとする動物のとう載予定地、とう載予定年月日及びとう載予定船舶名又はとう載予定航空機名
  4.  その他参考となるべき事項

 指定検疫物としての動物を携帯品又は郵便物として輸入する場合その他農林水産省令で定める場合は、届出が必要でない場合もあります(法第三十八条の二但書)。この「農林水産省令で定める場合」は、法第三十六条第一項但書の許可を受けて輸入する場合です。

輸入検査

(輸入検査)
第四十条 指定検疫物を輸入した者は、遅滞なくその旨を動物検疫所に届け出て、その物につき、原状のままで、家畜防疫官から第三十六条及び第三十七条の規定の違反の有無並びに監視伝染病の病原体を拡散するおそれの有無についての検査を受けなければならない。ただし、既に第四十一条の規定により検査を受け、かつ、第四十四条の規定による輸入検疫証明書の交付を受けた物及び郵便物として輸入した物については、この限りでない。
2 家畜防疫官は、指定検疫物以外の物が監視伝染病の病原体により汚染し、又は汚染しているおそれがあるときは、輸入後遅滞なくその物(以下「要検査物」という。)につき、検査を行うことができる。
3 第一項の規定による検査は、動物検疫所又は第三十八条の規定により指定された港若しくは飛行場内の家畜防疫官が指定した場所で行う。ただし、特別の事由があるときは、農林水産大臣の指定するその他の場所で検査を行うことができる。
4 家畜防疫官は、監視伝染病の病原体の拡散を防止するため必要があるときは、第一項の検査を受ける者に対し指定検疫物を前項の場所に送致するための順路その他の方法を指示することができる。
5 家畜防疫官は、外国から入港した船舶又は航空機に乗つて来た者(第四十六条の二第一項において「入国者」という。)に対して、その携帯品(第一項若しくは第二項又は次条の検査を受けた物を除く。第四十六条の二第一項において同じ。)のうちに指定検疫物又は要検査物が含まれているかどうかを判断するため、必要な質問を行うとともに、必要な限度において、当該携帯品の検査を行うことができる。

第四十一条 家畜防疫官は、輸入される指定検疫物又は要検査物につき、船舶又は航空機内で輸入に先だつて検査を行うことができる。

 法第三十八条の二は、指定検疫物たる動物であって農林水産大臣が指定するものの輸入に際しての届出を規定しており、法第四十条は、当該動物以外の指定検疫物の輸入に際しての届出を規定しています。指定検疫物たる動物の輸入とそれ以外の指定検疫物の輸入においては、次の違いがあります。

指定検疫物たる動物であって農林水産大臣が指定するもの左欄の動物以外の指定検疫物
根拠規定法第三十八条の二法第四十条
届出書様式様式二十一号の三又は二十一号の四様式二十三号
届出時期到着予定日よりも前到着後

 指定検疫物(郵便物として輸送されたものを除く。)の輸入者は、様式第二十三号による輸入検査申請書を提出すると、家畜防疫官から検査の場所及び期日の通知を受けます(施行規則第四十九条)。

 家畜防疫官は、輸入された指定検疫物について、原状のまま、次の項目について検査を行います(法第四十条第一項)。

  • 輸入禁止の物品であるか否か(法第三十六条の規定の違反の有無)
  • 輸入のための検査証明書が添付されているか否か(法第三十七条の規定の違反の有無)
  • 監視伝染病の病原体を拡散するおそれの有無

 家畜防疫官は、輸入された指定検疫物以外の物が監視伝染病の病原体により汚染している場合又は汚染しているおそれがある場合にも、輸入後遅滞なくその物(以下「要検査物」)について検査を行うことができます(法第四十条第二項)。

 第二項の規定における要検査物としては、指定検疫物に含まれない動物ならびに指定検疫物の輸入に用いた容器・包装・梱包材が挙げられます。

 第一項の規定による検査は、原則として、動物検疫所又は第三十八条の規定により指定された港若しくは飛行場内の家畜防疫官が指定した場所で行われますが、特別の事由があるときは、農林水産大臣の指定するその他の場所で行われます(法第四十条第三項)。

 家畜防疫官は、監視伝染病の病原体の拡散を防止するため必要があるときは、第一項の検査を受ける者に対し指定検疫物を第三項の場所に送致するための順路その他の方法を指示することができます(法第四十条第四項)。

