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医師法のポイント|医師の資格・処分・業務と病院・行政の役割を整理

医療等
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 日本の医療制度は、医療法と医師法・歯科医師法を中心に、複数の法律・制度が連動して構成されています。

【医療法】……医療機関(病院・診療所・医療法人)を規律
 └─ 施設基準、管理者、医療安全、地域医療構想、病床機能報告

【医師法・歯科医師法】……医師個人の資格・義務・処分を規律
 └─ 免許、医籍登録、応召義務、異状死体届出、医師処分

【医療提供体制】……医療法+医師法・歯科医師法+地域医療計画+診療報酬
 └─ 地域医療構想、救急医療、災害医療、周産期医療、在宅医療

 本記事は、医師個人の資格・権利・義務を定める法律である医師法の規定を紹介します。

第一部:医師法の基本理念

医師の役割(法第一条):医療及び保健指導を担当して公衆衛生の向上・増進に寄与し、国民の健康な生活を確保すること。

関係者の役割分担と協力(法第一条の二):

  • 公衆衛生の向上・増進及び国民の健康な生活を確保のため、次の者は、医師の資質の向上を目的とする役割分担・協力に努力します。
    • 都道府県
    • 病院・診療所の管理者
    • 大学
    • 医学医術に関する学術団体
    • 診療に関する学識経験者団体その他の関係者

第二部:医師を対象とする規定

免許関係

資格要件

  • 医師国家試験合格者は、厚生労働大臣の免許を受けられる(法第二条)。
  • 未成年者には免許は与えられない(法第三条)。
  • 次の各号のいずれかに該当する者には、免許が与えられないことがある(法第四条)。
    • 一 心身の障害により医師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定める者
    • 二 麻薬、大麻又はあへんの中毒者
    • 三 罰金以上の刑に処せられた者
    • 四 前号に該当する者以外に、医事に関する犯罪又は不正行為を起こした者

施行規則第一条(法第四条関係)
 第一号の「厚生労働省令で定める者」は、「視覚、聴覚、音声機能若しくは言語機能又は精神の機能の障害により医師の業務を適正に行うにあたって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者」です。

施行規則第一条の二(法第四条関係)
 厚生労働大臣は、前条に規定する者に免許を与えるかどうかを決定するときは、その者が現に利用している障害を補う手段又は現に受けている治療等により障害が補われ、又は障害の程度が軽減している状況を考慮することになっています。

医籍への登録と免許証の交付

 医師国家試験の合格者は、医籍への登録を申請し、厚生労働大臣から免許を与えられ、医師免許証を交付されます(法第六条第一項・第二項)。

 免許を受けようとする者は、住所地の都道府県知事を経由して、必要書類を厚生労働大臣に提出します(施行令第三条)。

 医籍は厚生労働省に備えられており、医師の登録年月日、第七条第一項の規定による処分に関する事項その他の医師免許に関する事項が医籍に登録されます(法第五条)。

医籍の記載事項(施行令第四条)

  1.  登録番号及び登録年月日
  2.  本籍地都道府県名(日本の国籍を有しない者については、その国籍)、氏名、生年月日及び性別
  3.  医師国家試験合格の年月
  4.  法第七条第一項の規定による処分に関する事項
  5.  法第七条の二第二項に規定する再教育研修を修了した旨
  6.  法第十六条の六第一項に規定する臨床研修を修了した旨
  7.  医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第五条の二第一項の認定を受けた旨
  8.  その他厚生労働大臣の定める事項
  • 令第四条第八号の「その他厚生労働大臣の定める事項」は次の事項です(施行規則第二条)。
    • 1. 再免許の場合には、その旨
    • 2. 免許証を書換交付又は再交付した場合には、その旨並びにその事由及び年月日
    • 3. 登録の抹消をした場合には、その旨並びにその事由及び年月日

医籍登録情報の更新

 医師は、2年ごとに、自身に関する情報を厚生労働大臣に届け出なければなりません。届出を書面により行うときは、住所地の都道府県知事を経由して届出を行います。電子情報処理組織を使用して届出を行うときは、都道府県知事を経由する必要はありません(法第六条第三項)。

届出事項(厚生労働省令で定める2年ごとの年の12月31日現在における情報):

