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(終活マガジン第14号)生前整理のポイント

終活・相続

 生前に整理するのは物だけではない

 生前整理というと物を整理することだと考えがちですが、整理が必要なのは物だけではありません。次のものの整理も検討してみてはどうでしょうか。

お金に関する整理

銀行口座の整理日常生活資金用と緊急資金用の2口座にまとめます
クレジットカードの整理使用頻度が低いカードを解約します
証券口座の整理所有証券を移管して利用する証券会社を一社にまとめます
定期購読(利用)の整理使用頻度が低いサブスクを解約します
通帳と印鑑の保管場所本人が亡くなったときに保管場所が相続人等にわかるようにします
保険証書等の保管場所本人が亡くなったときに保管場所が相続人等にわかるようにします
借金(借入金)の見える化借金の存在を生前から相続人等に伝えておきます

保険の見直し

 重い病気に備えて民間の医療保険に加入することはよくあることですが、年金受給年齢になり、子供も独立している方は医療保険を見直しされてみてはいかがでしょうか。医療費控除で所得税を安くしたり、高額な医療費に対しては国の高額療養費制度を利用することもできます。また、本人の葬式や相続に備えるために死亡保険を利用することが医療保険よりも大事になる年齢もやってきます。年齢に応じて保険の利用を見直すことが大事だと考えます。

年金に関する整理

 「年金に関する整理」というタイトルですが、年金制度理解の整理を意図したタイトルになっています。

「特別支給の老齢厚生年金」制度

 厚生年金の支給年齢が60歳から65歳に引き上げたことに対処するため、「特別支給の老齢厚生年金」制度を定めて厚生年金の支給年齢を段階的に引き上げることになりました。これにより、60歳~64歳までの間に最大で5年間にわたり「特別支給の老齢厚生年金」を受け取ることができるようになりました。受給資格を有している人は、1961年4月1日以前に生まれた男性、及び1996年4月1日以前に生まれた女性です。この制度の対象者には、受給開始年齢の3か月前に日本年金機構から年金請求書が届きます。この年金請求書と添付書類を年金事務所に提出して受給の手続きを行います。

在職老齢年金の年金減額ルール

 60歳の定年後も厚生年金に加入して働きながら年金をもらうことができます。この年金を「在職老齢年金」といいます。ただし、在職老齢年金と月収の合計額が一定額を超えると、超えた金額の半分が月々の年金の額から引かれます。この一定額は、2024年の時点では50万円になっています。

厚生年金の加給年金

 厚生年金の加入期間が20年以上の人について、生計を同じくする65歳未満の配偶者又は18歳に到達する年度の末日までの子又は1級若しくは2級の障害の状態にある20歳未満の子がいる場合に本人の老齢厚生年金に加給年金が加算されます。加給年金の加算は、配偶者や子が条件を満たさなくなると停止されます。例えば、配偶者が65歳未満であっても他の公的年金の支給を選択すると加算が停止されます。加算には年金事務所での手続きが必要です。

老齢基礎年金の振替加算

 上の加給年金の対象となっている配偶者が65歳になると加給年金が停止され、その代わりにその配偶者自身の老齢基礎年金に加算があります。これを「振替加算」といいます。加算には年金事務所での手続きが必要です。ただし、「振替加算」の対象者には制限があります。

  • 大正15年4月2日から昭和41年4月1日までの間に生まれていること
  • 受給対象になる配偶者が老齢基礎年金の外に厚生年金や共済年金を受給している場合、その厚生年金保険や共済組合等に加入していた期間が240か月未満であること
  • 受給対象になる配偶者が35歳以降に厚生年金保険に加入していた期間が一定の期間未満であること

離婚後の厚生年金の分割

 離婚するときには婚姻期間に発生した共有財産をどう分割するか決定します。厚生年金もこの共有財産に含まれます。厚生年金の分割には「合意分割」と「3号分割」の2方式があります。「合意分割」は、当事者の一方又は双方からの請求により、婚姻期間中に発生した厚生年金を双方の合意に基づいて分割します。「3号分割」は、国民年金の第3号被保険者であった方からの請求により、第3号被保険者だった期間に発生した厚生年金を2分の1の割合で分割します。「3号分割」には当事者双方の合意は不要です。分割には年金事務所での手続きが必要です。