<検査のための係留期間>

 法第四十条第一項若しくは第二項の検査(輸入物の検査)又は法第四十五条の検査(輸出物の検査)は、輸入物/輸出物を所定の期間にわたって係留して行います(施行規則第五十条)。

<入国者に対する質問・検査>

 家畜防疫官は、外国からの入国者に対して、その携帯品のうちに指定検疫物又は要検査物が含まれているかどうかを判断するため、必要な質問を行うとともに、必要な限度において、当該携帯品の検査を行うことができます(法第四十条第五項)。

 法第四十条に規定する検査は、原則として、動物検疫所又は法第三十八条の規定により指定された港若しくは飛行場内において輸入後に行われますが、船舶又は飛行機内で輸入に先立って行われることもあり得ます(法第四十一条)。

(郵便物等としての輸入)
第四十二条 指定検疫物は、小形包装物及び小包郵便物以外の郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第三項に規定する信書便物(次項において「信書便物」という。)としては、輸入してはならない。
2 前項の規定に違反して輸入された指定検疫物を包有している郵便物又は信書便物を受け取つた者は、遅滞なく、その現品を添えてその旨を動物検疫所に届け出て家畜防疫官の検査を受けなければならない。

第四十三条 日本郵便株式会社は、通関手続が行われる事業所において、指定検疫物を包有し、又は包有している疑いのある小形包装物又は小包郵便物の送付を受けたときは、遅滞なく、その旨を動物検疫所に通知しなければならない。
2 家畜防疫官は、前項の通知があつたときは、同項の小形包装物又は小包郵便物の検査を行う。
3 家畜防疫官は、前項の検査を行うため必要があるときは、当該郵便物の受取人にその開示を求めることができる。
4 受取人が前項の開示を拒んだとき、又は受取人に開示を求めることができないときは、家畜防疫官は、日本郵便株式会社の職員の立会いの下に当該郵便物を開くことができる。
5 第二項の検査を受けていない小形包装物又は小包郵便物であつて指定検疫物を包有しているものを受け取つた者は、遅滞なく、その現品を添え、その旨を動物検疫所に届け出て家畜防疫官の検査を受けなければならない。

 指定検疫物は、小形包装物及び小包郵便物以外の郵便物又は信書便物(民間事業者が扱う信書便法上の郵便物のこと)の形態で輸入することはできません(法第四十二条第一項)。

 すなわち、通常の封書や信書便で指定検疫物を送らせることはできません。指定検疫物を郵便物として輸入する場合には、小型包装物や小包郵便物として輸入します。

 もし、指定検疫物を小形包装物及び小包郵便物以外の郵便物又は信書便物として輸入してしまった場合、その輸入者は、遅滞なく、その現品を添えて動物検疫所に届け出なければなりません(法第四十二条第二項)。

<郵便物の検査>

 指定検疫物が郵便によって輸入される場合、その指定検疫物は日本郵便株式会社の通関手続が行われる事業所に送付されることになります。

 日本郵便株式会社は、指定検疫物を包有し、又は包有している疑いのある小形包装物又は小包郵便物の送付を受けたときは、遅滞なく、その旨を動物検疫所に通知します(法第四十三条第一項)。

 日本郵便株式会社からこの通知があったときは、家畜防疫官は、その小形包装物又は小包郵便物の検査を行います(法第四十三条第二項)。家畜防疫官は、検査のため必要があるときは、その郵便物の受取人にその開示を求めることができ、特定の場合には日本郵便株式会社の職員の立会いの下に当該郵便物を開くこともできます(法第四十三条第三項及び第四項)。

 もし指定検疫物を包有している小形包装物又は小包郵便物が家畜防疫官による検査を受けずに名宛人に届けられた場合、受領者は、その郵便物を添え、遅滞なく、その旨を動物検疫所に届け出て、家畜防疫官の検査を受けなければなりません(法第四十三条第五項)。