  • 氏名
  • 住所(医業に従事する者については、更にその場所)
  • その他厚生労働省令で定める事項(第二号書式に記載の事項:施行規則第六条第二項)

届出期日:翌年の1月15日

施行規則第六条(法第六条関係)
 第三項の「厚生労働省令で定める2年ごとの年」とは、昭和57年(1982年)を初年とする2年ごとの年です(第一項)。

医籍への登録・医師免許証に関する事務規定

登録事項の変更(施行令第五条)

 医師は、施行令第四条第二号の事項(本籍地都道府県名(日本の国籍を有しない者については、その国籍)、氏名、生年月日及び性別)に変更があったときは、30日以内に医籍の訂正を申請しなければなりません(第一項)。

具体的な手続:

  • 訂正事項に関する変更があったことを証明する書類を申請書に添えて、住所地の都道府県知事を介して厚生労働大臣に提出します(第二項)。

登録の抹消(施行令第六条)

 医師は、医籍の登録の抹消を申請するときは、住所地の都道府県知事を介して申請書を厚生労働大臣に提出します(第一項)。

 医師が死亡し、又は失踪宣告を受けたときは、死亡又は失踪の届出義務者は、30日以内に、医籍の登録の抹消を申請しなければなりません(第二項)。

「失踪宣告」とは
 ある人が行方不明となり、その行方不明者の生死が7年間明らかではない場合、又は戦争・海難事故・地震等が原因で行方不明となり、その行方不明者の生死が1年間明らかではない場合に、その行方不明者の利害関係人の申し立てを受け、家庭裁判所はその行方不明者について失踪宣告することができます。

登録抹消の制限(施行令第七条)

 罰金以上の刑に処せられたり、医事に関する犯罪・不正行為を行ったり、又は医師としての品位を損なう行為を行ったりした医師は、法第七条の規定により免許の取消し処分を受ける可能性があります。

 免許取消しの決定は法第七条に規定される手続を経て成されるため、処分に関する事項の医籍への記載を避けたい医師は、その手続の前に医籍の登録抹消を申請する可能性があります。

 そのため、施行令第七条は、このような場合に、厚生労働大臣は、当該処分に関する手続が完了するまでは、当該医師に関わる医籍の登録を抹消しないことができると定めています。

免許証の書換交付(施行令第八条)

 医師は、免許証の記載事項に変更が生じたときは、免許証の書換交付を申請することができます(第一項)。

具体的な手続:

 医師は、書換交付を申請するときは、申請書に免許証を添え、住所地の都道府県知事を介して厚生労働大臣に提出します(第二項)。

免許証の再交付(施行令第九条)

 医師は、免許証を失くしたり棄損したりしたときは、免許証の再交付を申請することができます(第一項)。

具体的な手続:

  • 住所地の都道府県知事を介して再交付の申請書を厚生労働大臣に提出します(第二項)。
  • 棄損した免許証の代わりを申請をする場合には、申請書にその棄損した免許証を添えます(第四項)。
  • 失した免許証が見つかったときは、5日以内に、住所地の都道府県知事を介して古い免許証を厚生労働大臣に返納します(第五項)。

免許証の返納(施行令第十条)

医籍の登録の抹消を申請するとき

 医師は、住所地の都道府県知事を介して免許証を厚生労働大臣に返納します。医師が死亡又は失踪した場合の届出義務者が医籍の抹消を申請する場合も同様です(第一項)。

免許の取消処分を受けたとき

 医師は、5日以内に、住所地の都道府県知事を介して免許証を厚生労働大臣に返納します(第二項)。


医師の処分(法第七条関係)

 医師が法第四条各号のいずれかに該当したり、医師としての品位を損なうような行為を行ったりしたときは、その医師は、次の処分を厚生労働大臣から受ける可能性があります(第一項)。

  • 1. 戒告
  • 2. 三年以内の医業の停止
  • 3. 免許の取消し

 免許の取消処分を受けた者であっても、その後の事情により再免許が与えられる場合があります。ただし、法第四条第三号若しくは第四号に該当し、又は医師としての品位を損なうような行為があったとして取消処分を受けた者については、取消処分の日から起算して5年が経過しなければ、再免許が与えられることはありません(第二項)。