遺族年金等

 死亡した人が自営業で国民年金の被保険者(第1号被保険者)であったなら「遺族基礎年金」が、死亡した人が元会社員・公務員で厚生年金又は共済年金の被保険者であったなら「遺族厚生年金(遺族共済年金)」が遺族に支払われます。受給には年金事務所での手続きが必要です。ここでは死亡した人が既に年金受給者であった場合について説明します。

 遺族基礎年金の受給対象者は、国民年金受給者の18歳に到達する年度の末日までの子又は1級若しくは2級の障害の状態にある20歳未満の子がいる配偶者、又はその子自身です。遺族基礎年金は子のいない配偶者には支給されず、子がいてもその子が規定の年齢に達すると支給停止になります。

 死亡した夫が国民年金の第1号被保険者として保険料を納付した期間及び納付免除されていた期間が10年以上であり、且つ、その夫が老齢基礎年金を受給したことがない場合、その夫と10年以上継続して婚姻関係にあり、死亡当時にその夫に生計を維持されていた妻は、その妻が60歳から65歳までの間、寡婦年金を受給することができます。

 国民年金保険料を36月以上納付した人が何の年金も受給せずに死亡した場合、その人の遺族は死亡一時金を受給することができます。

 遺族厚生年金の受給対象者は、厚生年金受給者によって生計を維持されていた遺族になります。遺族厚生年金は子の有無にかかわらず支給されます。遺族厚生年金の年金額は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額になります。死亡した人の配偶者が国民年金の第3号被保険者であった場合、遺族厚生年金の部分と自身の老齢基礎年金を受給することになります。

 死亡した人の配偶者も老齢厚生年金の受給権者である場合、「死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」と「死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の2分の1の額と自身の老齢厚生年金の2分の1の額の合計」を比較し、高い方が遺族厚生年金の額になります。

 死亡した夫の厚生年金保険の被保険者期間が20年以上であった場合、40歳以上65歳未満の妻であって、生計を同一にする子(18歳に到達する年度の末日まで)がいない妻、及び遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻であって、子が18歳に到達する年度の末日を経過した等のために遺族基礎年金を受け取れなくなった妻には中高齢寡婦加算があります。

 以上、特別なことが起きたときの年金に関する制度を説明してきましたが、年金事務所に詳しいことをお尋ねになってください。

 遺族が未支給の年金を受け取ったり、遺族年金等を請求できるようにするために、年金手帳の保管場所又は基礎年金番号が本人の死後に相続人等にわかるようにします。

子の扶養に入るかどうか検討する

 年金生活者が子の被扶養者になると、その年金生活者は自分で国民健康保険に加入せずに子の健康保険の被保険者になり、健康保険料が年金から天引きされなくなります。子は、親を被扶養者にすることにより所得税額と住民税額を減らすことができます。ただし、親を子の被扶養者にするには制限があります。

所得税法上の制限

  • 納税者と生計を一にすること(別居していても仕送りを受けていれば該当します)
  • 年間の合計所得金額が48万円以下であること(年金型退職金は所得に該当します。給与のみの場合では103万円以下になります)
  • 子が個人事業主である場合、その事業の専従者として働いていないこと

社会保険(協会けんぽ)上の制限

  • 子が社会保険(協会けんぽ)に加入していること
  • 親が社会保険に加入していないこと
  • 子と生計を一にすること(別居していても仕送りを受けていれば該当します)
  • 親の収入が子の半分未満、又は子からの仕送り額の半分未満であること
  • 親の年間の収入額が、親が60歳以上であれば180万円未満であること