(輸入検疫証明書の交付等)
第四十四条 家畜防疫官は、第四十条から第四十三条までの規定による検査の結果、指定検疫物が監視伝染病の病原体を拡散するおそれがないと認められるときは、農林水産省令の定めるところにより、輸入検疫証明書を交付し、かつ、指定検疫物にらく印、いれずみその他の標識を付さなければならない。
2 家畜防疫官は、第四十条第二項又は第四十一条の規定による検査を受けた要検査物について、輸入検疫証明書を請求されたときは、これを交付しなければならない。
3 家畜防疫官は、第四十六条第三項の規定による措置を講ずるときは、前二項の規定にかかわらず、輸入検疫証明書を交付しないことができる。

 法第四十条から法第四十三条までの規定による検査の結果、輸入物に問題がないと認められるときは、輸入検疫証明書が輸入者に交付されます。その輸入物が指定検疫物であるときには、その指定検疫物に烙印、入れ墨その他の標識が付されます(法第四十四条第一項及び第二項)。

 ただし、検査の対象が動物であり、検査中にその動物が新疾病にり患し又はり患している疑いがあると認められ、その結果として第四十六条第三項の規定に基づいて隔離その他の措置が講じられるときには、輸入検疫証明書は交付されないことがあります(法第四十四条第三項)。

 輸入した指定検疫物が販売の用に供するため又は営業上使用するために輸入した食品である場合には、その指定検疫物は家畜伝染病予防法の検査を受け、次に食品衛生法上の検査を受けます。

輸出検査

(輸出検査)
第四十五条 次に掲げる物を輸出しようとする者は、これにつき、あらかじめ、家畜防疫官の検査を受け、かつ、第三項の規定により輸出検疫証明書の交付を受けなければならない。
一 輸入国政府がその輸入に当たり、家畜の伝染性疾病の病原体を拡散するおそれの有無についての輸出国の検査証明を必要としている動物その他の物
二 第三十七条第一項各号に掲げる物であつて農林水産大臣が国際動物検疫上必要と認めて指定するもの
2 前項の検査については、第四十条第三項の規定を準用する。
3 家畜防疫官は、第一項の規定による検査の結果、その物が家畜の伝染性疾病の病原体を拡散するおそれがないと認められるときは、農林水産省令の定めるところにより、輸出検疫証明書を交付しなければならない。
4 家畜防疫官は、国際動物検疫上、必要があるときは、前項の規定による輸出検疫証明書の交付を受けた物について再検査を行うことができる。
5 家畜防疫官は、本邦から出国する者(第四十六条の二第二項において「出国者」という。)に対して、その携帯品(第一項又は前項の検査を受けた物を除く。同条第二項において同じ。)のうちに第一項各号に掲げる物が含まれているかどうかを判断するため、必要な質問を行うとともに、必要な限度において、当該携帯品の検査を行うことができる。

 次の各号に掲げる物を輸出しようとする者は、その物について家畜防疫官の検査を受け、輸出検疫証明書の交付を受ける必要があります(法第四十五条第一項)。

  1.  輸入国政府がその輸入に当たり、家畜の伝染性疾病の病原体を拡散するおそれの有無についての輸出国の検査証明を必要としている動物その他の物
  2.  法第三十七条第一項各号に掲げる物であって農林水産大臣が国際動物検疫上必要と認めて指定するもの

 この際に、輸出者は、様式第二十九号による輸出検査申請書を提出します(施行規則第五十二条)。

 法第四十五条第一項第二号の「法第三十七条第一項各号に掲げる物であって農林水産大臣が指定するもの」は、次の各号に掲げる物です(施行規則第五十三条)。

  1.  施行規則第四十五条第一号から第六号までに掲げる物(次に掲げる物を除く。)
    • イ 法第四十五条第一項第一号に掲げる物以外のもの
    • ロ 乳等(施行規則第四十五条第四号に掲げる物をいう。)のうち、外国へ出港する船舶又は航空機に乗ろうとする者の携帯品として輸出するもの
  2.  鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護管理法)第二条第一項に規定する鳥獣、その死体又は骨肉卵皮毛類及びこれらの容器包装

 施行規則第四十五条の各号に掲げる物のうち、法第四十五条第一項第一号に該当する物及び外国への出国者の携帯品として輸出される乳等(施行規則第四十五条第四号に掲げる物)は、法第四十五条第一項第二号の物から除外されます(施行規則第五十三条第一項第一号)。