行政処分の原因となる事案

 行政処分の原因となる事案が、次のように、医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方(平成27年9月30日現在)に掲げられています。

  1.  医師法・歯科医師法違反
  2.  保健師助産師看護師法その他の身分法違反
  3.  薬事法違反
  4.  麻薬及び向精神薬取締法違反・覚せい剤取締法違反・大麻取締法違反
  5.  殺人及び傷害
  6.  業務上過失致死傷(交通事犯)
  7.  業務上過失致死傷(医療過誤)
  8.  わいせつ行為等
  9.  贈収賄
  10.  詐欺・窃盗
  11.  文書偽造
  12.  税法違反
  13.  診療報酬の不正請求等
  14.  各指定医の指定取消等の処分理由となった行為

 第七条第三項から第十七項は、行政が行う医師処分の手続について定めています。

【行政による処分の流れ】

行政処分の手続概要】

戒告医業停止免許取消
決定権者厚生労働大臣厚生労働大臣厚生労働大臣
実務者都道府県知事、又は
医道審議会の委員
都道府県知事
必要な手続(ステップ1)医道審議会の意見聴取医道審議会の意見聴取医道審議会の意見聴取
(ステップ2)通知通知通知
(ステップ3)医師の弁明の聴取医師の弁明の聴取医師の意見の聴取
(ステップ4)聴取書・報告書の作成
意見書の作成
調書・報告書の作成
意見書の作成
(ステップ5)処分の決定処分の決定処分の決定

【行政処分の手続詳細】

ステップ1

 厚生労働大臣は、第一項又は第二項に規定する処分をするに当たっては、あらかじめ、医道審議会の意見を聴きます(第三項)。

ステップ2(意見の聴取の場合):

  • 厚生労働大臣は、第一項第三号に掲げる免許の取消処分をしようとするときは、都道府県知事に対し、当該処分に係る者に対する意見の聴取を行うことを求め、それをもって厚生労働大臣による聴聞に代えることができます(第四項)。
  • 前項の規定に基づく都道府県知事による意見の聴取には、行政手続法の規定を準用します(第五項)。
    • 都道府県知事は、意見の聴取を行うに当たり、聴取を行う期日までに相当な期間をおいて、取消処分の名宛人に対し、次の事項を書面により通知します。
      • 1. 第一項の規定を根拠として当該処分をしようとする旨及びその内容
      • 2. 当該処分の原因となる事実
      • 3. 意見の聴取の日時及び場所
      • 4. 意見聴取に関する事務を所掌する組織の名称及び所在地
    • 取消処分の名宛人は、意見の聴取が終結する時までの間、取消処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができます。
  • 厚生労働大臣は、都道府県知事から処分の原因となる事実を証明する書類その他意見の聴取を行う上で必要となる書類を求められた場合には、速やかにそれらを当該都道府県知事に送付します(第六項)。

ステップ2’(弁明の聴取の場合):

  • 厚生労働大臣は、第一項第二号に掲げる医業の停止の命令をしようとするときは、都道府県知事に対し、当該処分に係る者に対する弁明の聴取を行うことを求め、それをもって厚生労働大臣による弁明の機会の付与に代えることができます(第十項)。
  • 都道府県知事は、弁明の聴取を行うに当たり、弁明の聴取を行う日時までに相当な期間をおいて、当該処分に係る者に対し、次に掲げる事項を書面により通知します(第十一項)。
    • 1. 第一項の規定を根拠として当該処分をしようとする旨及びその内容
    • 2. 当該処分の原因となる事実
    • 3. 弁明の聴取の日時及び場所
  • 厚生労働大臣は、都道府県知事に代えて、医道審議会の委員に、当該処分に係る者に対する弁明の聴取を行わせることができます(第十二項)。

ステップ3

  • 意見の聴取の通知を受けた者は、意見の聴取の際に、意見陳述・反証提出することができ、代理人にそれを行わせることもできます(行政手続法第二十条)。
  • 弁明の聴取の通知を受けた者は、弁明の聴取の際に、意見陳述・反証提出することができ、代理人にそれを行わせることもできます(第十三項)。

ステップ4(意見の聴取の場合):