 社会保険上の制限でいう親の収入には公的年金も含まれます。また、親が75歳以上になると後期高齢者医療制度の対象になるため、子の社会保険に入ることはできません。

医療に関する整理

延命治療・終末期医療問題どこまでの医療を受けるか、生前に意思を示します*
お薬手帳の一本化お薬手帳を一冊にまとめます
*尊厳死宣言を公正証書ですることもできます

介護認定

 介護保険を利用するには、市区町村の公的介護保険の窓口に申請し、介護に必要な状態であることを認定してもらう必要があります。認定されるとそれぞれの人に合ったケアプランが作成され、そのケアプランに応じたサービスを受けることができます。支給限度額までは1割の自己負担でサービスを受けることができます。

公的介護保険の支給限度額と自己負担額(2024年現在)

区分支給限度額(月額)自己負担額(1割の場合)
要支援150,320円5,032円
要支援2105,310円10,531円
要介護1167,650円16,765円
要介護2197,050円19,705円
要介護3270,480円27,048円
要介護4309,380円30,938円
要介護5362,170円36,217円
一か月に支払った自己負担額が一定の額を超えたときに高額介護サービス費を支給する自治体もあります。

デジタル遺品に関する整理

 故人のスマートフォンやパソコンの中、又はオンライン上にある故人の情報をデジタル遺品といいます。これらの情報は故人が設定したパスワード等によって護られているため、生前に対応することが必要です。

  • 利用しているオンラインサービスの名前、アカウント名、パスワード等が相続人等にわかるようにします
  • 利用しているネット銀行・ネット証券の会社名、アカウント名、パスワード等が相続人等にわかるようにします
  • 利用頻度が少ないSNSのアカウントを閉鎖します
  • 電子メールのアカウントを一アカウントにまとめます
  • 利用している電子メールアカウントのアカウント名とパスワード等が相続人等にわかるようにします
  • 本人が亡くなったときにスマートフォン・パソコンのパスワードが相続人等にわかるようにします

 相続人等は、被相続人のスマートフォンやパソコンを受け継いでもすぐに初期化・廃棄せずにサブスクリプションサービス等の利用料請求がないか確認し、解約等を行った後に初期化・廃棄します。MicrosoftやGoogleのアカウントは、一定の期間にわたって利用されていないと自動的に消去されるようになっています。消去される前に故人のデータを確認し、重要なデータ等をハードディスク等の媒体に移しておくとよいでしょう。

 上に挙げたサービスの名前、アカウント名、パスワード等をスマホやパソコンの中に記録することは絶対にやめてください。これらの情報を普段使用しないエンディングノートや手帳に書き出し、保管するほうが安全です。パスワードは変更の度に書き換えましょう。オンラインサービスの利用に電子メールアカウントの登録が求められることがほとんどだと思いますが、電子メールアカウントを整理したときはオンラインサービス利用時に登録した電子メールアカウントを必ず変更しましょう。

人間関係に関する整理

  • 本人の死後に死亡の事実を連絡してほしい人をピックアップします
  • 葬式に呼ぶ人をピックアップします
  • 年賀状終いを送り、惰性で年賀状を送っていた人との関係を終わらせます
  • 人生の最期までの残された時間に不要だと思う人との関係を終わらせます
  • 葬儀について計画を立てます
  • 埋葬について計画を立てます(田舎に墓がある人は、自分が入る墓の面倒を見てくれる人の近くに墓を用意してはどうでしょうか。場合によっては田舎の墓からの親の遺骨の改葬も計画します)

終わりに

 上に挙げたことの中にはエンディングノートを記入することで整理されるものもあります。エンディングノートの記入で整理できなかったものについては別途整理を行います。ただし、エンディングノートは法的文書にはなりません。財産の分与については遺言書の中で指示する必要があります。それでも、エンディングノートの記入によって自分の財産の理解が容易になり、遺言書に添付する財産目録の作成も容易になります。

 色々なことを書いてきましたが、生前整理の目的は快適に暮らせる場所を作ることです。物事を整理しすぎて寂しさを感じることがないようにしたいものです。

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