 鳥獣保護管理法第二条第一項に規定する鳥獣とは鳥類又は哺乳類に属する野生動物のことをいい、これらの野生動物は法第四十五条第一項第二号の物に含まれます(施行規則第五十三条第一項第二号)。

 施行規則第五十三条第一項第一号において除外される物を規定しましたが、施行規則第四十五条第一号に掲げる動物、同条第二号に掲げる卵(ふ化を目的とするものに限る。)並びに同条第四号に掲げる精液、受精卵及び未受精卵は、法第四十五条第一項第二号の農林水産大臣の指定する物とされます(施行規則第五十三条第二項)。

 法第四十五条第一項の検査については、法第四十条第三項の規定が準用され、動物検疫所又は法第三十八条の規定により指定された港若しくは飛行場内の家畜防疫官が指定した場所において検査が行われます。ただし、特別の事由があるときは、農林水産大臣の指定するその他の場所で検査を行うことができます(法第四十五条第二項)。

<輸出検疫証明書の交付等>

 検査の結果、検査物がが家畜の伝染性疾病の病原体を拡散するおそれがないと認められるときは、様式第三十号による輸出検疫証明書が家畜防疫官から交付されます(法第四十五条第三項)。ただし、輸入国政府が様式第三十号と異なる様式の輸出検疫証明書を必要としている場合には、その様式が優先されます(施行規則第五十四条第一項)。

 書面による輸出検査証明書の代わりに電子データを交付することも可能です(施行規則第五十四条第三項)。

 国際動物検疫上、必要があるときは、前項の規定による輸出検疫証明書の交付を受けた物であっても、家畜防疫官による再検査を受けることがあります(法第四十五条第四項)。

<出国者に対する質問・検査>

 家畜防疫官は、日本から出国する者に対して、その携帯品(第一項及び第二項の規定による検査を受けた物を除く。)のうちに第一項各号に規定する物が含まれているかどうかを判断するため、必要な質問を行うとともに、必要な限度において、当該携帯品の検査を行うことができます(法第四十五条第五項)。

 輸出する家畜由来の製品が食品である場合には、家畜伝染病予防法に基づく家畜伝染病病原体等の検査に加え、輸出先国の添加物基準や食品工場等の施設基準に適合していることにも留意する必要があります。

検査に基づく処置等

(検査に基づく処置)
第四十六条 第四十条第一項若しくは第二項、第四十一条、第四十二条第二項、第四十三条第二項若しくは第五項又は前条第一項若しくは第四項の規定による検査において、その検査に係る物が家畜伝染病の病原体により汚染し、汚染しているおそれがあり、又は汚染するおそれがあると認められた場合における第六条第一項、第七条、第八条、第十四条から第十七条まで、第十八条から第二十一条まで、第二十三条から第二十五条まで、第二十六条、第二十九条及び第三十一条第一項並びに同条第三項において準用する第七条及び第八条の規定の適用については、これらの規定中「都道府県知事」(第十五条の場合にあつては「都道府県知事又は市町村長」)とあるのは「動物検疫所長」と、「家畜防疫員」とあるのは「家畜防疫官」と読み替えるものとする。
2 農林水産大臣は、前項の検査において、届出伝染病の病原体により汚染し、又は汚染しているおそれがあると認められた動物その他の物につき、農林水産省令の定めるところにより、その所有者に対し、これらを隔離し、若しくは消毒すべき旨を命じ、又は家畜防疫官に隔離、注射、薬浴、投薬若しくは消毒を行わせることができる。
3 農林水産大臣は、第一項の検査中にその検査に係る動物が新疾病にかかり、又はかかつている疑いがあると認められたときは、当該動物又はその敷料その他これに準ずる物につき、農林水産省令の定めるところにより、その所有者に対し、これらを隔離し、若しくは消毒すべき旨を命じ、又は家畜防疫官に隔離、注射、薬浴、投薬若しくは消毒を行わせることができる。ただし、当該新疾病が家畜の伝染性疾病でないと認められる場合は、この限りでない。
4 家畜防疫官は、第一項の検査の結果、その検査に係る物品の輸入又は輸出について第三十六条、第三十七条第一項、第三十八条、第四十条第一項、第四十二条第一項又は前条第一項の規定に違反している事実があると認めるときは、農林水産省令で定める基準に基づき、当該物品を廃棄することができる。