  1.  意見の聴取の主宰者は、意見の聴取の期日ごとに聴取の経過を記載した調書を作成し、意見の聴取の終結後速やかに報告書を作成して調書を添えて都道府県知事に提出します(行政手続法第二十四条)。
  2.  都道府県知事は、意見聴取の調書と報告書を保存し、当該調書と報告書の写しを厚生労働大臣に提出します。都道府県知事は、当該処分の決定についての意見があるときは、当該写しに加えて当該意見を記載した意見書を提出します(第七項)。
  3.  厚生労働大臣は、意見の聴取の終結後に生じた事情に鑑み必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、提出済みの調書及び報告書の写し並びに意見書を返戻して主宰者に意見の聴取の再開を命ずるよう求めることができます(第八項)。

ステップ4’(弁明の聴取の場合):

  1.  都道府県知事又は医道審議会の委員は、弁明の聴取を行ったときは、聴取書を作り、これを保存するとともに、報告書を作成し、厚生労働大臣に提出します。都道府県知事又は医道審議会の委員は、当該処分の決定についての意見があるときは、当該意見を報告書に記載します(第十四項)。
  2.  意見の聴取の場合と異なり、医師法には厚生労働大臣が弁明の聴取の再開を命ずる規定はありません。

ステップ5

  • 厚生労働大臣は、第七項の規定により提出された意見書並びに調書及び報告書の写しの内容を十分参酌して免許の取消処分の決定をします(第九項)。
  • 医師法には明記されていませんが、厚生労働大臣は、第十四項の規定により提出された意見書並びに聴取書及び報告書の写しの内容を十分参酌して医業の停止処分の決定をします

 医師に対して戒告処分を行う場合には、医師法に定められているその手続は、医道審議会の意見聴取のみです。それ故、医師の戒告処分の手続は、行政手続法の枠組みで行われると理解されます。

再教育研修(法第七条の二)

  • 次の者は、厚生労働省令で定める「再教育研修」を受けるよう、厚生労働大臣から命ぜられる可能性があります(第一項)。
    • 第七条第一項の規定により戒告(第一号)処分を受けた医師
    • 第七条第一項の規定により医業停止(第二号)処分を受けた医師
    • 第七条第二項の規定により再免許を受けようとする者

 再教育研修の内容は、施行規則第七条に定められています。

再教育研修に関する事務規定

 再教育研修の修了者は、再教育研修を修了した旨の医籍への登録を申請し、厚生労働大臣から再教育研修修了登録証を交付されます(第二項・第三項)。

立入検査等(法第七条の三)

  • 厚生労働大臣は、医師について第七条第一項の規定による処分をすべきか否かを調査する必要があると認めるときは、次の措置を講じることができます(第一項)。
    • 当該事案の関係者・参考人から意見や報告の徴収
    • 診療録その他の物件の提出命令
    • 職員による当該事案に関係のある病院その他の場所への立ち入り及び診療録その他の物件の検査
  • 前項の規定により立入検査をしようとする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求に応じてこれを提示します(第二項)。
  • 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものではありません(第三項)。

再教育研修(法第七条の二関係)

 法第七条の二に定める再教育研修の詳細は、医師法施行規則で規定されています。

法第七条の二第一項の厚生労働省令で定める研修(施行規則第七条)

  • 法第七条の二第一項の厚生労働省令で定める研修は、次の研修です。
    • 1. 倫理研修(医師としての倫理の保持に関する研修)
    • 2. 技術研修(医師としての知識及び技能に関する研修)

 これらの研修が厚生労働大臣によって行われる場合(団体研修の場合)のその受講料は、再教育研修を受けることになった事由によって異なります(施行規則第八条)。

 再教育研修を受けようとする者は、厚生労働大臣主催の団体研修を受講するか、又は団体研修及び厚生労働大臣から命ぜられた個別研修を受講します。

再教育研修の対象再教育研修の形態
戒告処分を受けた医師団体研修
1年未満の医業停止処分を受けた医師団体研修+課題学習
1年以上の医業停止処分を受けた医師
再免許を受けようとする者
団体研修+個別研修

 施行規則第九条・第十条は、この「個別研修」について定めています。

再教育研修(個別研修)の流れ:

<研修命令から研修修了まで>

個別研修計画書(施行規則第九条)

(再教育研修受講者の役割)

