オランダは、酪農・畜産物を含む農産物の輸出額が世界第2位になるような農業国でもあり、フィリップスやASMLといった電機・半導体分野の先進企業を擁する工業国でもあります。この記事は、ペットの犬猫とオランダに入国するときに必要な書類と知っておきたい情報について、オランダ農業自然食料品質省食品消費者製品安全局(NVWA)のホームページで公開している情報を基に説明します。日本を出国するまでの手続きについては本ブログの記事「ペットと共に海外移住したいときの準備と手続き」をご覧ください。
ペットの犬猫とオランダへ入国するための要件と書類
ペットの要件
オランダ食品消費者製品安全局のホームページによると日本からオランダへ連れていくことができるペットの犬猫の要件は次のようになっています。オランダ入国の要件はEUが課す要件に準じています。下で示すペットの要件にはEUの要件を基に加筆した項目も含まれます。ここで日本から連れていくことができるペットの犬猫とは、生まれてからずっと日本国内に在住していた犬猫、又は日本出国の少なくとも6か月間を日本国内に在住していた犬猫を意味します。
- 一回の入国につき入国を認められるペットの数は最大で5頭である
- ISO11784規格又はISO11785規格のマイクロチップの装着が必要である
- ペットの週齢は狂犬病ワクチン接種前に12週齢以上である
- 狂犬病ワクチン(不活化ワクチン又は組換えワクチン)の接種がマイクロチップの装着後に必要である
- 狂犬病ワクチン接種からオランダ渡航までに21日間が経過していること
- 日本で出生してから日本国外へ出ることなく在住していたペットには狂犬病抗体価検査は不要である
以上より、日本の動物検疫所が日本出国に関してペットの犬猫に課している要件(2回の狂犬病予防接種と狂犬病抗体価検査)を満たしていれば、そのペットの犬猫はオランダ入国の要件を満たしているといえます。
必要書類
日本からオランダへペットを連れて行くときの必要書類には次の書類が挙げられます。
- 獣医健康証明書
獣医健康証明書はEU書式による証明書です。この健康証明書は、日本の動物検疫所での輸出検疫時に完成してもらいます。この健康証明書は、オランダ入国の10日以内に作成されることを要します。マイクロチップ証明書や狂犬病予防接種証明書も英文で用意しておくと日本帰国時の手続きのためにも役立つと思います。
オランダ入国時の手続き
オランダ入国のための手続きは次のとおりです。
- ペットは飼主と共にオランダに到着することを要する(代理人に運んでもらうことも可能ですが飼主のオランダ到着日の前後5日以内に代理人も到着すること等を要します)
- オランダ(スキポール空港)に到着したら税関(Goods Declaration)においてペットのマイクロチップと健康証明書を確認してもらう
以上がオランダ入国時の手続きになります。オランダに長期滞在する場合はペットの登録が必要になります。ペットの登録はオランダ国内の獣医師にご相談ください。
日本へ帰国するとき
ペットと一緒にオランダから日本に帰国するための日本側の検疫の手続きについてはこちらの記事をご覧ください。オランダ食品消費者製品安全局(NVWA)のホームページは、NVWAが健康証明書を公文書化すると説明しています。詳しいことは、オランダ国内の獣医師にご相談ください。依頼を受けた獣医師は、あなたのペットの健康診断書を作成した後、その健康診断書をNVWAに送付して公文書化してくれるでしょう。
イギリスへの経由地としてのオランダ
以前の記事「ペットの犬猫をイギリスへ連れていくための準備と手続き」において説明したように、イギリスはペットの犬猫を空路で直接イギリスに持ち込む手段を貨物便に限定しており、旅客便でペットを持ち込むことを禁止しています。そのため、ペットと一緒の旅客機でペットをイギリスへ持ち込みたい方は、フランスまで飛行機で移動し、そこからフェリー若しくは鉄道を利用して、又はオランダまで飛行機で移動し、そこからフェリーを利用してイギリスへ移動する必要があります。ここではオランダ経由でイギリスへ渡航する場合のルートについて考えてみたいと思います。
以下の説明は、スキポール空港に到着したところから始まります。
スキポール空港からアムステルダム又はロッテルダムまでの移動