 以下の検査によって検査対象物が家畜伝染病の病原体により汚染し、汚染しているおそれがあり、又は汚染するおそれがあると認められた場合には、法第六条第一項、第七条、第八条、第十四条から第十七条まで、第十八条から第二十一条まで、第二十三条から第二十五条まで、第二十六条、第二十九条及び第三十一条第一項並びに同条第三項において準用する第七条及び第八条の規定を準用し、各措置が行われます(法第四十六条第一項)。

  • 指定検査物や要検査物の検査(法第四十条第一項若しくは第二項)
  • 船舶や航空機内で輸入に先だって行われる指定検査物や要検査物の検査(法第四十一条)
  • 指定検疫物を包有している郵便物や信書便物の検査(法第四十二条第二項)
  • 指定検疫物を包有している小形包装物や小包郵便物の検査(法第四十三条第二項若しくは第五項)
  • 輸出する動物その他の物の検査(法第四十五条第一項若しくは第四項)

 この場合において準用される各規程の内容は、次の通りです。

準用される家畜伝染病予防法の規定内容
第六条第一項特定の家畜伝染病の発生を予防するため必要がある場合における、家畜への注射、薬浴又は投薬の実施命令
第七条注射、薬浴若しくは投薬を受けた家畜へのその措置を行った旨のらく印、いれずみその他の標識の付与
第八条検査、注射、薬浴若しくは投薬を受けた家畜の所有者から請求があった場合のその措置を行った旨の証明書の交付
第十四条患畜若しくは疑似患畜の隔離、又は隔離を解かれた家畜若しくは患畜となるおそれがある家畜の移動制限
第十五条特定の家畜伝染病の患畜・疑似患畜の所在の場所とその他の場所との通行の制限又は遮断
第十六条特定の家畜伝染病の患畜・疑似患畜のと殺
第十七条特定の家畜伝染病のまん延を防止するため必要がある場合における、患畜・疑似患畜の殺処分
第十八条患畜、疑似患畜又は指定家畜(特定の家畜伝染病のまん延を防止するため必要がある場合において、動物検疫所長により殺処分指定された患畜以外の家畜)を殺処分するときの届出
第十九条と殺の場所・方法の指定
第二十条動物検疫所所長及び家畜防疫官による病性鑑定処分
第二十一条患畜、疑似患畜又は指定家畜の死体の焼却と埋却
第二十三条家畜伝染病の病原体により汚染された物の焼却、埋却と消毒
第二十四条埋却された患畜、疑似患畜若しくは指定家畜の死体又は家畜伝染病の病原体により汚染された物の発掘禁止
第二十五条患畜若しくは疑似患畜又はこれらの死体の所在した畜舎、船舶、車両その他施設及びその敷地(要消毒畜舎等)の消毒
第二十六条家畜伝染病の病原体により汚染し、又は汚染したおそれがある物品の所在した倉庫、船舶、車両その他施設及びその敷地(要消毒倉庫等)の消毒
第二十九条患畜、疑似患畜及び指定家畜へのらく印、いれずみその他の標識の付与
第三十一条第一項家畜伝染病のまん延を防止するため必要がある場合における、家畜の検査、注射、薬浴又は投薬の実施
第三十一条第三項第三十一条第一項の検査、注射、薬浴又は投薬の際に第七条及び第八条の規定を準用

 第一項の検査の結果、農林水産大臣は、次の場合に以下のような命令を発することができます。

  • 動物その他の物が届出伝染病の病原体により汚染し、又は汚染しているおそれがあると認められた場合(法第四十六条第二項)
    • その所有者に対し、当該動物その他の物について隔離若しくは消毒を実施するように命令、又は
    • 家畜防疫官に対し、当該動物その他の物について隔離、注射、薬浴、投薬若しくは消毒を実施するように命令
  • 検査対象の動物が新疾病にかかり、又はかかっている疑いがあると認められた場合(法第四十六条第三項)
    • その所有者に対し、当該動物又はその敷料その他これに準ずる物について隔離若しくは消毒を実施するように命令、又は
    • 家畜防疫官に対し、当該動物又はその敷料その他これに準ずる物について隔離、注射、薬浴、投薬若しくは消毒を実施するように命令