 倫理研修又は技術研修(団体研修を除く「個別研修」)に係る法第七条の二第一項の命令(「再教育研修命令」)を受けた者は、個別研修を開始しようとする日の30日前までに、次の事項を記載した個別研修計画書を作成し、厚生労働大臣に提出します(第一項)。

  • 1. 氏名、生年月日並びに医籍の登録番号及び登録年月日(法第七条第二項の規定により再免許を受けようとする者は、氏名及び生年月日)
  • 2. 個別研修の内容
  • 3. 個別研修の実施期間
  • 4. 助言指導者(個別研修に係る再教育研修命令を受けた者に対して助言、指導等を行う役割を有する、厚生労働大臣が指名した者)の氏名
  • 5. その他必要な事項

(助言指導者の役割)

 助言指導者は、個別研修計画書の作成に協力し(第二項)、その内容が適切であることを確認して署名します(第三項)。厚生労働大臣には助言指導者が署名した個別研修計画書を提出します(第三項)。

(厚生労働大臣の役割)

 厚生労働大臣は、再教育研修を適正に実施するために必要と認める場合には、個別研修計画書の記載事項を変更するよう命じることができます(第四項)。

個別研修修了報告書(施行規則第十条)

(再教育研修受講者の役割)

 個別研修に係る再教育研修命令を受けた者は、個別研修修了後、速やかに、次の事項を記載した個別研修修了報告書を作成し、厚生労働大臣に提出します(第一項)。

  • 1. 氏名、生年月日並びに医籍の登録番号及び登録年月日(法第七条第二項の規定により再免許を受けようとする者は、氏名及び生年月日)
  • 2. 個別研修の内容
  • 3. 個別研修を開始し、及び修了した年月日
  • 4. 助言指導者の氏名
  • 5. その他必要な事項

(助言指導者の役割)

 助言指導者は、再教育研修命令を受けた者が当該個別研修を修了したことを確認して署名します(第三項)。厚生労働大臣には、個別研修計画書の写しを添えて、助言指導者が署名した個別研修修了報告書を提出します(第二項・第三項)。

(厚生労働大臣の役割)

 厚生労働大臣は、個別研修修了報告書の提出を受けて、再教育研修命令を受けた者が個別研修を修了したと認めるときは、個別研修修了証を交付します(第四項)。

<研修修了後>

再教育研修を修了した旨の登録の申請(施行規則第十条の二)

 法第七条の二第二項の規定による再教育研修を修了した旨の医籍への登録を受けようとする者は、第二号の二書式による申請書に医師免許証の写しを添え、これを厚生労働大臣に提出します(第一項)。

  第二項・第三項の説明は、省略します。

再教育研修修了登録証の書換交付申請(施行規則第十条の三)

 再教育研修を修了した旨の登録を受けた医師(「再教育研修修了登録医師」)は、再教育研修修了登録証の記載事項に変更が生じたときは、再教育研修修了登録証の書換交付を申請することができます(第一項)。

  第二項・第三項の説明は、省略します。

再教育研修修了登録証の再交付申請(施行規則第十条の四)

 再教育研修修了登録医師は、再教育研修修了登録証を失くしたり棄損したりしたときは、再教育研修修了登録証の再交付を申請することができます(第一項)。

具体的な手続:

  • 第二号の四書式による申請書に医師免許証の写しを添え、厚生労働大臣に提出します(第二項)。
  • 棄損した再教育研修修了登録証の代わりを申請をする場合には、申請書にその棄損した再教育研修修了登録証及び医師免許証の写しを添えます(第四項)。
  • 失くした再教育研修修了登録証が見つかったときは、5日以内に、古い再教育研修修了登録証を厚生労働大臣に返納します(第五項)。

研修関係

臨床研修関係

臨床研修(法第十六条の二)

 診療に従事しようとする医師は、2年以上、都道府県知事の指定する病院又は外国の病院で厚生労働大臣の指定するものにおいて、臨床研修を受けなければなりません(第一項)。

 実際には、医師国家試験合格後に医師免許の交付を受けた医師が臨床研修を受けます。

研修医の努力要請(法第十六条の五)

 臨床研修を受けている医師は、臨床研修に専念し、その資質の向上を図るように努めなければなりません。

臨床研修の修了(法第十六条の六)