スキポール空港には空港駅があり、スキポール空港駅からIntercityと呼ばれる列車でアムステルダム中央駅まで14~21分で、ロッテルダム中央駅まで28~51分で到着します。アムステルダム又はロッテルダム及びその近郊にイギリス行きのフェリーが発着する港があります。
フェリー港までの移動
まず、2024年7月の時点でのオランダとイギリスの間のフェリーの運航会社と発着地を確認します。
運行会社 | 出発地(オランダ) 出発時刻 | 到着地(イギリス) 到着時刻 | 所用時間 |
P&O ferries | ロッテルダム 21:00 | ハル 8:30 | 11時間30分 |
Stena Line | フック・オブ・ホランド 22:00 | ハリッジ 7:30 | 9時間30分 |
DFDS | アムステルダム 17:30 | ニューキャッスル 10:15 | 16時間45分 |
アムステルダムがオランダの首都であることは皆さんご存じでしょう。ロッテルダムはヨーロッパ最大の港湾都市です。フック・オブ・ホランド(Hoek van Hollandの英語名)はロッテルダムの近郊にあります。
DFDSを利用するなら例えばアムステルダム中央駅からアムステルダム港フェリーターミナルまで、Stena Lineを利用するなら例えばロッテルダム中央駅からフック・オブ・ホランド港フェリーターミナルまで、P&O ferriesを利用するなら例えばロッテルダム中央駅からロッテルダム港フェリーターミナルまでタクシーを利用した方がいいと考えます。日本からオランダに到着してアムステルダムやロッテルダムに宿泊して宿泊したホテルからタクシーを利用してもいいと考えます。
イギリス~オランダ間のフェリー
上に表に挙げた到着地のうち、ロンドンに一番近い到着地はハリッジになります。Stena Lineのフェリーにはケンネルが備え付けられている船もあります。中型~大型犬を連れて行く場合、航海中はケンネルを利用されるとよいでしょう。また、Stena Lineのフェリーには昼間に出港する便もありますが、ハリッジに到着する時刻が20:45であり、ハリッジ港のターミナルにある検疫所が開いている時刻であるかわからないため、上の表では22:00出発の便だけ載せています。
イギリスの到着港のターミナルで入国審査とペットの健康証明書のチェックを受けることになります。
エキノコックス駆虫薬の投与
イギリスに入国する全てのイヌは、イギリスに入国する24時間前~120時間前の間にエキノコックス駆虫薬を投与されることを要します。この駆虫薬は飲み薬です。そこで、エキノコックス駆虫薬の投与からイギリス入国までのモデルを考えてみました。このモデルでは成田からスキポールまでKLMを利用し、Stena Lineを利用してイギリスに渡ります。
日本時間 | オランダ夏時間 | イギリス夏時間 | ||
---|---|---|---|---|
Day 0 | 駆虫薬投与 | 11:00 | ||
Day 1 | 輸出検査 | |||
Day 2 | 成田出発 | 9:05 | ||
スキポール到着 | 2:15 | 19:15 | ||
Day 3 | 宿泊 | |||
フック・オブ・ホランド発 | 5:00 | 22:00 | ||
Day 4 | ハリッジ着 | 15:30 | 7:30 |
日本時間午前11時に駆虫薬投与を受け、その翌日に動物検疫所で輸出検査を受け、その次の日に成田から出発し、オランダに到着した次の日にフェリーに乗船してイギリスに入国するというスケジュールでは、輸出検査を受ける日に駆虫薬投与から24時間目が到来し、スキポールに行く飛行機の中で48時間目が到来し、オランダ宿泊中に72時間目が到来し、オランダからイギリスへのフェリーの中で96時間目が到来します。したがって、駆虫薬投与から120時間目が到来する前にイギリスに到着できることになります。冬時間の場合、上の表の到着時刻に1時間をプラスすることになります。
以上、ペットの犬猫をオランダへ長期滞在目的で連れて行くときの準備について、オランダ食品消費者製品安全局のホームページに記載されている情報を基に説明しました。オランダへの移住にペットを連れていきたいのだけれども自分で渡航準備の全てを行う時間がない、助けを必要としている、という方は行政書士渡邉光一事務所にご相談ください。