 第一項の検査の結果、その検査に係る物品の輸入又は輸出について輸入禁止の規定(法第三十六条)、輸入のための検査証明書添付の規定(第三十七条第一項)、輸入場所の制限の規定(第三十八条)、輸入検査の規定(第四十条第一項)、郵便物としての輸入の規定(第四十二条第一項)又は輸出検査の規定(第四十五条第一項)に違反している事実があると認めるときは、家畜防疫官は、当該物品を廃棄することができます(法第四十六条第四項)。

携帯品の処置

(入国者及び出国者に対する質問等)
第四十六条の二 家畜防疫官は、入国者に対して、その携帯品のうちに要消毒物品(監視伝染病が現に発生している地域において使用された物品であつて家畜防疫官がその消毒をすることが必要であると認めるものをいう。次項及び次条において同じ。)が含まれているかどうかを判断するため、必要な質問を行うとともに、必要な限度において、当該携帯品の検査を行うことができる。
2 家畜防疫官は、出国者に対して、その携帯品のうちに要消毒物品が含まれているかどうかを判断するため、必要な質問を行うとともに、必要な限度において、当該携帯品の検査を行うことができる。

(入国者及び出国者の携帯品の消毒)

第四十六条の三 家畜防疫官は、前条第一項又は第二項の規定による検査の結果、これらの検査に係る携帯品のうちに要消毒物品が含まれていたときは、必要な限度において、当該要消毒物品を消毒することができる。

 法第四十条及び第四十五条において、家畜防疫官は、入国者及び出国者の携帯品の検査を行えることが規定されています。入国者及び出国者の携帯品の中には消毒が必要な物品が含まれている可能性があります。

 法第四十六条の二において、「要消毒物品」は、監視伝染病が現に発生している地域において使用された物品であって家畜防疫官がその消毒をすることが必要であると認めるものと定められています。

 家畜防疫官は、入国者又は出国者に対して、その携帯品のうちに要消毒物品が含まれているか否か判断するため、質問をし、携帯品の検査を行うことができます(法第四十六条の二)。

 法第四十六条に規定する検査の結果、携帯品のうちに要消毒物品が含まれていたときは、家畜防疫官は、その携帯品を消毒することができます(法第四十六条の三)。

(協力の要請)
第四十六条の四 動物検疫所長は、この章の規定による事務を円滑に行うため必要があると認めるときは、船舶若しくは航空機の所有者若しくは長(長に代わつてその職務を行う者があるときは、その者)又は港若しくは飛行場の管理者(次項において「船舶の所有者等」という。)に対し、第四十六条の二第一項又は第二項の質問に関する書類の配布、検疫の手続に関する情報の提供その他必要な協力を求めることができる。
2 船舶の所有者等は、動物検疫所長から前項の規定による求めがあつたときは、その求めに応ずるよう努めなければならない。

 家畜伝染病予防法は、第四十六条の四において、船舶や飛行機の所有者や船長・機長又は港や飛行場の管理者に対し、利用者への検疫手続に関する情報の提供その他必要な協力を求めています。

第六章 雑則

(審査請求の制限)
第五十二条の三 第十四条第三項、第十六条第一項、第十九条、第二十条第二項、第二十一条第一項、第二十三条第一項、第二十五条第一項又は第二十六条第二項の規定による家畜防疫員の指示(第四十六条第一項又は第四十八条の規定により家畜防疫官が行うこれらの規定による指示を含む。)及び第十七条第一項、第十七条の二第五項又は第二十六条第一項の規定による都道府県知事の命令(第四十六条第一項の規定により動物検疫所長が行う第十七条第一項又は第二十六条第一項の規定による命令を含む。)については、審査請求をすることができない。

 法第四十六条第一項に規定する家畜防疫員又は動物検疫所長による指示又は命令は、審査請求することができません(法第五十二条の三)。

第七章 罰則

 家畜伝染病予防法には、家畜伝染病予防法の各規程に違反した場合の罰則が定められています。ここでは、それらの罰則のうち、家畜及び家畜に由来する製品の輸出入に関係する規定に違反した場合の罰則を紹介します。