 臨床研修を修了した医師は、その申請により、厚生労働大臣によって、臨床研修を修了した旨を医籍に登録され(第一項)、臨床研修修了登録証を交付されます(第二項)。

業務関係

非医師による医業の禁止(法第十七条)

 医師でない者は、医業をしてはならない。

医業の禁止の例外(法第十七条の二)

 大学において医学を専攻する学生は、共用試験に合格すると、前条の規定にかかわらず、その大学が行う臨床実習において、医師の指導監督の下に、医師として有すべき知識・技能の修得のために医業(政令で定めるものを除く)を実施することができます。

 法第十七条の二の「政令で定めるもの」は、処方箋の交付です(施行令第十三条)。

医学生の守秘義務(法第十七条の三)

 法第十七条の二の規定により医業をする者(共用試験に合格した医学生)は、正当な理由がある場合を除き、その業務上知り得た人の秘密を他に漏らしてはなりません。同条の規定により医業をする者でなくなつた後においても、同様です。

 医師の守秘義務は、刑法134条に規定されています。

名称独占(法第十八条)

 医師でない者は、医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。

応召義務・診断書等交付義務(法第十九条)

 診療に従事する医師は、患者から診療の求めがあったときは、正当な事由がなければ、これを拒んではなりません(第一項)。

 診療、検案、又は出産立会をした医師は、診断書、検案書、又は出生証明書若しくは死産証書の交付の請求があったときは、正当な事由がなければ、これを拒んではなりません(第二項)。

無診察診療等の禁止(法第二十条)

 医師は、自ら診察しないで治療する若しくは診断書・処方箋を交付すること、自ら出産に立ち会わずに出生証明書・死産証書を交付すること、又は自ら検案をしないで検案書を交付することをしてはなりません。

 ただし、診療中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書についてはこの限りではない。

異状死体等届出義務(法第二十一条)

 医師は、死体又は妊娠4月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければなりません。

 堕胎の禁止は、刑法214条に規定されています。

処方箋交付義務(法第二十二条)

 医師は、患者に対して治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合に、処方箋を交付しなければなりません(第一項)。

 ただし、患者又はその看護に当たっている者が処方箋の交付を必要としない旨を申し出た場合又は次の各号のいずれかに該当する場合には、この限りではありません。

  1.  暗示的効果を期待する場合において、処方箋を交付することがその目的の達成を妨げるおそれがある場合
  2.  処方箋を交付することが診療又は疾病の予後について患者に不安を与え、その疾病の治療を困難にするおそれがある場合
  3.  病状の短時間ごとの変化に即応して薬剤を投与する場合
  4.  診断又は治療方法の決定していない場合
  5.  治療上必要な応急の措置として薬剤を投与する場合
  6.  安静を要する患者以外に薬剤の交付を受けることができる者がいない場合
  7.  覚醒剤を投与する場合
  8.  薬剤師が乗り組んでいない船舶内において薬剤を投与する場合

 医師は、地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律第十二条の二第一項の規定により処方箋を提供した場合には、患者又はその看護に当たっている者に処方箋を交付したものとみなされます(第二項)。

療養指導義務(法第二十三条)

 医師は、診療をしたときは、本人又はその保護者に対し、療養の方法その他保健の向上に必要な事項の指導をしなければなりません。

カルテ記載・保存義務(法第二十四条)

 医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければなりません(第一項)。

 医師が記載した診療録の保存期間は、5年です(第二項)。

厚生労働大臣の指示(法第二十四条の二)

 公衆衛生上、重大な危害が生じるおそれがある場合に、厚生労働大臣がその防止のため特に必要があると認めたときは、医師は医療又は保健指導に関して必要な指示を受ける可能性があります(第一項)。

 厚生労働大臣は、第一項の規定による指示をする際は、あらかじめ、医道審議会の意見を聴取します(第二項)。

第三部:病院・管理者を対象とする規定

研修関係

臨床研修関係

臨床研修(法第十六条の二)

 臨床研修を実施しようとする病院は、開設者が指定申請を行うことで、厚生労働大臣又は都道府県知事から臨床研修病院としての指定を受けることになります(第二項)。

 病院は、臨床研修病院の指定を受けるためには、次に掲げる基準を満たさなければなりません(第三項)。

臨床研修病院指定の基準

  • 1. 臨床研修を行うために必要な診療科を置いていること。
  • 2. 臨床研修の実施に関し必要な施設及び設備を有していること。
  • 3. 臨床研修の内容が、適切な診療科での研修の実施により、基本的な診療能力を身に付けることのできるものであること。
  • 4. 前三号に掲げるもののほか、臨床研修の実施に関する厚生労働省令で定める基準に適合するものであること。

臨床研修業務の適正な実施の確保(法第十六条の四)

 臨床研修病院の管理者又は開設者は、都道府県知事が臨床研修の業務の適正な実施のために必要であると認めるときは、その業務に関し報告を求められ、又は必要な指示を受ける可能性があります(第一項)。

 厚生労働大臣の指定する病院の管理者又は開設者は、厚生労働大臣が臨床研修の業務の適正な実施のために必要であると認めるときは、その業務に関し報告を求められ、又は必要な指示を受ける可能性があります(第二項)。

その他の研修関係

研修における関係者の役割分担と協力(法第十六条の九)

  • 次の者は、医師の研修の実施に当たり、医療提供体制(医療法第三十条の三第一項に規定する医療提供体制)の確保に与える影響に配慮して研修が行われるよう、役割分担・協力に努力します。
    • 都道府県
    • 病院・診療所の管理者
    • 大学
    • 医学医術に関する学術団体
    • 診療に関する学識経験者団体その他の関係者

医師の研修計画の策定(法第十六条の十)

 医学医術に関する学術団体その他の厚生労働省令で定める団体は、医師の研修計画の策定・変更をするときは、その計画に基づき研修を実施することにより医療提供体制の確保に重大な影響を与える場合として厚生労働省令で定める場合に限り、あらかじめ、厚生労働大臣の意見を聴かなければなりません(第一項)。

施行規則第十九条の三(法第十六条の十第一項関係)
 法第十六条の十第一項の「厚生労働省令で定める場合」は、次に掲げる場合です。
1. 施行規則第十九条の二第一号に掲げる団体が、医師の研修に関する計画(研修施設、研修を受ける医師の定員又は研修期間に関する事項が定められているものに限る。)を定め、又は変更する場合
2. 施行規則第十九条の二第二号から第十九号までに掲げる団体が、医師の研修に関する計画(研修施設、研修を受ける医師の定員又は研修期間に関する事項が定められているものであつて同条第一号に規定する団体の認定を受けるものに限る。)を定め、又は変更する場合

 第一項の厚生労働省令で定める団体は、同項の規定により厚生労働大臣の意見を聴取したときは、その意見を反映させるよう努めます(第五項)。

 第一項の厚生労働省令で定める団体は、施行規則第十九条の二に定められています。

第四部:行政を対象とする規定

研修関係

臨床研修関係

臨床研修(法第十六条の二)

 厚生労働大臣又は都道府県知事は、指定病院が臨床研修実施について不適当と認めるときは、臨床研修病院の指定を取り消します(第四項)。

 厚生労働大臣は、臨床研修病院の指定・指定取消しをするとき又は第三項第四号の厚生労働省令の制定・改廃の立案をするときは、医道審議会の意見を聴取します(第五項)。

 都道府県知事は、臨床研修病院の指定・指定取消しをするときは、地域医療対策協議会の意見を聴取します(第六項)。

 都道府県知事は、第六項の規定により地域医療対策協議会の意見を聴取したときは、その意見を反映させるよう努めます(第七項)。

研修医の定員(法第十六条の三)

 厚生労働大臣は、毎年度、医道審議会の意見を聴いた後に、都道府県ごとの研修医(都道府県知事の指定する臨床研修病院において臨床研修を受ける医師)の定員を定めます(第一項・第二項)。

 都道府県知事は、厚生労働大臣が定める都道府県ごとの研修医の定員の範囲内で、毎年度、その都道府県の区域内に所在する臨床研修病院ごとの研修医の定員を定めます(第三項)。その際に、都道府県知事は、医療法第五条の二第一項に規定する医師の確保を特に図るべき区域における医師の数の状況に配慮します(第四項)。

 都道府県知事は、第三項の規定により研修医の定員を定めようとするときは、地域医療対策協議会の意見を聴き、その意見を反映させるように努めて定員を定め、次にその内容について厚生労働大臣に通知して最終的に研修医の定員を定めます。