違反内容条項罰則
(違反者)
罰則
(法人*)
第三十六条第一項第三十七条第一項第三十八条又は第四十五条第一項の規定に違反した法第六十三条第二号3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金5000万円以下の罰金
第三十六条第三項の規定(監視伝染病以外の伝染性疾病へ準用する場合を含む:第六十二条第一項)による輸入条件に違反した法第六十三条第四号3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金5000万円以下の罰金
第四十条第一項の規定(監視伝染病以外の伝染性疾病へ準用する場合を含む:第六十二条第一項)に違反して検査を受けず、又は検査を受けるに当たって不正行為をした法第六十三条第五号3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金5000万円以下の罰金
第三十六条の二の規定による届出をしないで、又は虚偽の届出をして、家畜の伝染性疾病の病原体であつて既に知られているもののうち、監視伝染病の病原体以外のものを輸入した法六十五条第三号1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金50万円以下の罰金
第四十条第四項の規定による指示に違反した法第六十八条第四号30万円以下の罰金30万円以下の罰金
第四十条第二項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した法第六十八条第十号30万円以下の罰金30万円以下の罰金
第四十条第五項第四十五条第五項、若しくは第四十六条第二項若しくは第三項の規定(監視伝染病以外の伝染性疾病へ準用する場合を含む:第六十二条第一項)による質問に対し陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をし、又はこれらの規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した法第六十八条第十一号30万円以下の罰金30万円以下の罰金
第四十二条第二項又は第四十三条第五項の規定(監視伝染病以外の伝染性疾病へ準用する場合を含む:第六十二条第一項)による検査を受けず、又は検査を受けるに当たつて不正行為をした法第六十八条第十二号30万円以下の罰金30万円以下の罰金
第四十六条第二項又は第三項の規定による命令に違反し、又はこれらの規定による隔離、注射、薬浴、投薬若しくは消毒を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき法第六十八条第十三号30万円以下の罰金30万円以下の罰金
第四十六条第四項(監視伝染病以外の伝染性疾病へ準用する場合を含む:第六十二条第一項)の規定による処分を拒み、妨げ、又は忌避したとき。法第六十八条第十四号30万円以下の罰金30万円以下の罰金
* 違反者が法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者である場合の当該法人又は人への罰則

 法第四十六条第一項において検査の結果準用すると定められている規定に違反した場合の罰則は、以下の通りです。

違反内容条項罰則
(違反者)
罰則
(法人*)
法第十六条第一項の規定に違反した法第六十三条第二号3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金5000万円以下の罰金
法第十七条第一項の規定に違反した法第六十三条第三号3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金5000万円以下の罰金
法第十四条第一項、第十六条第二項又は第二十一条第一項若しくは第三項に違反した法第六十五条第一号1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金50万円以下の罰金
法第六条第一項、第二十六条第一項又は第三十条第一項の規定による命令に違反した法第六十八条第一号30万円以下の罰金30万円以下の罰金
法第二十一条条第二項、第二十三条第一項、第二十四条、第二十五条第一項、第四項及び第六項又は第二十六条第四項及び第六項の規定に違反した法第六十八条第二号30万円以下の罰金30万円以下の罰金
法第十五条の規定による通行の制限又は遮断に違反した法第六十八条第三号30万円以下の罰金30万円以下の罰金
法十四条第二項若しくは第三項、第十九条又は第二十六条第二項の規定による指示に違反した法第六十八条第四号30万円以下の罰金30万円以下の罰金
法第十八条の規定による届出をしないで家畜を殺した法第六十八条第五号30万円以下の罰金30万円以下の罰金
法二十条第一項の規定による剖検又は殺処分を拒み、妨げ、又は忌避した法第六十八条第六号30万円以下の罰金30万円以下の罰金
法第二十九条の規定による標識を付することを拒み、妨げ、又は忌避した法第六十八条第七号30万円以下の罰金30万円以下の罰金
* 違反者が法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者である場合の当該法人又は人への罰則

まとめ

 本記事では、家畜伝染病予防法に基づく家畜・畜産物の輸出入規制について詳しく紹介しました。

 海外からの家畜伝染病の侵入を防ぐことは、国内農業の安全確保と食料安全保障の強化に直結します。国際貿易が拡大する現代において、家畜伝染病予防法は、輸出入管理や検疫体制を通じて、日本の畜産業を守る中核的な法律です。輸出入に関わる事業者や農業関係者にとって、今後の制度改正等の動向把握がますます重要になっています。

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