その他の研修関係

医師の研修計画の策定(法第十六条の十)

 厚生労働大臣は、第一項の団体を定める厚生労働省令の制定・改廃の立案をするときは、医道審議会の意見を聴取します(第二項)。

 厚生労働大臣は、第一項の規定により意見を述べるときは、関係都道府県知事の意見を聴取します(第三項)。

 都道府県知事は、第三項の規定により意見を述べるときは、地域医療対策協議会の意見を聴取します(第四項)。

必要な措置の実施要請(法第十六条の十一)

 厚生労働大臣は、医師が、長時間にわたる労働により健康を損なうことなく、医療に関する最新の知見・技能に関する研修を受けられるよう、その研修を行い、又は行おうとする医学医術に関する学術団体その他の厚生労働省令で定める団体に対し、当該研修の実施に関し、必要な措置の実施を要請することができます(第一項)。

 第一項の厚生労働省令で定める団体は、施行規則第十九条の二に定められています。

 厚生労働大臣は、第一項の団体を定める厚生労働省令の制定・改廃の立案をするときは、医道審議会の意見を聴取します(第二項)。

 第一項の厚生労働省令で定める団体は、厚生労働大臣から研修の実施に関し、必要な措置の実施を要請されたときは、その要請に応じるよう努力します(第三項)。

雑則関係

公表事項(法第三十条の二)

 厚生労働大臣は、医療を受ける者その他国民による医師の資格の確認及び医療に関する適切な選択に資するよう、医師の氏名その他の政令で定める事項を公表します。

 法第三十条の二の「政令で定める事項」は、次の通りです(施行令第十五条)。

  1.  医師の氏名及び性別
  2.  医籍の登録年月日
  3.  法第七条第一項第一号に掲げる処分に関する事項(当該処分を受けた医師であつて、法第七条の二第一項の規定による当該処分に係る再教育研修の命令を受け、当該再教育研修を修了していない者に係る処分に関する事項に限る。)
  4.  法第七条第一項第二号に掲げる処分であつて次のいずれかに該当するものに関する事項
    • イ 厚生労働大臣が定めた医業の停止の期間を経過していない医師に係る処分
    • ロ 当該処分を受けた医師であつて、法第七条の二第一項の規定による当該処分に係る再教育研修の命令を受け、当該再教育研修を修了していないものに係る処分

第五部:罰則

違反内容条項罰則
(違反者)
罰則
(法人*)
第十七条の規定に違反した第三十一条第一項第一号3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金**
虚偽又は不正の事実に基づいて医師免許を受けた第三十一条第一項第二号3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金**
医師又はこれに類似した名称を用いて第十七条の規定に違反した第三十一条第二項3年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金**
第七条第一項の規定により医業の停止を命ぜられたが、当該停止期間中に医業を行った第三十二条1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金**
第十七条の三の規定に違反して、業務上知り得た人の秘密を漏らした第三十三条の二6か月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金
(親告罪に当たる)
第六条第三項第十八条第二十条第二十一条第二十二条第一項又は第二十四条の規定に違反した第三十三条の三第一号50万円以下の罰金
第七条の二第一項の規定による命令に違反して再教育研修を受けなかった第三十三条の三第二号50万円以下の罰金
第七条の三第一項の規定による陳述をせず、報告をせず、若しくは虚偽の陳述若しくは報告をし、物件を提出せず、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した第三十三条の三第三号50万円以下の罰金法人:50万円以下の罰金
人:50万円以下の罰金
* 違反者が法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者である場合の当該法人又は人への罰則
** 拘禁刑と罰金が併科される場合あり

終わりに

 医師法は医療現場だけでなく、行政手続や資格管理にも深く関わる法律です。長い条文でしたが、読み進めると医師という専門職の責任と制度の仕組みが見えてきます。

 医師法は、医師という”個人資格者”の権利義務を定める法律です。一方で、医療機関の広告、施設基準、管理者の責務など“組織・施設”に関わる規制は医療法が担当します。 医療法制は複数の法律が役割分担して構成されているため、実務を理解するにはこれらを合わせて読む必要があります。

 引き続き、気になった法律を少しずつ取り上げていきます。

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